[水島さんは選定中]




私の名前は水島。

悪いが、下の名前は聞かないで欲しい。

性別は女、年齢25歳。ごく普通の、出世願望も、結婚願望もない、本当に普通のOL。

・・・つい最近、呪われた、という以外は。



「っしゃいやせ〜…ばんわー」 ※ いらっしゃいませ、こんばんわ…と言っている。



現在、私の会社は、週休二日制。

人に会わずに済む日。


女難を何の苦労もなく回避出来る日。


・・・いや、前回の休日は回避出来なかったが・・・。


今度こそ!


私は………家に、引きこもるッ!!!!(引きこもり宣言。)


今日は、その光り輝く休日・・・の前日だ。


その為に…必要な事は…


「はい、『こんたくとれんず』と『もずく食堂』…の2点ですね?2泊3日で、600円です。」


ここは、私の家の近くにあるレンタルビデオショップだ。



前回…あの忌々しい「わん子と一緒」のDVDを借りてしまったのだが、今度こそ、そんな失敗はしない。


・・・・・・『犬のDVD』・・・!!


犬……あの尻尾…つぶらな瞳…何も考えてなさそうな純な行動…!


「…えーと…犬の…」

…私は、じっくりとDVDの選定に取り掛かった。


(…何故、小型犬しか、いないんだ…)


今日の私の気分は、小型犬ではない。


「……んー…あれ?」


犬のコーナーに一つだけ、猫の文字がある。

おもわず、そのDVDを手に取る。


…『今夜のにゃん子』……



って、お前”わん子”だろッ!?猫に変わっただけじゃないかッ!!


DVDのパッケージに写っていたのは、あの忌まわしいAVの主役こと『わん子』だった。

  ※注 わん子については、「水島さんは休暇中」・「水島大辞典」を参照…




彼女…こういう、動物コスプレ専門なのかな…。


…いずれにしても、この動物コーナーにおいてあるのは、間違いだろうに…。

私は、そっとそれを棚に戻し、犬のDVDを物色し続けた。


すると、小さな女の子が、私の隣で手を一生懸命、伸ばしていた。

自分より背の高い場所のDVDを取ろうとしているのだろう。



………………。


…やれやれ。


幼女なら、女難に入るまい。


「どれ、ですか?」
 
 ※注 慣れない幼児に敬語を使ってしまった水島さん


「ん〜…にゃんにゃん…にゃんにゃん…」


…猫のDVDが彼女のお目当てか…


「これ?」

私は、彼女の指差すDVDを取って見せた。

「んーん。」

・・・どうやら違うようなので、隣のDVDをとる。


「これ?」

「んーん。」


…それを繰り返す事、5回。


「……こ、これ…?」


・・・私は、DVDを幼い彼女に見せ、ハッとした。


「うんっ♪」

「…ほ、ホントに、コレ?」

「うんッ♪」


…幼い彼女の輝く瞳に、私はそれ以上何も言えずにいた。


「あーがとう♪おねえたん♪」


幼女は、そのDVDを持って、お父さんらしき人の元へと駆けていった。


(…ああ…やっぱり…言えなかった…)



「…パパー!コレが良い!」

「”にゃんにゃん”は、あったかい?」

「うん♪」


…私は、今日…女難には遭わなかった、のだろうか。


「・・・・・・・・・・。」


しかし、今みたいに


”罪悪感だけ残る”女難のパターンもあるのかな、と思うと、この出来事を簡単に忘れることは出来なかった…。




…”わん子”改め”にゃん子”はきっと…幼い彼女の家庭で、大嵐を呼ぶ事だろう…。



ああ、ごめんなさい…。見知らぬ幼女とそのお父さん…



私は、心の中で、心から見知らぬ親子に謝った(合掌。)



END



ーあとがきー


・・・珍しく、無難に終わった女難?でした。

神楽も、友人(女性)とAVの類は、借りたことあります。

・・・うーん・・・やはり、女性の目から見ると、エロいかどうかより

物語(一応台本はあるのですかね?)の展開に目が行くので、吹き出してしまう事が、多々あるんですよね…。


…選んだのが悪かったのか、展開に、無理がありすぎます。