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※注意!このSSはネタバレを招く恐れがあります。








「あー・・・なんっか疲れたわね。今日のアヤカシ・・・。」


そういってあたしこと、白石茉子はいつもの場所に座った。

あたしは侍戦隊シンケンジャーのシンケンピンクとして、外道衆と戦う日々を送っている。


今日のアヤカシは、あたし達に幻を見せ彷徨わせ、追い詰めてきた・・・一の目を倒して油断してしまったこっちは反省だとあたしは改めて思う。


「そうやろか?・・・うちは嬉しかったな、色んな茉子ちゃん見れて・・・ほんま良かったわぁ。」


そう言って、ほんわか笑いながら花織ことはが私の横に座った。

・・・いや、ほんわかと言うよりもいつもより嬉しそうにも見える。


「・・・や、やめてよ・・・思い出すと、本っ当に恥ずかしいから・・・」


自分にあんな願望(アイドル)があるんじゃないか、と思うとあたしは頭を抱えずにはいられない・・・。


「そう?うちは姐御の茉子ちゃんも、西部劇の茉子ちゃんも、デカ長茉子ちゃんも、白石君な茉子ちゃんも、アイドル茉子ちゃんも、宇宙服の茉子ちゃんも全部好きっ♪」

「・・・あ・・・あー・・・」


そう言いきられてしまうと、返事する側のあたしが困ってしまう・・・。

ことはは無意識なのか、正直過ぎるのか、言葉が全て剛速球のストレート。

聞いているあたしは、とてもじゃないけれど・・・いや、嫌って訳じゃない・・・ただ、本当に・・・


(あーもう、やめて・・・!)



「本っ当に、ことはは姉さんの事、大好きだよなぁ?」


後からフラリとやってきた谷千明が笑いながらことはに向かってそう言う。


(や・・・やめて〜!ことはにその質問しないで!!)


あたしの願いは天に届く事は無く、千明の問いに、ことはは元気良く答えた。


「うん!うち、茉子ちゃん大好き!」


その上・・・ことは特製の微笑み付き。

横目でそれを見てしまった私はいよいよ、顔を隠すように下を向いた。


(・・・や、やめてー!!)


この会話もう終わってよし!恥ずかし過ぎ!!なんで倒したアヤカシの仕業で、今あたしがこんな目に合わなくちゃいけないのよ!


「うわ、どうするよ、姉さ・・・あっれぇ?姉さんの顔、赤くねぇ?もしかして・・・照れてるとか?」



「て、照れてなんかないってばッ!!もう倒したんだから良いじゃない!済んだ話いつまでも出すのやめてよね!ウザイ!」


私の声に千明、ことはがピタリと止まり、表情も固まった。

次に訪れるのは、しんとした・・・気まずい静寂。


「・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・。」


ことはの瞳が少し悲しそうに揺れたように見えた。


「・・・あ・・・ゴメ・・・大声出しちゃって・・・。」


私が慌てて言葉を出すと、千明はぱっと表情を変えて対応してくれた。

「ま、まあ・・・姉さんにも色々あるっつー事で!そんなムキになんなくてもいいじゃん!・・・さてと、俺は流ノ介でもからかってくるかな〜」


千明はこういう空気をノリで冗談に変えたり、臨機応変に対応してくれるから良いけれど・・・

真面目なことはの場合は・・・


(・・・マズイ・・・。)


あたしの予想が確かなら、今・・・ことはは落ち込んでいると思う。

現に俯いたまま、こっちを見てくれない・・・。


「・・・あの・・・ことは・・・今のは、その・・・勢いっていうか・・・ごめん!」


こういう時は、素直に謝ってしまうのが一番である事をあたしはよく知っている。


「・・・茉子ちゃん・・・うちの事・・・う、うざい?」


声のトーンも心なしか暗い。


「え!?そ、そんな事ないわよ!あの・・・その・・・今のは・・・!」


ことはに悪気は無いのは知っている。・・・単にあたしが勝手に恥ずかしがっていただけの話だ。


「でも、うち、茉子ちゃんの嫌がる事してしもうたんやもん・・・だから・・・あの・・・ごめんなさいっ!」

「いや・・・あの・・・あたしはただ・・・」

「ん?」


「は・・・恥ずかしかった、だけ・・・。」

「なんで?」


「だって・・・他はともかく・・・アイドルとか、あたしの柄じゃないし・・・。」

※注 このサイトでは茉子さんの柄どころの話ではすまないキャラ崩壊のフザケSSが多数存在していますが、今は忘れて下さい。


その言葉を聞いたことはは、ふうっと息を吐くとこう言った。


「そっか・・・そうやったら・・・”そんなん関係ない”。」

「・・・え?」


「茉子ちゃんは・・・いつだってうちの中で可愛いし、綺麗やし、大好きやもん。気にせえへんでええの。」


「ことは・・・ど、どうして・・・?」

「ん?」


「どうして、そんな事言えるのかなって・・・思って・・・。」


しかも面と向かって。


「だって・・・うち、茉子ちゃんの事、好きやから。」


「あ・・・・え・・・?」


それだけ?

それだけで・・・貴女は・・・


「せやから、いっぱい色んな茉子ちゃんを見たいって思うんは、うちの我侭かもしれへんけど・・・うちはこれからもずっと・・・茉子ちゃんの色んなトコ見たいって思うとるんよ?」

「・・・・・・・・。」


それだけの理由で、こっちの息が止まりそうになるような言葉をまっすぐに、あたしに向かって投げかけてくれるの?


「・・・あ、でも・・・それが茉子ちゃんにとって迷惑やったら、あかんよね・・・」


苦笑しながら、ことはは笑いかける。

その微笑が少しだけ辛そうにも見えたあたしは咄嗟にこう言った。


「いや・・・そんな事ないよ・・・あの・・・」

「ん?」


「ことはにだったら・・・いや、ことはにしか見せられないあたしも多分・・・いると思うし。」

「ほんま?」


ああ、何言ってるんだろ・・・あたし・・・。

また恥ずかしくなったあたしは、ことはの手首を引いて、強引にことはの身体を自分の方へ引き寄せると、思い切りぎゅっと抱き締めた。


「・・・本当。」


現に今・・・ことはにしか見せられない顔をあたしは、している。

まるでそれをごまかすように、あたしはことはをぎゅっと抱き締めていた。


「でもな、色んな茉子ちゃんの中でも・・・うちの事、こうしてぎゅってしてくれる茉子ちゃんが好きっ」

「・・・っ!?」


耳元で弾むような声が聞こえ、あたしは思わず息を飲み込み・・・また、かあっと熱くなった。


「今日のことは・・・いつにも増して、変。」


あたしは搾り出すようにそう言った。


「・・・だって、幻の中で言えへんかったから。」

「・・・え?あ・・・もしかして、ことはの幻・・・学校の時?」


私とことはが男装し、丈瑠達が女装していた幻の時。

確かに、ことはは何かを言いかけていた。


「”ずっと前から白石君が好きやった”って・・・。」


そう言うと、ことはやっと言えたぁと息を吐いて脱力し、私に体を預けてきた。

そんな事を言おうとしてたなんて、男装していたとはいえ、あたしはなんて役得なんだろう・・・とか考える。


「・・・あ、でも・・・。」

「どうしたの?ことは。」


私が聞き返すと、ことはは体を少し離し、私ににっこり微笑みかけた。


「やっぱり、茉子ちゃんは茉子ちゃんのままがええと思うし、うちは今の茉子ちゃんがええわ♪」

そう言って、今度はことはの方から、ぎゅっとあたしに抱きついてきた。

「こ、ことは・・・」


あたしはまた言葉を失い、必死に探す。


”あたしも今の貴女が好き。”


そう言葉に出来たらいいな、と思う。そして、出来る事なら、ことはみたいに素直に喜びたい。

ことはに出来て、あたしに出来ない事。

真っ直ぐな想い、真っ直ぐな強さが、誰よりも強い貴女だから、あたしはそんな貴女に惹かれるんだと思う。

思った事を、正直に。言葉にして出す・・・。


すうっと息を吸ってあたしは言葉を口にしてみた。


「好きよ、ことは。」

「・・・っ!?」


囁くようにあたしが言うと、今度はことはの体がびくんと反応した。


「ま、茉子ちゃん・・・今の不意打ちはちょっと、ズルいわ・・・。」

「・・・そう?」


あたしの言葉に動揺したのか、身体に伝わることはの心臓の鼓動が早く感じた。


「あと・・・茉子ちゃん・・・ちょっと、苦しいわ・・・」

「・・・だーめ。・・・・・・・もう少しだけ、ね?」


ことはの細い体を抱き締めながら、あたしは少しだけ頬が緩んだ。

幻なんかじゃない、この感覚を体に焼き付ける為にあたしは強く、強くことはを抱き締めた。





彦馬:「・・・殿・・・。」

丈瑠:「・・・入るに入れないな・・・。」



―  本日の反省会2・・・ END ―



あとがき

帰ってきたシンケンジャー特別編のネタバレになるかもしれない、と思い封印してまいりました、このSS。

オチも何も考えずに、ただ平和的に2人をイチャイチャさせようと思って作りました。