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・・・あ、どうも、こんにちは。うちの名前は、花織ことはっていいます。


うち、鈍くさいし、よくぼけっとしてるから、そうは見えへんかもしれへんけど


一応”侍”です。”侍戦隊シンケンジャー”やってます。


うち、剣と笛くらいしか特技あらへんけど…一所懸命、お役目果たせるよう、頑張ってます。

体の弱いお姉ちゃんの代わりやけど・・・うちの力が必要とされるんは、めっちゃ嬉しい。



あ、嬉しい、と言えば…うち、田舎から出てくるの初めてやったから…

殿様の所へ来てから、珍しいものいっぱい見たし、行ったりして…めっちゃくちゃ楽しいです♪


あ・・・勿論、外道衆との戦いや、鍛錬もあるから、楽しいばっかりやないけど。


それに、何と言っても。

うちの周りには、とっても頼りになる仲間がいます。


殿様は、厳しいけど侍として立派な人や。

うちみたいなん…家臣やいうてくれるし、時々、ケーキ買ってくれるし、ええ人です。


流さんは、優しくて真面目な人や。

うちをよく褒めてくれるし、殿様と一番仲ええんちゃうかな…とにかく、ええ人です。


千明は、明るくて真っ直ぐな男の子や。

うちのおやつ、よく盗るけど…本当は優しいし、仲間想いで、おもろい…とにかく、ええ人です。


それで…特にうちが仲良くて、尊敬しているのは、茉子ちゃん。

みんなのお姉さんみたいな人で、綺麗やし、料理も出来るし、うちに街の事や、色々教えてくれるし

めっちゃ優しい人です。うちも、あんなん色々出来たらええなあって思います。





「♪〜」


うちの趣味は、笛。鍛錬の後や、暇さえあれば、吹いてる。

こうして吹いていると…故郷の事を思い出……………………



・・・・・・・・・・。



「・・・・・・お、思い出してしもうた・・・!」



どうしよう・・・め、めっちゃ・・・寂しい・・・!

あぁ…うわ、緑の匂いが懐かしい…!…お姉ちゃん……



・・・・・・か、帰りた・・・


「うわ、あかんあかんあかん…!な、泣いたらあかんっ!うわー…ど、どないしょー!!」


パニックになりそうな頭を振りながら、うちは

…実家の雰囲気に似ている場所…近所の公園に行って…笛を吹いた。

笛を無心で吹いたら…なんとか寂しさも紛れるかもしれへんやん…!!



「〜♪〜♪」


ああ…こうやって、笛を吹いていると…嫌な事ちょっとは忘れられる……

イジメられた事や…お姉ちゃんが病気で一人の時もこうやって…………………



・・・・・・・・・・・・・。



「あ、あかん!ど、どんどん、嫌な思い出ばっかり思い出す…ッ!!」


これ…これが、噂?の負のスパイラルなんや…!ど、どうしよ…!




「こーとーはー何してるの?」


急に背中が重くなった。誰かが、うちの背中に乗っかってる…


…この声と匂い…


(あ・・・茉子ちゃんや・・・)



うちは、振り向こうとしたんやけど…なかなかでけへんかった。

振り向いたら、涙目なのがバレてしまうし…絶対心配かけたくない…




「ことは?どうしたの?私よ、茉子……ねえ、ことは…どうしたの?」



無視してる訳やないんやけど…うちは黙ったまま、茉子ちゃんに抱っこされてた。


あったかいし…優しく”どうしたの?”って聞かれたら…

…ホンマは、すっごい言いたい…でも、その前に…



(あ、あ、あ…あかん…泣きそ…!)

「・・・・・・・。」



…な、泣いたらあかん…泣いたら…!!




「……ことは………む…?………」


・・・茉子ちゃんの腕の力が、急に強うなった。

黙ったまんま茉子ちゃんは、うちをぎゅーっと抱き締め続けた。



「……あかん…茉子ちゃ…離して…」



喋ったせいか、ついに、うちの目から、涙の粒が…



(…う、うわ…ど、どないしよ…)




「…やぁ〜っと口利いたわね……答えはイ・ヤ・よ。」



そんなん優しく言うてくれても、内容がいじわるやわ…茉子ちゃん…。


「そ、そんなぁ…茉子ちゃ…ぁ……」


「こっち向いて、ちゃんと私の胸で泣きなさい。じゃないと、離してあーげない。」


(・・・バレてる・・・)

「…う…わかった…」


うちは言われた通り、振り向いた。

泣いてるのバレてるし、離してもらわれへんのやったら、うちはこのまま泣いてしまいそうやし…。



「ことは。」


…振り向いたら…茉子ちゃんが、天使みたいな笑顔で…



「・・・う・・・・茉、子・・・ちゃ・・・・」


・・・あかん・・・もう・・・



「…我慢も過ぎれば、只の毒。この私が、許す!だから……


 …おいで。」



「…ぅ………」





……お姉ちゃん…ごめんなさい。

泣いたらあかんって決めたのに…うち、思いっきり泣いてしまいました。


うち…茉子ちゃんの胸に思いっきり飛び込んで、泣きました。



茉子ちゃんは、ホンマ優しい人です。

訳も聞かんと、うちが泣き止むまで、ただ黙って抱き締めてくれました。


そして、うちがわーわー泣いてるんを、周囲の人に見られても恥ずかしくないように

茉子ちゃんは、自分の着ているジャケットごと、うちを包んで抱き締めてくれました。


それから、泣き止んだうちに、ジュースを奢ってくれました。



「・・・どう?ちょっとは、スッキリした?」

「ん。ありがとー…」


あかん…わーわー泣いてしもうた後やから、茉子ちゃんの顔、恥ずかしくてマトモに見れへん…。


「…ねぇ、ことは、もしかして…恥ずかしい…とか思ってない?」


茉子ちゃん、なんで、そないに解ってしまうんやろか・・・うちの事。

ジュースの缶の表面を両手でコロコロ転がしながら、うちはそう思った。



「ん・・・ちょっと、だけ・・・。」


「本当は?」


「・・・ぅ・・・かなり・・・。」


「クスッ…それで良いのよ。ことは。さ、飲んで。」


茉子ちゃんには、あんま隠し事でけへんなぁ…。

とうちは、しみじみ思った。




”吐き出したら、スッキリしたでしょ?”と茉子ちゃんは、うちの頭を撫でてくれました。

それから、屋敷に戻るまで、茉子ちゃんはずっとうちの手を繋ぎながら、話を聞いてくれました。


それで、流さんも前に”ほーむしっく”になったいう話を聞かせてくれました。


茉子ちゃん…なんか、お姉ちゃんみたいで、寂しいの全部忘れられそう。

・・・ゲンキンなんやな、うちって。



玄関の扉を開ける前、うちはお礼を言うた。



「あのっ…あの…ありがとう、茉子ちゃん…」


「いいのよ…私も、吐き出したい時は……ことはの胸を借りるから。」



そう言って、茉子ちゃんは笑っていた。

そっかぁ、茉子ちゃん…うちの事、頼ってくれるんや。

なんか、嬉しいな…


・・・あ・・・でも・・・・


「…ええのかな…?…うちなんかで…」


「何言ってるのよ、ことは。良いに決まってるじゃない。」


茉子ちゃんは、そう言うけど…


「だって…茉子ちゃん…背ぇ高いし…うちやったら、包めへんかも…」




「…うーん………じゃあ…コレしかないわね。」


「…ん?なに?」


茉子ちゃんは、小声で教えてくれた。





 「”ちゅー”。」



 「”ちゅー”?」




「・・・そう。…例えば…こういう、風に…」


そう言って、茉子ちゃんの顔が近付いてくる。



…わぁ…やっぱ、茉子ちゃんって、べっぴんさんやわぁ…


…なんて、ぼへーっと見とれてたら…



「・・・・ん・・・」






・・・唇同士が、くっついた。



 で


・・・目も合った。




・・・なんだか、茉子ちゃん、泣きそうな目を、してた気がする・・・。



「・・・むぅ・・・」

「・・・・ん・・・」



そのまま、6秒くらいして…茉子ちゃんは、うちから離れた。




「……こ…ことは…。」

「・・・ん?」




茉子ちゃんは、いつになく顔が真っ赤になってて…なんやボソボソと喋り始めた。



「あのね…私、ホントはね…」

「うん。」


「”ほっぺにちゅー”しようと思ってたの…」

「うん。」





「だから…なんで、ことはが横向くのッ!?」


な、なんでいきなり怒るんかわからんけど、なんか悪い事したんやろか…!


「あ…向いたら、あかんかった?ご、ごめんなさい…!」


茉子ちゃんは、そらもう…顔を真っ赤にして…唸ったり、頬を押さえたり、首を振ったりしてた。

別にええんと違う?女の子同士やし、ってうちは思うんやけど…。



「・・・あー………いや、やっぱり、良い。良いわ、うん。・・・・・・別に、ラッキーだし・・・」


「・・・ん?」



「あ、ううん!なんでもないっ!さっ!晩御飯、晩御飯!」


「あ、待って〜」


茉子ちゃん、変なの〜って思ったけど…その御蔭でうち”ほーむしっく”が、治りました。

茉子ちゃんの御蔭です。茉子ちゃんは、めっちゃええ人です。







  …その夜…








「……おっしゃあぁああああああああああぁ―ッ!!獲ぉったどおおおおおおおぉ!!!」



「…な、なんだ!?今の雄たけびは!!外道衆かッ!?」



…謎の雄たけびが、その夜、3回ほど志葉家に響き渡ったそうな…







 ― END ―








  ― おまけ 勘違い。 ―






茉子:「あー…外道衆、今日はもう出ないのかしら…」


ことは:「ほんまやね…こんだけ街ん中探しても、見つからへんとなると…」


茉子:「…水補給しに、帰ったって考えて良さそうね。」




   ”ぐーきゅるるるる…”




茉子:「ことは…もしかして、お腹空いた?」


ことは:「・・・うん、なんか・・・急に。えへへ・・・」



茉子:「…なんか、食べて帰ろっか?」



ことは:「え…ええの?」




茉子:「うん、考えてみたら、お昼前からずっと外道衆探してた訳だしね。ことは、何食べたい?」


ことは:「…んー…うち、別に何でもええけど…」




茉子:「…じゃあ…何かお店見つけたら教えて。私、彦馬さんに電話を…」




 ことは:「茉子ちゃん…すきや。」






 茉子:「……え…?」



 ことは:「すきや。」





茉子:「え…ちょ、ちょっと…ことは…こんな白昼堂々、人の多い場所で…ことはったら、何言い出すの…

 いや、構わないけどね…私にも心の準備とか…その、突然過ぎて、ときめきがヤバくて、もう…」



ことは:「いや、そうやなくて…茉子ちゃん、アソコすきや。」



茉子:「…え…いや、ダメ!ダメよ!朝のスーパーヒーロータイムで、アソコが好きとか言ったらダメ!

 私的にはOKでも!PTA的にダメ!どっから覚えてきたの!ことは!そんな子じゃないでしょ!

 というか…まだ、そこは見せ合ってもいないのに、好きなんて…!どんだけ大胆なの!」




ことは:「え、えぇ〜…茉子ちゃん、嫌い?」



茉子:「……(ゴクリ…)………正直、好きよ。大好きよ。ええ、そりゃもう。…まだ、ことはのは見てないけど。」



ことは:「じゃあ、食べよーや?」


茉子:「…え…そ、そんな…今?…あ、あの…今だと、きゅ、休憩料金だけど…」


ことは:「休憩?…いや、お店ちゃんと営業しとるみたいよ? 行こ!茉子ちゃん!」


茉子:「…あ、待って…!ことは…せ、積極的なのは良いけど、PTAが…!BPOが!

 朝のスーパーヒーロータイムが、昼下がりのスーパーエーロータイムに!!


 …………あ゛―――!!もうPTAなんか、どうでもいいわッ!行きましょうッ!!」





  ”…ガー…”




 『いらっしゃいませ〜!』





ことは:「何にしよーかなぁ…牛丼〜♪豚丼〜♪」




茉子:「・・・うふふふ・・・”すき家”か・・・”あそこ(に)すき家(があるよ)”か・・・。」




ことは曰く…『茉子ちゃんと一緒に食べた牛丼は、めっちゃ美味しかったです♪』…だそうだ。



茉子:「あははははは…(泣)」




 ・・・がんばれ、茉子さん・・・。





 END




あとがき。


前半のお話は、13話の前に書いたモノなのですが…

泣いてしまいそうになることはを、茉子さんならぎゅーっとしてくれる、と私は信じてました!

そしたら・・・13話!ことはも茉子さんもぎゅーの嵐!観ていて良かった。

殿達もカッコ良いんだけど、女子のカッコ良さもパネエっす!!


・・・・なのに、どうして神楽は・・・こんなフザケたSSでしか茉子さんを表現できないんだ・・・!!


あれ?それでいいのよ、と神様の声が聞こえた気がする・・・


じゃあいっか♪