[水島さんの女難日記 その1]



○月×日 天気・・・曇り。

午前7時、起床。

いつも通り8時に出勤しようとしたが、玄関開けたら、1分で女難。

・・・ああ、古いネタ・・・。

また酔っぱらった伊達さんに捕まった。

話によると、勤め先の先輩の誕生日記念で

彼女が、盛り上げ役として、しこたま飲まされたそうだ。

私が思う客商売の辛い所は、同じ人間を、お客様と呼んで、敬わなくてはいけない所だ。


・・・それが、どんな人間であっても、だ。


それが辛いと解っていても、出来る人は凄い、と思う。

凄いと思うが、見習う気は無い。


で。


出勤前だというのに、帰宅した泥酔状態の伊達さんに私はとっ捕まった。

最近会えなくて、寂しかったなどと言われても、私は近所の奥さんの目が気になって返答に困った。


そして、伊達さんは、また盛大に吐いた。

今度は玄関ではなく、共用廊下で、だったのだが。

…近所の奥さんの目が”あんたが片付けろ”というように突き刺さるし、スーツは汚れるしで


結局、私がそれを片付けた。

そして、会社にも遅刻した。


帰ってきてから、伊達さんが私の玄関先で立っていた。

…朝のお礼をしたいとか言って、無理矢理家に上がって、ご飯を作ると言い出した。

そして、見事に失敗した。

彼女が、一体何を作りたかったのかは、真っ黒な異物からは、想像もできず

それが、食べ物かすら、わからなかった。

そして、伊達さんは失敗を悔いて、ついには泣き出した。

…仕方が無いので、私は一口、その異物を食べた。

何を作りたかったのか、また失敗した原因…を確かめたかったのだ。



・・・そして、私は吐いた。



      墨汁と赤土の味がした。



結局、何かはわからない。あれは、墨と土だった。

すると、何故か伊達さんは泣き止んで、笑顔で失敗なしの得意料理を作ってくれた。


・・・カップ麺だった。


それでも、そのカップ麺は、とても美味しかった。

変わらない味、とは本当に貴重なんだと知った。


   そして、何故か伊達さんは、家に泊まっていった。


私は、なんだか不安でたまらず。


現在、トイレでパジャマのまま、便座に座って寝ることを決意する。

…明日は、良い日になると良い…あれ?どうしてだろう、涙が…


※この後、水で、文字がぼやけて、解読不可でした。





       水島さん女難日記その1・・・END





    [水島さんの女難日記その2。]


○月×日 天気・・・晴れ。

午前10時、起床。本日は休日。

・・・家にいると、隣の伊達さんが押しかける可能性があるので、出かけることにする。


本屋へと出かける途中。


運悪く…道のド真ん中で、元・レディース総長の樋口咲さんが、ギターで歌っている現場に、遭遇する。


案の定、絡まれる。

案の定、また歌われた。


今度の曲は『麦茶と貴女』だ。


・・・CMソングか?というツッコミはおいといて、道のド真ん中で、あのデスメタルを

無理矢理聞かされ、かなり恥ずかしかった。


今度の歌詞だけは、意外とまともになっていた。

無理して英語の歌詞を使うのを止めたから、だと思う。

ただ、麦茶が恋愛と、どこにどう関係するのかは、聞いても考えてもよくわからない。


・・・デスメタルと麦茶は、合わないと思う。


…あと、おばあさんが、気の毒そうに私を見ていたのが、ちょっと辛かった。

…更に、黒蜜のど飴までおばちゃんから貰った。(ひたすら甘かった)


…見知らぬおじさんには、にらまれた。


・・・私は、樋口さんの保護者じゃないって・・・(泣)


私は、隙を見て本屋へと逃げたが…追いつかれた。

その後、強引にファミレスで、勉強を教えてくれと言われて、半ば強引に連行される。

高校生の勉強なんか、事務課の女が教えられるわけが無い、と思っていたんだけど…

樋口さんの勉強への意欲は、凄まじく…断りきれなかった。

頑張ろうと必死なのだろう、と私は、勉強を教える事にした。


・・・一般常識的な問題ばかりだったので、なんとか事なきをえる。


・・・未成年の彼女の前で、年上、いや大人としての、威厳は、やはり保たないといけないだろう・・・。


しきりに『すげー!すげー!』と樋口さんは、私を褒めてくれたが

私がやったのは、教科書を噛み砕いて説明しただけだ…



だが…それが、悪かった。


『水島、マジで…惚れ直したぜ…』とあまり聞きたくないお言葉も頂戴した。


つまり。

樋口さんの好感度を余計、上げてしまう結果になってしまったのだ。



・・・・・・・・ああ、なんだろうこの休日・・・・・・・・。

私の心が休まる休日は…

…明日は、良い日になると良い…あれ?何コレ?目から水が…


※この後、水で、文字がぼやけて、解読不可でした。


  水島さん女難日記その2・・・END






 ー あとがき ー



大分前に拍手SSとして飾っていたものです。ええ、すっかり!忘れてました。

彼女の休日は、どんどん女難デーになっているようです。

その2も大分前に書き終わっていたんですが、イマイチだなと思って

拍手SSにすらしませんでした。えー・・・おまけという事で(笑)