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私の名は…白石 茉子。
シンケンピンクとして、外道衆と戦い、平和を取り戻すため、殿様に仕え戦っている。
私達、家臣4人は、殿様の家に住み込み、日々鍛錬…生傷…の日々。
夢を捨て、普通の生活も捨て、戦う事…全ては、あの外道衆を倒す為、私自身が選んだ道なのだ。
・・・流ノ介が落ち込んでいる。
から元気なまま、みんなの悩みを聞きまくっているのが良い証拠だ。正直、ウザイ。
一人になると、きっとグズグズに落ち込んでるんだろうなぁ…
あ、ダメ…。
しょぼくれたヤツの後姿を想像しただけで、ダメだわ…!
ああ、ダメなのよ…
私、落ち込んでたり、弱ってる人見ると…放っておけなくなっちゃうんだって!!
・・・でも、ことはは別よ。大丈夫、常に放ったりしないから。
今日も雑誌のページめくりながらも、私、ちゃんと…ことはの事、見守ってるからね!!
※注 盗み見、とも言う。
「・・・で、茉子ちゃん、落ち込んでる流さん(流ノ介の事)に、お夜食つくってあげてるん?」
エプロンを身につけて私は、台所に立っていた。
「そうよ。あいつ、今日の晩御飯あんまり食べてなかったでしょ。
お腹すくと、考える事後ろ向きになっちゃうから、食べさせないとダメなの・・・よッ!」
にしても、硬いわね…この南瓜。
・・・ま、いいわ。シンケンマルで、切っちゃえ。
”スパンッ!” ”ガタガタ…”
”・・・・パリン♪”
・・・あ、皿一枚・・・ま、いいか。黒子が片付けてくれるでしょ。
「優しいなぁ…茉子ちゃん、料理もできるし…うち、うらやましいわぁ。」
私の隣には、ニコニコ笑顔で、私の手元を見ている…ことはがいる。
あぁ・・・こうして、2人で台所に立ってると・・・なんか、同棲始めたみたい・・・
「そう?…じゃあ、ことはにも今度、教えてあげるわよ。」
「本当?嬉しい!茉子ちゃん、大好きッ!」
あぁ、ことは…今、台所に黒子(片付け係)さえいなかったら…
今すぐにでも教えてあげるのに…もう、あんな事とか、こんな事初めてとかいうのを・・・
う、ウフフフフフ・・・♪
※注 しばし、お待ち下され!
いや、どうせなら私、作るより食べる方が好き…勿論それは、エロス的な意
※注 しばし、お待ち下され!!
「・・・で、茉子ちゃん、一つ聞いてもええ?」
「・・・ハッ!・・・な、何!?べ、別にいやらしい事なんか、一滴も考えてなんかいないわよ!?」
「いや、これ…何て料理?うち、都会のお料理とかあんま、詳しくないんよ。」
「・・・え?あぁ、これね、肉じゃがの”じゃが”の代わりに南瓜入れただけよ。
南瓜には、栄養がたっぷりでね、この時期食べておくと、体に良いのよ。
料理はね、レシピ通りじゃなくても良いの。時に創意工夫が必要なのよ。」
「へぇ〜勉強になるわぁ。茉子ちゃん、素敵!」
※注 ことはは、基本的にツッコミません。ご了承下さい。
「…そ、そお?」
・・・ヤバイ・・・
ことはと2人きりな上(黒子いますけど)こんなに近くで褒められたら・・・
・・・テンション、無茶苦茶上がってきたわ・・・!
「きっと、茉子ちゃんをお嫁さんにする人、幸せやね♪」
(・・・うっ・・・!)
ことはは、私の目を見つめ、笑いながら言った。
純粋で、真っ直ぐなその瞳…!
…わかってる…!…ことは、それ以上言わなくても、私…
私…解ってるわ…貴女の言いたい事はッ!!
「そ、そうよ…だから…ことはは…何の心配もいらないのよ。
この戦いが終わったら、貴女は身一つで、私の家に来れば良いんだからね。
食事の仕度は私がして、ことはは…夜は私に…なんちゃって、きゃーっ!もう皆まで言わせないでって…」
「へぇ〜…都会の肉じゃがって、魚も入るんやね〜。」
一人盛り上がる私をおいて、ことはは、鍋の中身を物珍しそうに見ていた。
「・・・・・・・・・。」
(え・・・あ・・・ことは・・・今のお姉さんの言葉、スルー?)
ま、まぁ・・・いいわ。うん。
「・・・あ、うん。入るわよ。魚から、良いだしが出るから。」
さっさと料理作って……あ、そうだった、流ノ介に食べさせるんだった。
※注 当初の目的をすっかり忘れていた茉子さん。
「へぇ〜……あ…ヘチマも入れるん?」
※注 料理の内容に関してもツッコまないでお楽しみ下さい。そして決して真似はしないで下さい。
「ことは、これはね・・・ヘチマじゃなくて、ゴーヤ♪沖縄の食べ物よ。」
(うう…無知すら、カワイく見える…重症ね、私…)
「へえ〜初めて見た…なんか、ごーやって…ブツブツしてねんなぁ…」
ことはは、こちらに来てから、珍しい事ばかりに遭遇するらしい。
そのたびに、私が教えてあげると、ことはは元気いっぱいに”ありがとう”と微笑んでくれる。
・・・いや、逆に・・・その笑顔に、こっちがありがとう、なんだけどね・・・ウフフフ・・・♪
「そうよ。…味は、大人向けね。苦いけど、慣れると美味しいわよ。
・・・とは言っても、ゴーヤは、ことはにはまだ早いかもしれないわね。」
と私がイタズラっ子のように笑ってみせると、ことは目をぱちぱちと瞬きした後
ぷくっと頬を膨らませた。
「え〜…子ども扱いせんといてよ〜!うち、苦いの別に平気やもん!」
あ、拗ねた。珍しい…へぇ〜こういう顔もするんだ…。
こういう所もカワイイのよね…。あーダメ…キュンとくる…。
「ゴメンゴメン♪冗談♪」
「…じゃあ、堪忍したる♪」
お互いの顔を見て、私達は笑った。
(・・・あぁ・・・時よ、止まれ・・・マジで。)
※注 茉子さん心の呟き。
私は、沸き立ってくる何かを抑えながら料理を続け、ことはは私(の手元)をずっと見ていた。
「へぇ〜……ゴーヤ…丸ごと、いれるんやね。」
「そうよ。後は、この圧力鍋で…一気に煮込むだけ!15分で、効率よく、柔らかく煮えるから。」
そうよ。とりあえず、煮込んだら、良いのよ。
後は、素材のうま味が生きてくる………ハズよ。(予想)
「へえ〜!15分で!?都会って便利なモノいっぱいあるんやねっ!」
「まあね。…さて、と。一段落したし・・・ことはにも、何か作ってあげようか?」
「・・・ん、そういえば・・・お腹空いた、かも・・・。」
「ちゃちゃっと作ってあげるわよ♪…えーと…」
「わーい♪」
私は、意気揚々と大根を取り出し、まな板の上に置いた。
・・・あれ?まな板・・・こんなに小さかったかしら?ま、いいわ。
”トントントン・・・ザク・・・”
「「あ。」」
「…痛ッ!」
・・・白石茉子・・・包丁で指を切るなんて・・・一生の不覚・・・!
「あ、あかん!茉子ちゃん!指貸して!」
ことはは、私の指を切った方の手をがっしり掴むと、口元を近づけた。
・・・ま・・・まさか・・・
・・・このシチュエーション…その半開きになった口は…!
そのまさかの予感どおり…
ことはは、私の指を”ぱく。”と自分の口に含んだ。
「…あ……ぁ…あ…」
指にじんわりとことはの温かさが伝わって
ぴりっとした痛みの後、それを拭うように舌が傷口をなぞる。
その瞬間、痛みどころか…指を切ったことすら、私の頭から飛んだ。
…ねえ…ことは…
ありがちで使い古されたイベントだけど…私…私…それでも…こう思うの…。
・・・シンケンジャー・・・やってて、良かった――――――ッ!!(叫)
「…ん、ひとまず、これで大丈夫…あとはちゃんと消毒して、絆創膏貼らな…
痛かったやろ?って…
ああ―ッ!?ま、茉子ちゃん!鼻血!!鼻血めっちゃ出てるーッ!!」
「・・・あ、うん、大丈夫・・・すごく幸せ・・・。」
「な、何言ってん!?しっかりしぃッ!?茉子ちゃあああん!!」
・・・その後、茉子さんの鼻血は、夜中2時まで止まる事はなかった、というが・・・
・・・何故か、とても嬉しそうだった、という・・・。
ー おまけ ー
「・・・・・・なんだ?ことは……一体、この異物は何だ?」
「茉子ちゃんがお夜食作ったんです。茉子ちゃん、疲れてるみたいで、鼻血出しちゃって…。
殿様もどうぞ。肉じゃが…あ、いえ、茉子ちゃんの”そーい くふー”です。」
「・・・こ、これが・・・肉じゃがだと!?・・・・俺に死ねというのか?」
「え?…茉子ちゃん、毒なんか入れてませんて!栄養いっぱいです!」
「ああ、いや…ことは、毒入りだと言っているんじゃない。これ自体が、毒だと言ってるんだ。」
「?????????」
「…はぁ〜……もういい。そこに・・・・・・飾っておけ。お前も、喰うなよ。」
「はあ…殿様、食べないんですか?」
「・・・いや・・・だから、これは……観賞用だ。眺めて楽しむんだ。いいな?」
「はあ…そうですか…。」
(都会の人って…変わってるんやな…肉じゃが、眺めて楽しむなんて…。)
※注『残った料理は、あとで黒子が美味しく、泣きながらいただきました。』
― おまけ 2 ―
「おい、大丈夫か?流ノ介…」
「・・・・・・・。」
「・・・し、死んでるッ!?」
「いや、千明…私は、生きてるぞ…なんとか、な…(泣)」
池波 流ノ介(シンケンブルー)・・・ 1時間後 緊急入院。
END
殿(レッド)が”捨てろ”ではなく、飾れと言ったのは、ある意味…優しさです(笑)