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[  奇策縦横。 ]




今日の晩御飯、とっても美味しかったなぁ…。

外道衆の御蔭で、ほとんど黒子さんが作ったんやけど…茉子ちゃんが作ってくれた付け合せも全部美味しかった。



・・・と思ってたんやけど。





「くうぅっ…私は、殿の様子を見てくる!」


「落ち着けよ、流ノ介。…何度目だよ。しかも、さっき丈瑠に追い出されたばっかじゃん。」


「・・・・殿・・・(泣)……やはり、ダメだ!」


「ダメって…何がだよ?」


「料理だ料理!…私なら、茉子を嫁にするなんて、出来ん!」


「ああ…右に同じく。丈瑠も災難だよな…付け合わせ一口で…ぶっ倒れちゃってさ…」



流さんと千明が、お茶を飲みながらそんな話をするんで、うちは口を挟んだ。



「何言うてんの?美味しかったってば…。2人共、大袈裟やわ。付け合わせあんな美味しく作れる人、珍しいくらいやって。」



皆、茉子ちゃんの手料理がまずいとか、破滅だとか、そんなんばっか言わはるし…

殿様は、茉子ちゃんの料理を一旦は美味しいって言うて、すぐに倒れて、今寝込んでるっていうし…。



・・・うちは、好きな味やったのに・・・。



けど、うちの言葉を聞いて2人共、変な顔をして首を横に振った。


「珍しいのは、ことは…オ・マ・エ!の味覚だって。」


「そうだぞー。ことは、お前が茉子を姉のように慕っていて、庇いたい気持ちはわかるが

料理で殿をあんな状態にしてしまってはだな……茉子が嫁に行くのは難しいだろうな…」


「なんで?」


うちが聞き返すと、流さんはうっ、それは・・・と口篭った。

それを見かねたように、千明が言った。


「なんでって…姉さんの料理は旦那の胃袋掴むどころか、胃袋壊しちゃうじゃねーか。」


なんで?…うちには、わからへん。あんなに美味しいのに…。

…”うんうん”と流さんも頷いてはるし…


「そんな事ないって。壊れへんって…千明、それ言い過ぎとちゃう?流さんも。」



「だって、事実だし。なァ?」

「うむ…あれは…悪夢だ…」


更に、千明が笑いながら、うちにこう言った。


「ことは。お前も今からちゃ〜んとした料理覚えないとさぁ、姉さんと一緒に嫁に行き遅れなんて事に…」



皆、大袈裟なだけやと思ってたけど、そこまで言うなんてひどい。


うちは立ち上がって、二人をジッと見下ろした。



「・・・・・・・・・。」


「ことは?」「どうした?」


喧嘩するつもりはないんやけど…茉子ちゃんは悪くないもん。

ここは言わなアカン。



「…うちの事は馬鹿にしてもええけど…茉子ちゃんの事、悪う言うのやめて。」



「「・・・え?・・・」」



呆気にとられたような顔をする2人。


「いや、悪くって…そんなオーバーな。冗談だって…」

「うむ、千明、反省しろ!」

「流ノ介、お前…!」


責任の擦り合いをしようとする二人に向かって、うちは更に言った。



「…2人共や。」



「「う・・・。」」



うちから目線を逸らす2人に向かって、うちはさっきよりも大きい声で言った。



「決めた…2人がそない言うんやったら、うちが、茉子ちゃんの事、お嫁にして幸せになりますっ!」



「「え…えええ!?」」



「だから!そない言うんやったら…ほんまにうち、茉子ちゃんの事、お嫁にもらうッ!って言うたのっ!」



「いや、だからな、ことは!それは無理だと…」

「そうそうそうそう!女同士・・・」



「…そんなん、関係ない…!」




「「・・・え゛・・・」」




「茉子ちゃん、ええ人やもん。優しいし、綺麗やし、カッコイイし…料理だって出来るし…

あんな人が、家に毎日おったら…毎日がきっと素敵やと思う…せやから…。」


「「せ、せやから…?」」



「茉子ちゃんが、どんだけ、ええお嫁さんになるか・・・うちがお嫁にもらって、証明したる!」



うちの言葉に、2人は慌てて立ち上がった。


「お・・・オイオイ、ことは・・・落ち着け!」

「悪かった、俺らが悪かったから!!」



「………じゃあ、茉子ちゃんの作ったごはんに文句言わへん!?

…茉子ちゃんが鼻血出しても、エロ侍とか、妄想貴腐人とか、キャラ崩壊(笑)とか、言わへん!?」


料理には人それぞれ、好みはあるやろうけど…御飯を作ってくれた人に、そないな事言うもんやない。

鼻血だったら、流さんかてよく殿様の前で出してはるし。

何より、茉子ちゃんみたいな素敵な人を、そんな風に言うなんて…絶対、あかん!!



「「・・・え゛・・・そ、それは・・・!!」」



お嫁にいけへんとか、そんなん決めつけて言うたらあかん。

2人共…茉子ちゃんの良さが、わからへんなら…良さがわかるうちが、茉子ちゃんをお嫁さんに…!


うちは空気を肺いっぱい吸い込んで、叫んだ。




「…茉子ちゃあああああん!!うちと、けっ…」




「お、オイ!待て待て待て!!」


千明がうちの口を手で塞ぎ、流さんがうちの前に立ちはだかって、両手で待てと言った。


「むぐー!!」


「待て!ことは!早まるな!せめて殿と私が結婚して、前例を作ってから…」


「流ノ介!お前、ドサクサに紛れて何言ってんだよ!!」


「むぐー!!」



黒子さんも2,3人出てきて、ドタバタしだしたその時。



”スパーンッ!”と襖が勢いよく開いた。




「ちょっと!まったく何なの?子供じゃあるまいし、夜にドタバタとうるさいわね。」




現れたのは、仁王立ちして、ムッとした表情の茉子ちゃんやった。



(…茉子ちゃん、丁度ええ所に!)


「・・・ちょっと、2人共、ことはに何してるの?…事と次第によっては、斬るわよ?」


茉子ちゃんの目がカッと開いて、いつの間にか手にはシンケンマルが握られていた。


「いや、姉さんこれはさ…」

「茉子!大丈夫だ!何もない!あと、斬るな!」




…このままじゃ、2人に誤魔化される…!


うちは、すかさず千明の手をどけて、叫んだ。






「…ぷはっ!…茉子ちゃんッ!うちと結婚してくれへん!?」






「・・・・・・・!!」






「うちの…うちのお嫁さんになって下さいッ!」




うちがそう言った瞬間。



「・・・・ッ!!」



茉子ちゃんは、口を両手で押さえながら、壁に背中をバシンっ!とつけて、震えだした。



・・・・・カタカタカタカタカタカタ・・・・・・。



「・・・・・・・・・。」




やがて、茉子ちゃんの体の震えが、止まった。

だけど…ぴくりとも動かへんから…うちは心配になって、声を掛けたんやけど…


「…茉子、ちゃん…?」


応答がない。


「ま、茉子?おーい…」


千明がそろ〜っと茉子ちゃんに近付いて、顔を覗き込んだ。


「姉さん?…姉さ………!」


そして、何かに気付いて、ゆっくりとうちと流さんの方へ振り向いて、こう言うた。


「……ダメだ…立ったまま、気絶してるよ…。」



「そうか・・・刺激が強かったからなァ・・・今の発言は・・・」



流さんが、ぽつりとそう言って、首を横に振りながら歩いていくと、茉子ちゃんの瞼をそっと閉ざした。



…刺激?気絶?

うちの言葉が、そないショックやったんやろか・・・。



・・・・・それって・・・つまり・・・・・・




「そっか…そうやな…茉子ちゃんにも、選ぶ権利、あるし…(ぐすっ)…うちじゃ、ダメって事なんやな…!

確かに、うち阿呆やし…何やっても、あかんけど…けど…茉子ちゃんの事に関しては、誰にも負けへんのに…ッ!」



「いや…あの、ことは…そういう問題じゃ…」



千明の言葉を遮って、流さんがうちの肩にポンと手を置いた。





「ことは!諦めるな!」




「・・・流さん?」


涙目のうちに向かって、流さんは、「…それに、その解釈は、違うと思うぞ…。」と言うて、指をさした。


「…ほら、茉子の顔をよく見てみろ…ことは…」


黒子さんに2人に支えられている茉子ちゃんの表情を、うちはじいっと見た。

茉子ちゃんの綺麗な顔をうちは目を擦って、じいっと見た。


…つうーっと鼻血が、一筋…流れていた。


「ほら、よく見ろ、ことは。茉子のヤツ…あんなに幸せそうに…鼻血を出しているではないか…!

いつもなら、勢い良く噴射するのに…今日は、まるで春の小川のせせらぎのように…チョロチョロと流れている!


私には解る……あれが…あれが、茉子の答えなんだ!ことは!」





「おーい…流ノ介…頭、大丈夫かー?」(千明の棒読みツッコミ)




うちは、茉子ちゃんに駆け寄って、じっと顔を見た。



「…………ほ、ほんまや!流さん!…つまり、茉子ちゃんは…うちの事を…!うちのお嫁さんに…!」




「おーい、ことはー…お前も大丈夫かー?天然じゃ、もう片付けられないぞー?」(千明の棒読みツッコミ)




流さんは、泣きながら力強く頷き、うちに”おめでとう”と小声で言ってくれた。



「お前の気持ちが…通じたのだ!良かったな、ことは!そして…私も勇気を貰ったぞ!私も殿へこの気持ちを…!」

「はいッ!流さん、頑張って下さいッ!うち、応援します!」




「だからー流ノ介さーん?ことはさーん?そろそろ、日本語で話そうかー?」(千明の棒読みツッコミ)




黒子さんが、担架で茉子ちゃんを運んで行く。遠ざかる茉子ちゃんに、うちは大声で言った。



「…茉子ちゃあァん……うち、絶対、絶対…幸せにするからーッ!早く戻ってきてね−!!(泣)」


「おめでとーう!このッ幸せものー!!(泣)」


背後で、千明がボソッと何かを呟いた。


「・・・はあ〜・・・やってらんねぇ・・・。」




その後、茉子ちゃんは病院に輸血しに運ばれ、ツヤツヤした笑顔で志葉家に戻ってきた。

それと入れ替わるように、流さんが殿様のお部屋に勝手に入って、殴られて、病院に運ばれた。




  ― end ―




― おまけ。 ―






 [ ことはのちょっとええ豆知識☆ ]




ことは:「ライスシャワーの始まりは、古代ローマで、幸運が訪れますようにって

 ビスケットを粉々に砕いたんを花嫁さんにかけたのが始まりらしいんやって。




 ・・・って、うちのお姉ちゃんが言うてたわ♪」





茉子:「・・・と言うわけで、今日のおやつは、私がビスケット焼いてみたの♪食べて♪」





丈瑠・流ノ介・千明:「・・・・・・・え?これ、岩じゃないの?」








  『天空の舞ッ!!』 ”ぎゃああああああああああ!”







ことは:「みんな、歯と顎弱いんやなぁ…(パクッ)…(ゴリゴリ・ボリボリ)…。」

茉子:「どう?」


ことは:「美味しー♪」





丈瑠・流ノ介・千明:「・・・・・・。」





  END


あとがき

13話は今でも、ちょくちょく観ます!そのくらい…好きなお話です!

百合あるのぉ?と疑っているアナタ!

シンケンジャーのDVDをみかけたら、まず!1・2話…そして13話を観てみて下さいませッ!