・・・このお話はフィクションです・・・。


実際の人物、団体、その他もろもろ…一切、全く関係ございません。

なお、この作品は、百合・二次創作・同人誌等を好む方にとって、不快感を与える恐れがあります。


この作品についての批判は一切受け付けません。ご了承下さい。


あと・・・作者は、喧嘩は売ってません。





   [ とある漫画家の悩み。〜ペンネーム:奇亭 烈子の場合〜 ]





   ”ぷるるる…ぷるるる…カチ。”




   ”只今留守にしております、発信音の後、メッセージをどうぞ。”





     ”ぴー”




 『あ、もしもし?月刊ずぼんの田中ですけど。締め切り、間に合いそうですかー?


  ・・・・また電話するからな、原稿できてなかったら…覚えておけよ。』





      ”ガチャ。”




「・・・・・・マズイ・・・怒ってる・・・。」



私の名前は品川 麻美…職業は漫画家。ペンネームは奇亭 烈子ってふざけた名前。


普段は同人で活動している。


別名『百合マスター』とか『一人百合女学園』とか

『あ、女目線から百合描ける人』とか『女風呂入った時もそんな事考えてるんですか?』とか呼ばれている。



私は、女の子同士が…イチャイチャベタベタしているのを眺めるのが好きだ。


少女マンガを買い始めた動機も、女の子が表紙だったからだが…

その内容は、期待はずれだった…。


幼少の私は思った。


何故、ヒロインは…男とくっつくのだろう…と。


元・カノや悪い女の手に簡単に引っかかったり。いきなりキスをしてきて、ヒロインを困らせたり。

興味ないとか、思わせぶりな態度で、傷つけたり、ドキドキさせたり、ときめかせたり。

かと思えば、ヒロインがいなくては、俺は、どうにかなりそうだ〜とか言って来たり。

妊娠させて、結婚してみたり。

2人に降りかかる物語の数々、展開を見て、読者はワクワクするのだろうが


私は違った。


何故、そんなヤツが好きなんだ!?と。

親友の女の子は、親身に話を聞いてくれるじゃないか!というか、こっちの方がいいわ!!と。

そして、ラブ&ベリーは、本当に”おしゃれ”魔女だったのだろうか?と。


…いや、これは関係ないわ。


とにかく、そこで気がついた。

私は、百合が好きなのだ、と。


気がついたが最後、坂道を転がり落ちるがごとく、私は、百合街道膝栗毛して行った…。


何でも百合になってしまう。

妄想が止まらない。BLでは抑えきれない…GLじゃなければ、ダメなのだ!!


…と。そんな、百合大好きな私が…。


あの、少女漫画雑誌大手の、月刊ずぼんで漫画を描くことになった。

漫画家として、これ以上光栄な事は無い!!


…プロとして、初めての仕事だ…絶対に成功させよう…


そう決意したは良いのだが…。


「どうしよう…描けてないよー…」


そう、完成していないのだ。締め切りまであと3日。




    ”恋愛パッショニスタ”




タイトルからして、売れそうもないが…。

いや、これは担当の田中さんが、これがイイってゴリ押ししてきたのだから、私のせいじゃない。


問題は…内容だ。


少女漫画で、百合漫画を描く訳にはいかない。

男の子と女の子の清い清い…ラブストーリーを思春期の女の子に届けるのだ…ッ!!


・・・・・・でも。


思春期だからこそ、百合に…………いやいやいやいや!!


また、妄想が暴走し始めてしまうッ!!!ここは、ノーマル…!




なあに…簡単だ…攻を男にすれば良いんだ。そうよ。簡単簡単…♪




始まりは…主人公、明菜が転校して来るシーン…。




  主人公・明菜『…ここが、私立栗の木女学園ね…よーし女の園で頑張るぞー☆』





アホかー私はーッ!!女学園って言ってる時点で、男が入る隙間もねええええ!!



致命的なミスだ。

…このままではダメだ…私お得意の百合になってしまう…ッ!!


修正修正…共学にしよう。


で、相手役は…教師がいいなぁ…大人との禁断の恋。うん。



  主人公・明菜『…ここが、私立栗の木学園ね…よーし、今日から頑張るぞー☆』



  『フフフ…』


  明菜:『だ、誰?私を笑うのは…』



 港:『私は鈴木港…この学園の女教師よ、今日から貴女の担任よ。』



 明菜:(…こ、こんな美人な先生が私の担任…!)



 港:『……貴女…私の死んだ恋人にそっくりだわ…』


 明菜:『え・・・・?(ドキドキ☆)』





待てーい!ときめいちゃダメだああああ!!フラグ立ってるじゃねえかーッ!!!

死んだ●●にソックリとか危ねえよー!女教師モロそっち系ですってガチ百合宣言しちゃってるよ!!

百合フラグガンガン乱立じゃないのさーッ!!!

大体、女教師ってキーワードだけで、同人誌5冊分の妄想できるわ!アホー!私のアホー!!


修正修正…学園での出会いはやめて…王道で行こう…!




 チンピラ:『よおよお〜姉ちゃん付き合えよ〜』


 明菜:『きゃー!助けて〜Hな事されちゃう〜!』


 『やめるんだ!』


 チンピラ:『おう?兄ちゃん…いい度胸して…うっ!?』


 泉:『僕の前で、女性に乱暴するなんて…お前はついてないな…!フンッ!!』


 チンピラ:『ぎゃ、ぎゃあああ!強っ!蹴りがすごいっ!強ッ!逃げるが勝ちだぜ!覚えてろー!!』



 泉:『…ふっ…毛虫モジャ公め………大丈夫かい?お嬢さん』


 明菜:『あ、ありがとうございま…キャッ!僅かな段差に、けっつまずいちゃったぁ…!』


 泉:『おっと…危ない…大丈夫?僕の胸のクッションもたまには、役に立つね。』


 明菜:『胸のクッション…?…あ、あなた…もしかして、女の人―!?』



  泉:『そうとも!』





・・・って、ダメじゃあああああああああああああん!!!(泣)

男装の麗人って、もういかにも攻!でも、夜のギャップを考えて受!が萌ッ!

いや、違うんだよ!!

胸のクッションなんかいらないんだよ!二つのふくらみが少女の心を狂わせるってか!?

いや、何描いてんの私っ!!男女カップルの漫画描かないと田中さんにまた至近距離で怒られる―ッ!!




修正修正…




 明菜:『きゃー!助けて〜破廉恥な事されちゃう〜!』



   『やめるんだ!この野豚野郎!』


 チンピラ:『おう?兄ちゃん…いい度胸して…うっ!?』


 泉:『僕の前で、女性に乱暴するなんて…お前はついてないな…!フンッ!!』

 チンピラ:『ぎゃ、ぎゃあああ!強っ!蹴りがすごいっ!強ッ!逃げるが勝ちだぜ!覚えてろー!!』


 泉:『…ふっ…毛虫モジャ公め………大丈夫かい?お嬢さん』


 明菜:『あ、ありがとうございます…(素敵な人…)』



うん。これでいい。

そして、学園で再会する2人…!


 明菜:『あッあなたは…今朝のカッコイイ殿方!』

 泉:『き、君は…今朝、道端で、毛虫モジャ公に”何か”されそうになっていた女子!!』



 美羽:『どうしたの?2人共…』



 明菜:『あ、さっき友達になってくれた、きさくな性格の美羽ちゃん!』

 美羽:『泉〜そのイケメン面で、転校初日であたしの親友に昇格した明菜に何したの〜?』

 泉:『な、なんだよ!僕は何もしていないぞ!』


 美羽:『言っておくけど、あたしの親友、泣かせたら、承知しないわよ。』

 明菜:『え?や、やだ…美羽ちゃ、ん…(ドキッ)』

 美羽:『あ、何赤くなってんの?明菜ってば〜♪カワイイ♪』


 明菜:『え…そんな…美羽ちゃんの方が…』

 美羽:『いやいや、明菜の方が…』



うおおおおおおおおおおおおおおお!!!立つなーッ!!恋愛フラグーッ!!

私の百合魂よ!少しの間だけでイイ!だまっててー!!!




・・・・はっ!




そうだ…こんな妄想ばかりが先行するのは…私の中に煩悩が溜まっているからだわ…!!


瞑想よ!座禅よッ!!!




「・・・百合よ・・・出て行け・・・!百合よ・・・ちょっとの間だけ出て行けーッ!!」




私は、神に祈る気持ちで座禅を組んで、瞑想し続けた。




そして…。





「おっす…原稿、出来たんだって?」



「はいっ!田中さん!見てください!!!」



私はなんとか、原稿を完成させた!!やった!これで私は…月刊ずぼんの作家だ!!


しかし。




「ボツ。」




「・・・え?」



「だから、ボツ。」


「・・・ど、どうしてですかーッ!?」




「お前さぁ…台詞がおかしいんだよ。何?この毛虫モジャ公とかさ…

 今時の高校生が、男の事を殿方って言わねえんだよッ!話も典型的過ぎるッ!

オマエ、なめてんのか?思春期の少女をなめてんのか?夢見る乙女共がこれで釣れるか!バカヤロー!!」





 その日。私は田中さんに、15センチの至近距離で怒られた。





・・・END・・・



神楽も、ノーマルカップルのお話を描こうとすると、こうなります。(苦笑)

殆ど…病気に近いです(笑)