[シンケンジャーSS 茉子ちゃん・ことちゃん ゴキゲンデート♪ ]
ついに・・・ついに、この日が来た・・・。
「良かったわぁ・・・茉子ちゃんとお休み、一緒に貰えて。」
嬉しそうに私の隣でことはがそう言うので、こちらも笑顔で答える。
「そうね、久々に羽伸ばしましょ?」
「うん。」
そう、今日は、久々の休日・・・!!
そして。
「わぁ・・・雲一つもないわぁ・・・快晴って言うんやろ?こういうの。」
「・・・そうね。ホント、快晴ね・・・」
手を伸ばしたら、吸い込まれそうなくらい・・・天を突き抜けるほど青い空が頭上に広がっていた。
「でも、結局・・・ええの?うちの希望通りで・・・」
ついっとコートの端を摘みながらそう言うことはに、私は思わず笑ってしまう。
「ん?別に良いわよ?・・・どうして?」
「せやけど、茉子ちゃんにだって、行きたい所、あるん違うんかなって・・・別に、うちに全部合わせんでも・・・」
ほら、そうやって優しさを配るんだから・・・。
「ことは、私に、そんな気を遣わなくてもいいの。今日は楽しもう?」
「・・・・うん!」
・・・本日、天晴な程、快晴・・・。
その空は、絶好の『デート』日和を告げていた。
・・・さっきから、握り拳が唸り続けている。そのうち、光り出すかもしれない・・・いや、今のは言い過ぎた・・・光る訳ないない。
とにかく!
今日は休みに、快晴に・・・今、ことはと2人きり!
邪魔者はいないし、外道衆も現れるって言っても、何故か週に1〜2度くらいだし!
ことはの絶対領域も絶好調だし!私のモヂカラだって底なしに上がっている…!(別に今、使わないけど!)
とにかく・・・好条件が揃い過ぎている。
気合も入るわよ!そりゃあ、もう!!
これから、ことはと2人きりで、遊園地に行くんだから―ッ!よっしゃあああああああ!!!
※注 毎度ながらのキャラ崩壊、申し訳ございません。
「・・・で、ことは何から乗る?決まってる?」
私がそう聞くと、ことはは手をバタバタさせたかと思うと、入場口で貰った遊園地の案内図をひろげた。
「あんな、うちな、昨日から考えてたんやぁ〜・・・もう、楽しみで楽しみで・・・」
と言いながらも、目は真剣そのもの。・・・まるで子供みたい。
「そう・・・そんなに・・・楽しみにしてくれたの・・・」
というか・・・私も楽しみで仕方なかった。
色々”計画”練ろうとして、脳内シミュレーションやり過ぎて、若干寝不足気味なのよ。
ていうか、私・・・ことはが『楽しみで』っていう言葉だけで舞い上がりそうなんですけど・・・!
無邪気に、はしゃぐ貴女を真っ昼間から、ぎゅっとしたいんですけど!グッと、そこは堪えて・・・堪えて・・・っ!!
「茉子ちゃん!こっち!こっちや!」
「もう・・・そんなに走らなくても閉園時間まで時間あるわよっ」
・・・ああ、ダメ・・・
前を走る無邪気な笑顔ごと、”ぎゅっ”てして、そこら辺の芝みに連れ込みた・・・グッとそこは堪えてッ!!・・・危ない危ない。
すると、今度はことはが私の元へ駆け寄ってきた。
「せやけど…茉子ちゃんとこうやって一緒にいるの、嬉しいんやもん。だから、早く!・・・えーと東だから・・・こっちやっ!」
そう言って、私の手を取り、走り出す。
「も、もう、ことはったら・・・」
「茉子ちゃん!早く!」
・・・ねえ・・・ことは・・・貴女の何気な〜い行動が、お姉さんの中で大爆発しそうなの、知っててそういう事してる?ねえ?
そしてどうでもいいけど、ことは・・・東に行きたいなら方向、逆よ・・・!でもいいや・・・。今、そんな小さな事で、この温かい手を離したくないもの・・・っ!!
※注 重要事項です。
― 30分後 ―
「・・・あ、あったー!ごめんな、茉子ちゃん・・・うちが方向間違わへんかったら、もっと早く着けたのに・・・」
「ううん、いいのよ。」
・・・私なんか、方向どころか、人生の方向見失いそうになったもの!!
・・・と心の中で呟きながら、ことはが目指していた乗り物に目をやると、そこには・・・。
「こ、コーヒーカップ?」
「そう!うち、昨日から、これに乗ろうって決めてた!」
コーヒーカップ。
大きなコーヒーカップの中に乗り、中央のハンドルを回し、遠心力と回転を楽しむシンプルな乗り物・・・
そして、中央のハンドルを回せば回す程・・・その回転は増していき、乗り手は何故か不思議な笑みが込み上げてくるという・・・
だが、乗り物慣れしていない者にとって、苦痛以外のなんでもない・・・あの乗り物ね・・・!!
・・・フフフ・・・大丈夫よ・・・私は乗り物慣れしてるし・・・脳内シミュレーションでも、大丈夫だったもの・・・!
「へえ・・・ことは、回転系好きなんだ。」
私がそう言うと、ことははにっこりと笑って頷いた。
「うん。あんな・・・うち、昔から鈍臭いから・・・何か早く動く乗り物って、好きなんや。」
そう言うと、廻るコーヒーカップに乗っている子供達がきゃーきゃー言ってる姿を、微笑みながら黙って見つめていた。
「・・・もう、昔とは違うでしょ?ことはは、ちゃんと侍やってるじゃない。」
ホントに変な所気にするんだから。
・・・ちゃんと、毎回一緒に戦ってるんだから、皆、解ってるよ。ことは。
「・・・ことはは、いつもひたむきで、真っ直ぐで、強いよ。」
「・・・うん。・・・ありがと、茉子ちゃん。」
そんな会話をしている間に、私達の番が回ってきた。
(いよいよ、か。)
・・・コーヒーカップに乗り込んだ。
私の脳内シミュレーションでは・・・
ことは:『きゃー!茉子ちゃ〜ん!怖ーい!回転怖い〜』
茉子『そう?じゃあ、もっと回しちゃうわよ〜♪それ〜!』
ことは:『きゃー!茉子のいけずぅー!・・・でも、そういうトコがめっちゃ好きーっ♪』
茉子:『きゃー!・・・私も大好きやねんでーっ!(で、ドサクサに紛れてぎゅっ!)』
・・・というオイシイ展開に・・・!
※注 只今の茉子さんの妄想劇場に著しいキャラ崩壊がございました事を心からお詫び申し上げます。
”ビー・・・”
『まもなくスタートします。なお、本日は10周年記念特別イベント”高い怖い速いの3拍子スタイル”により
いつもより余計に廻ります♪どうぞお楽しみ下さい♪』
(・・・・・・・はい?)
・・・ちょっと・・・・今、私の脳内シミュレーションにない言葉があった気がするんですけど・・・!?
「へえ・・・なんや、よう解らんけど、楽しいイベントしてる時に来れて良かったね!茉子ちゃん!」
「う、うん・・・」
・・・なんだろう・・・言い知れぬ悪い予感・・・!払拭出来ない、この不安!!
・・・これ・・・オイシイ展開・・・?
「ことは、ちょっ・・・」
「いっくで〜!!」
「と待ってえぇえぇェえぇえぇえぇえぇえええええええええええええええええええええええええええええ!!」
「きゃー♪早〜っ♪」
違う・・・!これ、違う・・・!”オイシイ展開”から、”オカシイ回転”に!・・・って言ってる場合じゃ・・・!
〜 推奨BGM 中島みゆき さんで ・・・ 『時代』。 〜
― 2分後 ―
『・・・”ビー”・・・ありがとうございました〜!』
「楽しかったなぁ!茉子ちゃん♪」
「・・・うん。(放心状態)」
こ、高速過ぎるでしょ・・・!
これ、普通のコーヒーカップだったら・・・コーヒーきっと、だだ漏れどころか、だだ零れだよね・・・!
例えていうなら・・・ことはが、インロウマルでスーパーシンケンイエローになった時並に回転してた気がする・・・!
何?この遊園地・・・よくも営業していたわね・・・!通りで子供がきゃーきゃー言ってると思ってたわよ!子供泣くわ!!
(・・・あ・・・あれ?)
世界がまだ・・・ぐ、グラグラして、カップが止まった今も、足元がおぼつかない。・・・ちょっと、歩けないかも・・・。
「・・・茉子ちゃん?」
「あ、大丈夫・・・ちょっと驚いただけ。凄かったね・・・。」
「うん!おもろかった!」
「そ、そう・・・良かったわね・・・!」
・・・うん。まだ大丈夫・・・。ギリギリ、大丈夫・・・!少し落ち着いたら、もうスタコラサッサと歩けるわ・・・っ!
今日は、ことはと二人きりだもの・・・ゆっくり降りて、歩いて、平衡感覚さえ持ち直せば、この貴重なデートを満喫する事も出来るはず!
「なあ、茉子ちゃん・・・うち、お願いがあるんやけど・・・」
「ん?」
「あの・・・コレもう一回乗っても、ええ?」
「・・・うん・・・って、ええッ!?コレ、もう一回!?」
「うん♪うち、これ気に入ったわぁ♪」
ああ、そう・・・と言いかけた私の視界に、嬉しそうに笑う操作担当者らしきおじさんが見えた。
なんか・・・あのおじさん・・・感動して、嬉し泣きしてるようにも見えるのは気のせいかしら・・・
「あ・・・えと・・・」
「人もあんまり並んでへんし・・・二回目って、このまんま乗っとったら、ええんかな?」
本当だ・・・人が、蜘蛛の子散らすように逃げていく後ろ姿が見える・・・。
ねえ、失敗じゃないの?このイベント!この不況で、何考えて営業してるの!?遊園地側は!経営のモヂカラ書いて見せようか!?ええ!?
「・・・茉子ちゃ〜ん!おじさんが、乗っててええって♪」
「え・・・!(ことは・・・いつの間に!)」
うーん・・・これ以上乗ると危険な気がするけど・・・ことはは、いつになく積極的だし・・・断りづらいなぁ・・・
あ、そうだ・・・。見学、という手もあるわね・・・!
「あ、あのさ、ことは、私・・・」
”ビー”・・・
『まもなくスタートします。なお、本日は10周年記念特別イベント”高い怖い速いの3拍子スタイル”により
いつもより余計に廻ります♪どうぞお楽しみ下さい♪』
・・・ちょっと!操作担当のオジサン!変な所で私達に気を遣って、早めのスタートきるのやめてーっ!!親指立てるなー!!
「ん?茉子ちゃん、今呼んだ?」
「え?あ・・・ことは!あのね、今度は少しゆっくりぃいぃいやあああああああああああああああああああああああああ!?」
「な〜に〜?茉〜子ちゃ〜ん?」
そんな・・・そんな馬鹿な・・・!
脳内シミュレーションにばかり気を取られて、遊園地のイベントをチェックしなかった報いだと言うの・・・!?
これ・・・違う・・・!シミュレーションと全然違う・・・!完全にマズイ展開に、スゴイ回転に・・・って言ってる場合じゃ・・・!
「きゃあああああああああああああああ・・・」
〜 推奨BGM 中島みゆき さんで ・・・ 『世情』。 〜
― 2分後 ―
「茉子ちゃん♪もう一回乗っても、ええ?」
「ことは・・・さすがに私・・・」
”ビー”・・・
『まもなくスタートします。なお、本日は10周年記念特別イベント”高い怖い速いの3拍子スタイル”により
いつもより余計に廻ります♪どうぞお楽しみ下さい♪』
「だから、早あああああああああああああいやああああああああああああああああ!?」
だからオジサン!グッドラック風に親指立てるな!スタートが、スタートが早いんだってばッ!!
だが、もう遅かった・・・高速のスピードと遠心力が、私を飲み込んでいく。
・・・もう・・・私の歯茎、乾くんじゃないかって思うほど、速度が増して・・・
・・・私、もう・・・何も言えな・・・・・
〜 推奨BGM 中島みゆき さんで ・・・ 『ヘッドライトテールライト』。 〜
― 6分後 ―
「おえええええええええええええ。(吐)」
※注 お食事中の皆様、茉子さんファンの皆様、大変申し訳ありません。
「大丈夫!?茉子ちゃん!うちが調子に乗って回し過ぎたから!?しっかりしてっ!ごめんなさい!」
「だ、大丈夫・・・だいじょおえええええええええええええ(吐)」
〜 推奨BGM 中島みゆき さんで ・・・ 『ひとり上手』。 〜
― 5分後 ―
・・・なんて事だろう・・・散々、脳内シミュレーションをし、睡眠不足だったのが仇となったのか・・・
何で快晴の空の下・・・私、ドリフ並みの酔い&ゲロを披露してるんだか・・・(泣)
女子トイレで散々吐いた私は・・・小休憩を取る事に・・・。
「茉子ちゃん・・・お水、飲む?」
「ん、ありがと・・・」
ベンチで寝転ぶ私に、ことはが少しオドオドしながらペットボトルの水を差し出す。
起き上がり、力なくそれを受け取ると、キャップが既に外れている事に気付く。
・・・ホント、こういう所も気を遣うんだから、と思わず笑みがこぼれてしまう。
水を飲むと、不思議と気分が良くなってきた。
「・・・茉子ちゃん、ごめんなさい・・・。」
「・・・ゴメン、はこっちの方。・・・乗り物、まだ1つしか乗れてないし。」
そう言ってことはを見る私の額に、ことはの手がぴたっとあてられる。
ペットボトルの水の冷たさが移っているのか、ことはの手は、少しひんやりとしている。
「でも・・・無理せんといて欲しい・・・。だって、今日は・・・今日のお休みは、2人で楽しむ為に遊びに来たんやし・・・うちばっかり楽しんで・・・」
ことはの表情は硬く、悲しそうだったが。
「・・・・・・その言葉で、大分救われる。」
私はそう言った。
「え・・・?」
「ことはが楽しんでくれたら、私も楽しいから。・・・今日は、来て良かった。」
「・・・茉子ちゃん・・・!」
私の言葉を聞くなり、ことはが抱きついてきた。
「ホンマ、ありがとう・・・」
「・・・こっちこそ。」
空は突き抜ける程青くて、肌に触れる空気は少し冷たくなってきていたが、ことはは温かかった。
「茉子ちゃん・・・気分、良うなったら・・・観覧車、乗ろ。」
「いいの?早くもないし、回転しないし・・・あ、そっか一応、回転だけはするか。」
と私は笑ってみせると、安心したように、ことはが笑った。
「うん。せやから、うちと一緒に乗って。茉子ちゃん。」
「・・・うん。もう大丈夫、いつでも行けるよ。」
「ホンマに?」
「うん、ホント。」
・・・・・・・うおおおおっしゃあ!盛り返してきたわ!よし!よし!よーし!これよっ!!
ことはからの”ぎゅっ”で私の充電完了っ!!
昨夜の脳内シミュレーションとは、かなり違う展開だけど・・・!・・・かなり不本意な部分みせちゃったけどッ!
ここまで来れば全て良し!許すッ!!
観覧車でなんとか・・・ことはと・・・ナントカでナントカをナントカ―っ!!
※注 只今、茉子さんは興奮中につき、日本語力が著しく低下しております。ご了承下さい。
”♪♪♪”(ショドウフォンの着信音)
「あ・・・はい、ことはです。・・・はい・・・はい、わかりました。・・・茉子ちゃん!外道衆やて!!」
・・・・・・・・・・・・・・・チッ。 (舌打ち。)
「・・・は〜い。(冷)」
「茉子ちゃん?だ、大丈夫?行ける?」
「行〜け〜る〜わ〜よ〜ぃ。(棒読み)」
〜 推奨BGM 中島みゆき さんで ・・・ 『ファイト』。 〜
― 10分後 ―
丈瑠:「そこま 茉子:「そこまでよ!この外道衆ッ!!」
丈瑠:「ま、茉子・・・?」
源太:「あーあ、丈ちゃんの台詞と被っちゃってるよ。さては、休み潰されて、かなり怒ってるよなぁ〜ありゃ。」
外道衆:『来たな!シンケぶへらっ!?』
茉子:「そうよ!私達は、通りすがりの侍変態シンケンジャーよッ!!」
千明:「うおおい!!どっかの劇場版完結ライダー風に言うな!しかも不意打ちしたっ!?」
流ノ介:「茉子!一文字違うぞ!一文字だけで大変な事になってるぞ!茉子―ッ!!」
ことは:「茉子ちゃん・・・まだ、酔ってるんやろか・・・。」
茉子:「スーパーシンケンピンク参る!・・・オラオラオラオラ!!無駄無駄無駄無駄無駄ぁーっ!!」
源太:「なあ、丈ちゃん・・・もしかして、茉子ちゃん・・・泣いてねえか?」
丈瑠:「・・・ああ。(・・・インロウマル・・・茉子に取られた・・・。)」
黒子Aさん(仮名)は『・・・あの日の白石茉子は、鬼神の如く強かった・・・あれは本当にシンケンピンクだったのだろうか?』と力なく語った・・・。
[ 茉子ちゃん・ことちゃん ゴキゲンデート♪ ・・・完! ]
あとがき
ちょっとだけ加筆修正してみました。ちょっとだけ?妄想力高めの茉子さんをお楽しみ下さい・・・。