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「・・・見いひんかったら良かった・・・。」


うちこと、花織ことはは今、正直ホンマに困ってます。

茉子ちゃんの雑誌が置きっ放しになっていたので、うちが興味本位でちょっとだけ、ちょっと、だけ・・・読んでみたのがアカンかったんです・・・。


特集が・・・あの・・・キス、の特集で。

うち・・・キスって場所によってそれぞれ意味があるんやって、読んで初めて知ったんです。


手の甲なら尊敬のキス。

掌なら懇願のキス。

手首なら欲望のキス。

額なら友情のキス。

瞼の上なら憧憬のキス。

頬は厚意のキス。

唇は愛情のキス。


「・・・あかんわ・・・」


うちは、そっと雑誌を閉じました。

読んでると、なんや頭が・・・クラクラします・・・。


「何が?」

「あっ!?茉子ちゃ・・・!」

振り向くと、いつの間にか茉子ちゃん(雑誌の持ち主)が立っていて・・・!


「・・・面白かった?」

ニコニコしながら、そないな事聞かんといてって思うたけど・・・。

「・・・あ・・・えと・・・うん・・・。」

・・・返事は、曖昧にしか返せへんし・・・。


「まあ、文字や言葉だけじゃなく、体を使って自分の思いを伝えようっていう、コミュニケーションの一つね。」


茉子ちゃんはそう言って、閉じたままの雑誌をぽふぽふと軽く叩いた。

コミュニケーション・・・そうやわ。茉子ちゃんの言う通り。別に変に考え込むような事あらへんもんなぁ・・・。


「そう、なんや・・・あ、そういえば、外国だと挨拶代わりやって、うち聞いた事あるわ。」


「ま、そういう事。だから・・・そんな恥ずかしがらなくってもいいのよ?ことは。」


そう言って、茉子ちゃんはニコニコして、今度はうちの頭を撫でてくる。

頭撫でられるんは、好きやけど・・・このパターンは・・・なんだかちょっと・・・子供扱いされてるみたい・・・。


「そ、そんな事・・・ないって・・・。」

「顔真っ赤だよ?」


「・・・・・・う・・・今日の茉子ちゃん、意地悪やわ・・・。」

「・・・そう?・・・ごめん、拗ねないで。」


そう言って、茉子ちゃんはうちを後ろから、ぎゅっとしてきて・・・。


茉子ちゃん・・・うちの事、やっぱり子供扱い・・・しとるんやろか。

幼稚園の先生しとったから・・・子供みたいなうちに構っているだけ、なんやろか。・・・時々、不安になってまう。



そんな事を思う、うちの目の前には、茉子ちゃんの両腕があって。

うちは思い切って、茉子ちゃんの右手を掴んで引き寄せてみる。



・・・”掌なら、懇願のキス。”


『子ども扱いせんといて。』


「・・・ことは・・・?」


・・・”手首なら欲望のキス。”


『うちだって・・・出来る・・・』



「・・・ちょ、っと・・・?」



茉子ちゃんの右手を掴んだまま、うちはゆっくり振り返る。



「・・・茉子ちゃん・・・うち、阿呆やけど・・・一応・・・3つまでは、覚えたんよ・・・。」










それから・・・唇は・・・







『茉子ちゃんと同じ、なんよ』






「・・・・・・・・ことは・・・最近、大胆・・・。」


うちは立て膝で、真っ赤な顔の茉子ちゃんと向き合って、今度はうちが茉子ちゃんの頭を撫でる。


「・・・あかんかった?」


うちが、そう聞くと、茉子ちゃんは視線を横にずらして少し考え込んだ。


「・・・・・・んー・・・いや・・・」



そして、視線を再びうちに戻すと・・・



「・・・そうね・・・じゃあ、ことはに問題です。」


「問題?」



茉子ちゃんは、うちの手を取ると、黙って手首に唇をつけた。


「・・・・あ・・・。」

「・・・はい、次は・・・ことはの番。」


そう言うと、真っ赤なうちの顔を見て茉子ちゃんはやっぱりニコニコ笑った。

それは、今のキスに対しての”お返事”をせなあかんって事やろか・・・。


「・・・え、えと・・・」


うちは、そのまま顔を近づけた。


茉子ちゃんの声のない問題に答える為に。

言葉じゃ伝えきれない、この気持ちを伝える為に。



「・・・・・・正解。」


茉子ちゃんが頬を撫でて、そう褒めてくれた。


「・・・茉子ちゃんが、そうやって褒めてくれるんやったら・・・うち、嬉しいわ・・・。」

「・・・まあ、なんというか・・・私も・・・嬉しいから。」


そう言うと、茉子ちゃんは、またうちをぎゅっと抱き締めてくれた。



 ― END ―




あとがき

キミは誰とキスをするって歌がありましたが、誰と”どこに”キスするんだか、と妄想族の私は思っ・・・

はい、その話はこっちに置いといてー。


キスと言っても色々ありますが・・・あっさりくらいが、丁度いいと私は思います。


あと、自分の恋人がピーチクパーチクうるさい時は、大体、キスで黙らせると、まあ見事に静かになってくれるんですよね。

・・・って言ってましたよ。私の友達が。


でも、相手によると思います。個人差もあると思います。私は、そう思います。(笑)