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午後2時17分。

梅盛 源太が、志葉家にやってきた。

 私こと…白石茉子が、今日持ってきてと頼んだものを届けに。


玄関先で、源太はそれを私に見せると、白い歯を見せて得意げに『どうでい!?』と言った。



「笹…」

それをぽかんと見上げながら花織ことはが、私の隣で呟いた。


「源太…私、笹って言ったんだけど?」

私は源太の性格上、”まさか”とは思っていたが…まさか本当に持ってくるとは思ってなかったので、呆れた。



「だから…笹だろぉ?ほぅら!こ〜んなにデッケェ笹見つけてきたぜ〜ッ!」


なおも源太は、”てやんでい”のポーズを取りながら、得意げにそう言い張る。

源太が、あんまりにも堂々と得意げに言うものだから、ことはは自信がなくなってしまったのか


「茉子ちゃん・・・・これ・・・笹、なん?」と私に聞いてくる始末だった。


「いいえ、これは・・・”竹”よ。しかも、青竹!!」


ビシッと私がそう言うと、源太は明らかに”え?”という表情を浮かべた。

・・・本当に、この見事な竹を笹だと思い込んでいたのか・・・。

どこからどう見ても、成長を遂げた立派な竹。遠くから見れば、木と見間違う程の立派なものだ。



「ま……まあ、その…いいじゃねえかっ!竹林からせっかく取って来たんだからよぉ!

 それに、昔からいうだろぉ?竹は笹を兼ねるってな!」


また、そういう無茶苦茶な事を言う…。

源太は白い歯をニッと出して、笑っている。


・・・が。


「兼ねないわよ。しかも、竹林って言ってる時点で気付きなさいよ。笹じゃないって。」


「う゛…いや…た、丈ちゃん、昔からこう…規模がデカいの好きだからよぉ…」


「そういう…問題?」


問題は、規模じゃない。笹か否か…だ。

私が腕を組んでゆっくりと詰め寄ると、空気を読んだのか、さすがの源太も笑顔を引きつらせた。


そんな私の腕をぐいっと掴んで引き止めたのは、ことはだった。


「…茉子ちゃん…源さんがせっかく取って来てくれたんやし…

 それに、こんだけ大きかったら、願い事も空に届きそうやし!うちは…ええと思う。」


・・・・・・ことはがそう言うのなら、良いか。

それに”大きければ願いが空に届きそう”なんてフレーズが、気に入った。


「…ま、いいでしょう。遠くから見たら、似て無い事ないし…。大体、時間もないしね。

 じゃあ、それ設置組(流ノ介&千明)に渡して。」


私が親指で奥を指すと、源太はまたニカッと笑って言った。


「さっすが、まっさん!」

誰?それ…と考える前に私は聞いた。


「・・・ま、まっさんって何?」

大体、予想はつくのだけれど…。


「名前は茉子で、年上なんだろ?だから尊敬込めて”まっさん”だ!」

エビゾーといい、これといい…源太のモヂカラのセンスは認めるが、ネーミングセンスは認めにくい。

しかも、私の背後からは…


「…茉子ちゃん…まっさん…」

ことはが呟いて”ええなぁ”と不吉な感想を漏らしている始末…。


「源太、やめて!今すぐその呼び名は、やめて!ことはが真似するから!」


千明の”姉さん”が限度の私。

”まっさん”なんて、おっさんみたいな呼ばれ方されたくないし…

・・・なんか、文字似てるし・・・響きも嫌・・・!



「ん〜そぉかあ?…あっそうだ!”白さん”の方が良かったかぁ?」

「あ、源さん!それやわッ!」




「そっちも却下ーっ!!」


・・・とにかく、本日は七夕。

願い事なんて、それこそ”早く外道衆を倒して、平和になりますように”くらいしか瞬時に思いつかないけれど…。


私のズボンのポケットの中に入っている、桃色の短冊には

まだ何も書かれていなかった。




  [  七夕 。 ]





「人遣い荒いっつーの。どう考えても、黒子ちゃんにやってもらった方が早いじゃん。」

千明が庭で他の人に聞こえるくらいの声を出して愚痴っている。


「千明!口ではなく、手を動かせ!手を!

黒子さんは黒子さんで忙しいんだ。七夕の準備くらい、私達で心を込めてやろう!」


流ノ介は、そう言いながら庭に杭を打ち込んでいる。

笹…いや、大きな竹を立てる為、必要になったのだそうだ。


「はいはい…わかったよー。」


庭の竹設置組が、手を動かしている頃。

私とことはと丈瑠は、折り紙で飾りを作っていた。

源太がまさか、あんなに大きな笹…いや竹を持って来るとは思わなかった為…

急遽、輪飾りも増やさなくちゃならなくなった。


これだけ本体が大きいのに、飾りが少ないと、なんというか…ショボイというか…かっこ悪いというか

『志葉家なのに…(プッ)』と言われそうな気がしないでもない。


幸い、丈瑠もことはも黙々と作業してくれるので、現場担当の私としては非常にやりやすい。

(ちなみに源太は、七夕特製寿司製作中、なのだそうだ。)


私はひたすら、机の上の折り紙を折り続ける。…実は、こういう作業、結構好きなのだ。


「なあなあ…茉子ちゃん、ここ、これでええの?」

「そう、それで…横に1センチ間隔で、切っていってね。」

「うん、わかった。」


ことはが、どことなくウキウキしているのは、見ているだけで解る。

私も、大人数でこういう作業をしていると、まるでお祭の前みたいでワクワクする。


「丈瑠は?出来てる?輪飾り…」

「大丈夫だ…教えてもらった通りやっている。」


「手、切らないでよ?」

「・・・・・。」


丈瑠は丈瑠で、黙々と折り紙と格闘中。

・・・これでも、機嫌は良い方だと私は、今までの付き合い上、そう思う。


実は、さっきまで彦馬さんも一緒に作業していたのだが、座りっぱなしの作業に腰がついていかなかった…。

飾り付けが終わるまで休んでもらう事に。



「よし、土台はOKだな。あとは飾りをつけた竹…いや、笹を立てるだけだ!いやー立派な笹だな!!」


庭では、設置組の一人が土台完成に沸いていた。


「(意地でも、笹と思い込みたいんだな…流ノ介…)

 …オーイ、丈瑠〜!早く輪飾りとか、持って来いよー!飾ろうぜ〜!」

千明に呼ばれて、丈瑠は「…ああ。」と返事をすると”持っていく”と出来上がったものを箱に入れ

それを抱えて、庭へと出て行った。


私は丈瑠の抱える箱の中をチラリと見たが…


(・・・流ノ介と千明、驚くだろうなぁ・・・)


と、思った。




「……と、殿…!」

「…うわ、なんだこれ?輪じゃねえじゃん…!」

「…殿、しかもこっちは折鶴ばっかり…」


そう…丈瑠は意外と不器用。

当初私は、ことはと一緒に丈瑠にも教えていたのだが…断念。

丈瑠には、簡単な輪飾りと得意の鶴を作ってもらう事に。



「…俺は、紙飛行機と鶴しか折れん。あと、輪飾りは初めてだ。」


庭から聞こえる丈瑠の言葉に”威張るな”と私は心の中でツッコむ。


「これじゃ千羽鶴じゃん…お見舞いじゃねえんだからさ〜…」

「・・・・・・。」

千明のいう事はごもっともだが、丈瑠唯一の自信作だ。そう言わないでやって欲しい。

黙る丈瑠に、流ノ介が助け舟を出す。

「…い、いや!これはコレでなかなか凛々しい鶴です!殿、是非飾らせてください!」


・・・もっとも、その助け舟、泥舟に近いが。


「まてまてまてーい!丈ちゃんは不器用なんでい!俺が代わりにつくってやらぁ!!」

「源太…?」


調理が終わったのか、丈瑠のピンチを助けに来たのか…もし、後者の場合だったら、即刻作業に戻ってもらうとして…。

源太が庭に颯爽とやってきた。・・・包丁を手に。


そして、縁側にまな板を敷くと、包丁を動かし始めた。


「・・・・ほっ!はっ!・・・どうでいッ!!」

源太が元気よく突き出したのは…


「へ〜さすが上手いな〜源太…って、これキュウリじゃん!」

さすが寿司職人。飾り包丁もお手の物、か。



だけど・・・七夕まったく関係なし。


千明にツッコミを入れられ、飾りキュウリは、一瞬のうちに喰われた。


「あ、オメー今、喰うなよ!これ、飾りなんだからよぉ!」

「源太、キュウリじゃなく、紙で作った飾りを飾るんだ。」


丈瑠に言われて、源太は少し考え…クーラーボックスから色々取り出し始めた。


「キュウリの飾りがダメなら…えーと…シソじゃダメか?あ、あと…トビウオ、タチウオ…」


「なんで七夕飾りに生魚飾るんだよッ!?」

「なんだとぉ…魚をナメるんじゃねえぞ!?頭良くなるんだからな!?」


…もう、なにがなんだか…。ていうか、うるさいし…。


「そういう問題じゃないだろう!あ、ことは!茉子!お前達の飾りは!?」


流ノ介に言われて、私は振り向いた。

「はいはい…ほら、菱形階段に、ハート吊りに星飾りに提灯…基本的なヤツだけど。」


仲間達に、飾りを見せると、仲間達はいっせいに「おお〜」と感心の声を漏らした。


「幼稚園でよくこういうの作るからね、得意なの。」

 

私がそういうと、千明は安心したように笑った。


「さっすが姉さん!安心のラインナップだよ!」


「あ、うちも茉子ちゃんに教えてもらって、色々…これ、網飾りと網飾りと…網飾り!」

「網飾り、好きなのな…ことは…。」


私はことはと机の上の飾りを持って、庭に出た。

箱の中の飾りを一つ手に取り、源太が感心しながら言った。


「おっ!こ、これは・・・・折り紙のスイカじゃねえか!粋だねぇ〜!まっさん!」

「褒めてくれるのは良いんだけど…まっさんは止めて。源太。」


横になった竹を指差し、ことはが「もう、飾ってええの?」と聞いた。


「あ、もう飾りましょう。夜になってしまうわ。」

6人もいれば、飾りつけなんて、あっという間だろう。


「お、おおおおお!な、なんて七夕らしいんだ…ッ!」


流ノ介が、また妙な所で感動している…。

毎年、イベント毎にこういうテンションとリアクションをとられると、1年楽しいだろうな、と思う。(本人が)



「・・・・・・・。」

「あ…この鶴も実に七夕らしい!涼しげだなぁ!!」


しっかり”殿様フォロー”も忘れない。さすがよ、流ノ介。



「あ…みんな、願い事の短冊、書いてくれた?」


ことはが、ふとそう言った。



それは今朝の事。

ことはが食事が終わると同時に皆に短冊を配った。



『今日は、七夕やから…みんなの分の短冊作りました!

 願い事を書いて、今日飾りましょう!』



と言うわけで…




「バッチリ気合入れて書いてきたからよぉ〜!コイツは叶うぜぇ〜!」


源太が意気込んで、短冊を飾った。

金色の短冊には『宇宙一の寿司侍!』と書かれてあった。


(・・・わ、解りやすい・・・。)


でも、源太らしい。


「俺も一応、気合入れて書いたぜ。」

千明の緑色の短冊には『打倒!丈瑠!』と書かれてあった。


(…殿様に堂々と宣言しちゃってるし…。)


でも、千明らしい。



「お前達、少しは自分以外の物事にも目を向けたらどうだ?」


そう言った流ノ介の青い短冊には『殿を守る!』と大きく書かれていた。


(…うん、うすうすわかってはいたけど…そのまんまね。)


でも、流ノ介らしい。


「……」

丈瑠は丈瑠で黙々と短冊を飾っていた。

誰にも見られたくないのか、こっそりと端っこ…竹を立てればかなり上の方に。


『平和』


(シンプル過ぎ…)


でも、丈瑠らしい。




「…あれ?茉子ちゃんは?」


「え?」


「短冊。」


ことはに言われて思い出した。

私の短冊はまだ、何も書かれていないまま、ポケットの中だ。


「あ…実はまだ書けて、ないの。」

「え…ほんま?」


「今、ぱぱっと書いちゃうね。」


笑ってペンを握り、そう言ったものの…何を書いたら良いのかわからなかった。


(…願い、か…。)


私の願い…ってなんだろう…。

昼間一度深く考え込んでみても、やっぱりまとまらなかったのだから…

ここで、ぱぱっと書けるわけがない。



「……思いつけへんの?」


見るに見かねて、ことはがそう尋ねてきた。

私は苦笑しながら答えた。


「…ん〜…これぞってお願いがね…そういえば、ことははなんて書いたの?」

私がそう聞くと、ことはは少しもじもじした。


「…え…あ、うちは…うん…書いたよ。」


まるで、言葉を濁すような言い方だ。


「…なんて?」

「あのー…えっと…あのー……。」


恥ずかしがっているよう…にも見える。

源太や流ノ介以上に恥ずかしい願い事あるんだろうか…??(失礼)


一体、どんな願い事書いたのだろうか?


「…なんて書いたの?」


「あ…あの…”みんなと仲良く一緒にいたい”って…こ、子供みたいなんしか、思い浮かばなくって…

こ、こんなんやったら…”茉子ちゃんみたいに大人っぽくなりたい”って書いたら良かったんかな…」


やっと白状させると、ことはは顔を真っ赤にした。


それがどうにも可愛らしくて。思わず私はことはの頭を撫でてしまう。

・・・ああ、こういうのが”子供扱い”なんだろうか・・・。


「…子供っぽくなんかないわよ。私もそう思うもの。」


「あ…ほんまに?」


ことはらしい願いだと私は思った。



「うーん…私はどうしようかなぁ…」



そう呟いて、ペンを再び握るが…一文字もかけない。

本当は、その原因は解っている。


”思いつかない”のではなく。

願う事はあっても、それを文章にして書けない。


願い事を短冊に書けば、願い事が叶う。

・・・でも、誰が、叶えてくれるの?そして、それはいつ?



 答えは、わからない。



わからない、不確かなモノに、自分の心からの願いを託すのを…私は心の中で否定していたのかもしれない。




「おーい!竹…いや、笹立てるぞー!いいかー?」

流ノ介が大声で叫んだ。


「あ!待って、流さん!茉子ちゃんがまだ…!」

「いいわよー!」


私はことはの言葉を遮って、OKを出した。


「よーし!せーの!…………コラー!千明!手を貸せ!」


「頑張ってー流ノ介ーお前なら出来るー(棒読み)

 …なぁ源太、寿司まだ?俺、腹減っちゃって。」


「おう!任せておけい!舌がねじ切れる程、旨いの用意してあるぜッ!な、丈ちゃんも喰うだろ?」

「…ああ。ねじ切れるのはゴメンだが…。」



「こらー!手伝えーッ!!殿以外、手伝えー!!」




「茉子ちゃん、なんで…?」


騒ぐ仲間達を後ろに、ことはが私にそう聞いた。


どことなく寂しそうな顔をして。

そんな顔しなくてもいいのに。



「いーの。」


そう言って、私はことはの頭をまた撫でた。




「…私も同じだから。」



囁くような小声で呟いてから、私は流ノ介の傍へ。

竹を立てると、その大きな竹は、下から見ていると本当に空に届きそうに見えた。


空は既に暗くなり、星が瞬き始めていた。


「…あー…今夜は天の川見れそうね。」


私は、空を見上げながら言った。


「そうだな…今年は晴れて良かった。」

丈瑠が静かにそう言った。


「こんな時、外道衆現れてくれるなよ〜って思うよな〜」

「千明、それは甘い。外道衆が現れたら、盆も正月も…」


流ノ介の説教モードを引き裂くように、遠くから源太が叫んだ。


「おーっし!皆〜!ゴールド寿司特製!七夕寿司でい!たっぷり食ってくんな!」


「おお〜源太、今日はまた凝ったなぁ」

…ちゃっかり彦馬さんもいる。腰は大丈夫だろうか…。


皆に続いて、私も向かおうとするとことはが私の手を掴んで引き止めた。



「・・・ん?どうか、した?」


「名前…書いといたから。」


「・・・え?」



そう言われて、私は竹の方を見た。

ことはの黄色い短冊を探した。



それは結構、下の方にあって…手の届く場所にあり、すぐに見つかった。




黄色い短冊には





 ”みんなと仲良く”




 ”一緒にいたい”





”ことは 茉子”



私の名前が書き加えられていた。




「……ありがとう、ことは。」


私が心からそう言うと、ことはは笑った。


「…茉子ちゃんって、無欲なんやなぁ。」

「え、えぇ〜?」


何を勘違いしたのか、ことはがそう言うので、私は苦笑いを浮かべていた。


「そういうの、ええんよ〜?無欲は勝利の素やって。」

「…そ、そう?」






本当は…無欲でもなんでもない。


カッコつけ過ぎと思って、言いそびれただけ。




…本当に叶えたい願いは…自分の手で、叶えてみせる。




・・・なんてね。


言えない言えない。(苦笑)







「おーい!ことは!茉子!寿司、無くなるぞ!」

「シャリだけになるぞ〜!」


「ばっかやろー!ウチの寿司は、シャリだけでも旨ぇに決まってんだろ!?」




「あ、はーい!行こ!茉子ちゃん!」

「うん。」





ことはの手を握りながら

私は、今日くらい、どこかの知らない誰かに、私の願い事を叶わなくてもいいから、聞いてくれるだけでもいいかも

・・・なんて思えた。


そうよ。聞いてくれるだけでいいの。

だって、やっぱり、自分の願いは、自分で叶えないとね。



私の願いは



 『 人々の笑顔を守れますように 』



 END









 - おまけ  折神談義。 -




 『折神。』


志葉家をはじめ、家臣の家にそれぞれ代々伝えられてきた

モヂカラで操る事の出来る、式神達の事。


モヂカラを込めると、動物の姿になったり…巨大化させて、合体すればご存知『シンケンオー』にもなったりする。




・・・で、普段はどんな感じなのかというと。




ことは:「…むー…」

猿折神:『キーキー!(起きろ!天然ボケ!稽古やでッ!)』

ことは:「…あ…もう朝や……おはよう♪今日もありがとー。」

猿折神:『ウキー…。(やれやれ…)』


・・・と、こんな感じで目覚まし代わりに使われたりすることもある。



彦馬:「…では、朝の稽古だ!始めぃ!!」


「「てやー!」」「「とおッ!!」」



そして、時には折神同士、世間話をしたりする事もある。



亀折神:『・・・・(はぁ〜…)』 ※注 亀の鳴き声が解らない為”・・・”にしております。

猿折神:『ウキキ?(どないしたん?亀。溜息なんてついて。)』


亀折神:『・・・・(今の私の主人、茉子の事よ…はぁ〜ぁ…。)』

猿折神:『ウキ?ウキキ!(なんでや?めっちゃ、しっかりしとるやんか。うちのと違うて、悩む事あらへんて)』


亀折神:『・・・・(そうじゃないわよ。あれで、結構抜けるトコは抜けてるんだから。)』

猿折神:『ウキャ…(そうなん?…意外やわ。うちのは”茉子ちゃんカッコええなぁ”って言うてるで。)』

亀折神:『・・・・(それ本当?)』


猿折神:『ウキウキキ!(そらもう…嫁にするとか訳のわからん事を…まあ、それだけ好き、いう事やろうけど。)』

亀折神:『・・・・(…だとしたら、嬉しいわ。うちの主人、あなたの主人の事、相当好きみたいだし。)』


猿折神:『ウッキッキ!(ソレ、えぇ事やんか。自慢やないけど、ことはは…あんまり友達作れんかったんや。)』


亀折神:『・・・・(茉子も、よ。剣の稽古に、私を使いこなす為に、子供らしい遊びも何もしてないわ。

 だから…私、よくあの子の前で飛んだり、色々したけど…それでも、埋められない寂しさがあるのよね)』


猿折神:『キキー・・・(まあ…うちらに出来る事は限られとる…モヂカラ受けんと、こんな小さい身体のままやしな。)』

亀折神:『・・・・(だから…今、茉子は辛い戦いの中でも…幸せ、なのよね。仲間がいるし…そして…。)』




ことは:「痛ッ…!」

流ノ介:「大丈夫か?ことは!」

千明:「わ、悪い・・・ことは!俺…!」


ことは:「…あ、気にせんといて。こんなん平気やし…」


茉子:「ことは、足見せて。……あとは、私がやるから、稽古続けてて良いわよ。」


丈瑠「・・・・茉子、頼む。続けるぞ。」


茉子:「うん。千明も、気にしないの。冷やせば大丈夫よ。」


千明「…おう…ことは、ごめんな。」

ことは:「ええんよ。千明、うちこそ、ごめんな。稽古、最後まで付き合えなくて。」

千明:「いいっていいって!早く治せよ!」


ことは:「うん!」


茉子:「…………ことは。私が言いたいこと、わかる?」


ことは:「…え?」


茉子:「怪我したら、無理せず、すぐに言いなさいって言ったわよね?こんなに腫れるまで…無理して。」


ことは:「……ご…ごめんなさい…このくらい、平気やと思って…」


茉子:「…じゃあ、同じ事はもうしない事。約束よ。…黒子さん、包帯お願いします。」


ことは:「・・・・・・茉子ちゃん、いつから気付いてたん?うちの足の怪我…。」


茉子:「途中から、利き足を変えたでしょ。」


ことは:「……やっぱ、すごいなぁ…茉子ちゃん…包帯も巻くの、上手いし。」


茉子:「感心しないの。私、ちょっと怒ってるのよ?」


ことは:「ご…ごめん、なさい…えへへへ…」


茉子:「…なんで嬉しそう、なの?」


ことは:「…なんや…心配かけたのはすごく悪いって解ってんねんけど…でも、なんか嬉しい。


 ・・・茉子ちゃんに心配されて、叱られるの。」



茉子:「・・・・毎日、心配してるし、考えてるわよ。ことはの事は。」

ことは:「・・・・・・。」


茉子:「あっ!・・・いや、別に…!その、だから…こけたりしないかな、とかそういう心配で…」


ことは:「・・・うちも。」

茉子:「・・・え・・・。」


ことは:「…うちも、考えてる。毎日…茉子ちゃんの事。…無理せえへんか、心配で。」


茉子:「・・・・・ありがとう・・・ことは・・・。」





猿折神:「ウキウキ…(…ええ話やんか…。)」

亀折神:「・・・(…まあね。はぁ〜…。)」


猿折神:「ウキ?(…だから、どないしたん?溜息なんかついて…。)」

亀折神:「・・・(だから、言ったでしょ?あのコ…結構、抜けてるのよ。)」




ことは:「・・・あの、茉子ちゃん…うち、思い切って言うわ・・・。」

茉子:「・・・え?・・・なに?」


ことは:「…ずっと、言おう言おう、と思ってたんやけど…」

茉子:「な…なに・・・?」











ことは:「あんな・・・茉子ちゃん、さっきから・・・


・・・・めっちゃ ”鼻血” 出てる・・。」



茉子:「えッ!?嘘ッ!?・・・ああーっ!!」







亀折神:「・・・(茉子…ことはの生足に触れるだけでも、鼻血出るようになっちゃったみたいでね…。)」


猿折神:「ウキィ…(あ、ホンマや……なんや、残念やなぁ…。)」

亀折神:「・・・(…まあ、茉子が幸せなら、文句は無いわ…。)」




 ・・・折神たちの話(心配)は、尽きない。





  ― END ―



 あとがき。


前半の七夕SSは、全体的にほのぼのさせたく、百合の匂いもさせませんでした。
(茉子さんは、お願い事するよりも自分で叶えようとする、そんな女性な気がしまして。)

・・・で、肝心の茉子さんの願い事、散々迷って、直しに直しました。
(ギャグなら『ことはとチョメチョメ☆出来ますように♪』なんでしょうけど。)

まあ、結局、アレに落ち着きました。
ことはだけの笑顔を守るのではなく、責任感のある茉子さんはことは、ことはの周囲も守ります。きっと。


後半のSSは、会話だけでしたが、一応、折神視点のお話です。
(折神は、オスかメスかはしりませんが・・・どっちもメスにしました。苦笑)


・・・で、結局『鼻血』で落ち着く、と。


茉子さんは、クールな反面、振り回されて暴走(鼻血出す)する…そんなお姉さん

・・・な訳ないじゃないのッ!!(自分へのツッコミ。)

本当は、茉子さんは、優しくてカッコいいんです。

だから、ことははそんな茉子さんが(茉子さんの欠点なんか、可愛いとしか思ってないだろう)大好きなんだと思います。


・・・ええ、私の妄想ですよ。そして、桃黄以外のフラグなんか私の中で立ちません。