[水島さんはまだまだゲーム中。]



私の名前は水島。

悪いが、下の名前は聞かないで欲しい。

カウンター20000突破したけど…聞かないで欲しい。

性別は女、年齢25歳。ごく普通の、出世願望も、結婚願望もない。


本当に普通のOL。


…縁切りと言う名の呪いをかけられたせいで、女難の女になってしまった、という以外は。



『王道。』


・・・この言葉の素晴らしさを知ったのは、RPGを買ってから知った。

町の人は、プログラミングされた言葉しか話さないし。

戦う相手は女ではなく、モンスターオンリー!!素晴らしい!ファンタジー!



王様:『おお!勇者”ああああ”よ!!魔王を倒し、この世界を救う旅に出てくれるのだな!?』

 ※注 水島さんの勇者のネームセンスは、ご覧の通り”適当”です。 


 → はい。(ぴこっ)



男の王様・・・万歳・・・

そうだ、やはりこの私に安全安心!のゲームは…RPGだったのだ!

一度買えば、1ヶ月は遊べるゲーム!


…物語が進むから、格闘ゲームと違って、隠しキャラや、コスチューム1つの為にやり込むとか

そんな面倒な事もしなくてもいい!!(暴言)

…あ、そういえば…

”無駄に小さいメダル”とか集めないと、レアアイテム手に入らないとか書いてたっけ…


・・・・・・ま、いいや。



…とにかく、街の外へ出て、レベルを上げよう。まずはG(ゴールド)を貯めて装備を充実させたい。


王様:『まずは”ダルーイの居酒屋”へ行き、仲間を集めよ!期待しているぞ!勇者”ああああ”よ!!』


・・・なんて、親切な王様だろう。ナビゲートしてくれるなんて!


欲を言えば、わざわざ、居酒屋で冒険者ひっかけさせるより、王宮の戦士2、3人を

こっちによこしてくれても良いんじゃないかな…



・・・それから、やっぱり勇者の名前もっと工夫すればよかったかしら…。


ダルーイの居酒屋に入り、早速仲間を紹介してもらう。


ダルーイ:『…いらっしゃーいー…あ、ウチ、セルフサービスだから。あと、おたく未成年?酒飲まないでね、最近うるさいからさー…』




・・・ホントにダルそうっ!!良いのか?それで!!お前の経営姿勢はっ!!




ダルーイ:『…あ?仲間?…いる?……うん、いいけどー…今、こいつ等しかいないよー。』


『選択してください。』


『戦士:性別・女。』

『魔法使い:性別・女』

『遊び人:性別・女』


「・・・・・・・・・。」


私は、コントローラーを持ったまま、固まった。




選べるかあああああ!!なんで女しかいないんだよっ!?しかもギリギリの人数じゃないか!



選びようが無いだろ!?



・・・うう、選びようが・・・





否ッ!私は、選ばない!!そうだ!一人で世界を救ってやる!!





・・・それに、モンスターを倒せば、稀に仲間になってくれるというシステムも知っているのだ!

…モンスターなら…動物なら、大丈夫だ…。




私は、町の外へと出た。


…さっさと戦って、モンスターとの絆を深めよう!!



『・・・チャララー!!』



「おっ!来たな!」

最初の敵だ…仲間になる事はまずないだろうけど。





 『はぐれ美少女Aが現れた!』




「・・・・・・・・・。」



画面に現れたのは、人型のモンスター。

モンスター?水着来たおねえちゃんじゃないのか?え、これ、モンスター?

はぐれ美少女って…単なる迷い人じゃ…水着着て、町の外でなにやってんだよ、コイツ…。

でも、倒すか?経験値が手に入るし・・・でも、倒したら・・・仲間に・・・




『どうする?』




『戦う』

『魔法』

『アイテム』


 → 『逃げる』(ピッ!)


 『”ああああ”は逃げだした!』


・・・よし!


『・・・しかし、道を阻まれた!』





「ちくしょー!!やっぱりかー!!」




女難の女は、やはり女からは逃げられないらしい。


『はぐれ美少女の攻撃!・・・”ああああ”は、かわした!』


それは、偶然か否か。私の分身は、ひらりと、モンスターの攻撃をかわしてみせた。

まだレベル1なのに。


そうだ、これはゲームとはいえ、命をかけて、世界を救う戦いなのだ。


「…………私はともかく、コイツは…戦っているんだわ…。」


そうだ。私の分身”ああああ”は、私の代わりに戦ってくれてるのだ。

…女難から逃げてばかりの私とは、違うのだ。



『どうする?』



『→戦う』



        ー数分後ー



『はぐれ美少女が起き上がって物欲しそうにこちらをみています。』





・・・やっぱりか・・・ちくしょー・・・(泣)




仕方ない、一度仲間にしてみ……





   『仲間にしますか?抱きますか?』




「え・・・えええええええええええええ!?」



私は、自分の目を疑った。

何、そのストレートな選択肢ッ!?あり得ないだろ!

…ちょ、ちょっと…これ…年齢制限は?あ、全年齢対象…?ふざけんな!!


『抱きますか?』って選択肢はマズイだろ!!





『仲間にする』

『抱く』




…し、しかも選択肢、2つしかない…(泣)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





   『はぐれ美少女・はぐ美が仲間になった!』



・・・ああ・・・なんかいやな予感・・・。





 『・・・チャララー!!』



 『犬耳娘(メガネ)・犬耳娘(裸眼)が現れた!!』



「・・・・・・・・・。」






・・・・・・一体・・・お前ら、何の、違いが、あるのさ・・・・・?


 ※注 水島さんは、もはやツッコミ疲れました。ご了承下さい。







    ー1時間後ー



何故か、勇者”ああああ”の目の前に現れるモンスターは皆、女。

そして、必ずといっていいほど、仲間にするか、抱くかの選択を迫られる。

仲間にするしか選択してこなかった私だが、こうなると『抱く』を選択したらどうなるのだろうという疑問が生まれた。


これは、あくまで、全年齢対象向けのゲームだ。

抱くといっても、ハグ程度かもしれないではないか!




 『ツンデレレディナイトが物欲しそうにこちらを見ています。仲間にしますか?抱きますか?』


「・・・よし。」




   『→抱く。』(ピッ)




   『〇ボタンを連打してください。』



「・・・え?ええ!?連打!?」


突然、コンピューターからそんな命令を出されて、私は慌てて、〇ボタンを連打した。



”カチカチカチカチカチカチ・・・”



連打をしているうちに、突如『キュピーン!!』という音が鳴った。



そして。

画面は真っ黒になり、やがて画面にはメッセージが表示された。






   『…ツンデレレディナイトは、満足しました♪』





「・・・何に!?何に満足したんだよっ!何をやらせたんだ!この私に!!何が目的だ!!!!」




腱鞘炎覚悟で、連打したというのに。

よくわからない作業をさせられた挙句、微妙なオチを見せられた私は、思わず叫んだ。




   『アンタって…人間のクセに、テクニックそれなりにあるじゃない…仲間になってあげてもいいわよ。』



   『と、ツンデレナイトが言ってます。器用さが2上がった!』





「知らねえよっ!!感想述べるなあああ!!変な数値上げんなあああ!!」





 『しかし、仲間がいっぱいです。

 ツンデレレディナイト”かずこ”をモンスターばあさんの所へ預けますか?

 それとも、もう一度抱きますか?』



・・・しかも、結局コイツ仲間になるのかよ・・・だったら、選択肢出すなよ・・・!



「・・・ん?待てよ?モンスターばあさん?・・・そうか!ダルーイの居酒屋みたいにモンスターにも待機部屋があるのか!!」

※注 抱くことは、スルーした水島さん。




何故、早くそれを言わないんだ!とっととこいつらを預けてしまおう!!


モンスターばあさんに預けて…

・・・・あ、そうだ。



預ける前に、コイツらの装備全部、引き剥がさないと…売ってお金にしよ…♪


 ※注 ・・・皆さん、身に覚えはありませんか?(笑)





私は、町へと戻り、モンスターばあさんの所へ向かった。




モンスターばあさん:『ん?景子さん…今朝の味噌汁はしょっぱかったよ。あたしを殺す気かい?』





・・・モンスターばあさん、ボケてる―――――ッ!景子って誰――ッ!?






モンスターばあさん:『おや、まあ景子さん…モンスターを預けるのかい?


亭主の面倒も見られないアンタが、モンスターを飼い慣らそうなんて、所詮、無理だったのさぁ…ひっひっひっひ…』



・・・なんか、嫌なばあさんだな・・・。



いや、とにかく、預かってくれるのは、ココだけだ。こいつらを預けよう。



モンスターばあさん:『…みんな、あたしが引き取るよ、良いんだね?景子さん。』


  『→はい。』


モンスターばあさん:『…ふん…厄介払いがしたくなったら、また来るがいいさ…


…”厄介者同士”仲良く過ごすからねぇ……ひっひっひっひ…!』




・・・・・・ホントに嫌なばあさんだ・・・。というか、景子さん、どんな人なんだろう…?



よし!これで…冒険再開だー!!






     ー20分後ー





『仲間がいっぱいです。モンスターばあさんのところへ預けますか?抱きますか?』



100%の確率で、モンスターは女の姿。

100%の確率で、モンスターは仲間になる。


勇者のレベルは、それなりに上がってはいくが…ちっとも物語が進まない。




「とりあえず、モンスターばあさんの元に預けるか…」

しかし。



私勇者”ああああ”が町へ戻ると、町は姿を変えていた。





      『町が全滅している!』



「・・・な、なに!?」



突然のコンピューターのメッセージに戸惑う私。

…げ、ゲームオーバーか?何かイベントが起きたのか?




   ????:『待っていたぞ!勇者”ああああ”!!』




…どうしよう!これイベントだ!しかもボスっぽい!

…急にイベント発生しても、私、薬草も何も持ってないのに!!

ちくしょー…やっぱり、町出る前にセーブしておけば良かったッ!!



しかし、レベル的には、序盤のボスくらい倒せるはずだ…!



さあ今こそ…戦いの時だ!!


私は、初めてのボス戦に期待を膨らませて、コントローラーを握った。




モンスターばあさん:『景子さん!アンタの預けたモンスター100匹を使って町を破壊してやったよ!


このまま世界進出してやるさ!世界と息子は、あたしのもんだよ!』





「・・・・・・ババア・・・何してんだよ・・・。」




私は力なく、ゲーム画面にツッコんだ。


それから、勇者”ああああ”は預けた全ての美女モンスター100匹と戦うハメとなった。

・・・勿論、66匹目で、勇者”ああああ”は力尽きた。



王様:『おお!勇者”ああああ”!やられてしまうとは情けない!!』



・・・レベルとGが、さっきの半分になっている。

私は、一気にやる気をなくした。




結論。


私はどう頑張っても、普通のゲームが出来ない運命のようだ。

そして、私、勇者”ああああ”が世界を救う日が来る事は、多分ないだろう。




王様:『もう一度世界を救ってくれるな!?』





『→いいえ』




ー水島さんはまだまだゲーム中・・・ENDー





あとがき。


毎度毎度のゲームネタです。(笑)

何をやっても、百合ゲームになってしまうというオチなのですが、これが意外と好評で。

こんなゲームどうすか?とか提案を下さる方もいました♪

そういえば、この水島さんも元々は、神楽がゲームにしようとシナリオを書いたのがキッカケでした。


甘ったるい百合なんざ、かけないんだよ!と逆ギレに近い状態でつくり、挫折したのでした…。


・・・ヒロインを落とすのではなく、ヒロインを避けるしょっぱい百合・・・


コンセプトはコレですし、今もそのコンセプトは変わってません。

SSとして、生まれ変わった今、水島さんは…やっぱりしょっぱい百合になっている訳です。