・・・このお話はフィクションです・・・。


実際の人物、団体、その他もろもろ…一切、全く関係ございません。

なお、この作品は、百合・二次創作・同人誌等を好む方にとって、不快感を与える恐れがあります。


この作品についての批判は一切受け付けません。ご了承下さい。


あと・・・作者は、どこかに喧嘩などは売ってません。



[ とある漫画家の苦悩 〜 黒井麗子の場合 〜 ]



百合。

それは一言で言えば、女性と女性の恋愛をさす言葉である。・・・言葉にすれば、それは至極簡単である。

そう、言葉にするのは簡単だが・・・



「・・・いやあ、お疲れ様でした!黒井先生!」

「いや、先生なんてやめて下さいよ。私、携帯ゲームのキャラクターデザインに携われるなんて、とても光栄で・・・こちらこそ感謝してるんですから。」


私こと、黒井麗子が読みきり百合作品を3作品ほど書いた所で

とある大手携帯ゲームメーカー”モグリー”のゲーム製作チームの担当者である藤井典子さんから

『百合シミュレーションゲームのキャラクターデザインの依頼』が来たのは、半年前の事である。


私のデザインしたキャラクターの女の子達がゲームの登場人物になっていて、プレイヤー(女の子)はその女の子達と恋愛を楽しむ・・・という内容だ。


「あ、そうだ。黒井先生、試しにプレイしてみますか?まだテスト中なんですけど。」

「え・・・いいんですかぁ!?」


それは嬉しい申し出だ。

もしかしたら、これからの私の作品の参考になるかもしれないし。


・・・まあ、正直にぶっちゃけると・・・・・・・・・仕事無くて暇だし。


「ええ、勿論ですよ。率直な感想を聞かせて下さい・・・。

実を言うと、百合ってジャンルに手を出すのは、初めての試みでして・・・スタッフ一同、困ってる所もあるんですよ。」


そう言いながら藤井さんが苦笑いした。目の下には気のせいかクマまで出来ている。美人なのに気の毒な事だが、不規則な生活の漫画家の私も人の事は言えない。

(・・・じゃあ、やらなきゃいいのに。)と内心私は思ったが、笑顔で答えた。


「あ、いえ、私なんかの感想で参考になるんだったら、是非プレイさせて下さい。」


そう、何度もぶっちゃけるが、私は暇だ。正直売れたい。印税が欲しい。貧乏は嫌だ。

ネタになるんだったら、この際、ゲームシナリオの一部でも参考にしたい位、ネタに飢えてい・・・


※注 このお話はフィクションです。 


「じゃあ、このケータイでプレイしてみて下さい。」

そう言って藤井さんはパソコンからケーブルで繋がれたピンク色の携帯電話を私に渡してくれた。



校舎の絵と共に浮かび上がってくるタイトル文字が・・・


『百合んくる★ぴゅあはーと』


「・・・・・・・・。」


まず・・・。


まず、タイトルが悪意を感じるほど、恥ずかしい。名付け親は誰だ・・・!


・・・百合というか、女の子っぽさを前面に出そうとし過ぎて、失敗臭がする。ちょっと、気持ち悪い・・・かも。

学校生活を送りながら百合的な恋愛をするゲームなんだから・・・まあ、確かにこのタイトルでわかりやすいといっちゃー・・・わかりやすいが・・・。


「どうです?」

藤井さんに早速意見を求められたので、私は顔を若干引きつらせながら答える。

「あ、あの・・・このタイトル・・・」

私が顔を引きつらせて、そこまで言うと、藤井さんは”あ、気付いちゃいました?”みたいな笑顔を浮かべながら言った。

「あ、それですか?(仮)ですよ(仮)!んもー(仮)だと思って、吉田さん適当にタイトル付けちゃってー」

(仮)、と聞いて私は安心した。

「あ、そうなんですか・・・良かっ」


「正式名称は『恋する百合乙女ピュアはーと★ザ・ファイナルプロジェクト』なんですよ。」


「ダメええええええええええええええ!!!」


「え・・・だ、ダメですか・・・?」

「ダメ!なんなの!その長いわ、恥ずかしいわ、そしてザ・ファイナルプロジェクトって何なんですかッ!?学校生活でどんなプロジェクトさせる気なんですか!?」

「あ、す、すみません!開発者一同、ここ最近寝ていなくて・・・!深夜のノリで、つい・・・!」

「いいですか?こういうものは、シンプルが一番なんです。」


「・・・・・・・・あ、じゃあ・・・・『THE・レズ生活』とか?」

「シンプル過ぎ!喧嘩売ってるんですか?そのタイトル。AVのタイトルじゃないんですよ!?」

「あ、す、すみません!開発者一同、ここ最近寝ていなくて・・・!深夜のノリで、つい・・・!」


藤井さんが平謝りしてそう言うので、私は少し考えを巡らせてみた。


「うーん・・・女の子を連想させるような単語や・・・もしくは、このゲームでのキーワード的な単語無いんですか?

伝説の木の下で〜的なモノとか。」

「あ。そうか・・・そうですよね・・・じゃあ、次点の候補タイトル『貴女の唇は淫靡な桜色 〜コンニャクに切り口を入れて〜』でどうですか!?」

「どうですか!?じゃないですよ!長い!そして、AVじゃないって言ってるでしょうが!

それからサブタイトル!どんなキーワード掘り下げたら、そんな卑猥なモンが出てくるんですかッ!?」

「あ、す、すみません!開発者一同、ここ最近寝ていなくて・・・!深夜のノリで、つい・・・!」

「深夜過ぎますよッ!今まで、一体どんな会議してたんですかッ!?」


気が付けば私は思い切り、開発室のど真ん中で大声でツッコミを入れていた。


「おお〜」「言われてみれば・・・」「そうかもな・・・」「修正しよう。」「そうしよう。」

”カタカタカタカタ・・・”

「・・・・・・。」


開発の人達が頷きながら、パソコンのキーボードを猛烈な勢いで叩き始めた。


「さッすが!百合作家さんですねえ!・・・タイトル一つ取っても、こだわりがあるなんて・・・こちらとしては、助かります!」

「い、いや・・・普通です。普通の漫画家やってるだけなんですけど・・・。」

「タイトルはすぐにでも変更しますッ!・・・あの、是非是非、プレイしてって下さい!そして、ズバッとプロの意見をお願いします!」

「は・・・はい・・・」

あまり過度な期待はしないで欲しいんだけど・・・問題は、自分のキャラクターがゲームに登場するのだ・・・。

この開発チームの手によって私のキャラクター・・・我が子達がどんな扱いをされているのか、気になって仕方がなくなってきた。

それに、私は悲しい程、暇だ。

私はゲームをスタートさせるべく、携帯のボタンを押してゲームを開始した。

まずは名前入力。


(・・・まあいっか、ペンネームの・・・黒 井 麗 子・・・と。)


桜:『お・・・おはよう!今日から、アンタと同じ学校・・・しかも、私達同じクラスだよ!』

麗子:『あ、おはよう!桜ちゃん!そうみたいだね!』

桜:『アンタとは、小さい頃から幼馴染みでずっと一緒だったから、私、アンタと一緒になれて嬉しいなっ♪』

麗子:『桜ちゃん・・・これからもよろしくね!!』

桜:『うん♪ヨロシクね!アンタ!』



「名前呼べよおおおおおおおおお!!」



「え!?な、なにか問題でも!?」

「何で名前入力したのに、大人しかった幼馴染みがずっと主人公を”アンタ呼ばわり”してるんですかッ!入力させたんなら呼べよ名前で!女房かッ!!」

「あ、す、すみません!開発者一同、ここ最近寝ていなくて・・・!深夜のノリで、つい・・・女房キャラに・・・!」

「深夜のノリをキープし過ぎですよ!どれだけ寝てないんですかッ!?大体、女房キャラって設定に私書いてませんよ!」


「おお〜」「言われてみれば・・・」「女房じゃなかったな・・・」「修正しよう。」「そうしよう。」

”カタカタカタカタ・・・”

「・・・・・・。」


開発の人達が頷きながら、パソコンのキーボードを猛烈な勢いで叩き始めた。

藤井さんはすがりつくような目で私を見ながら、こう言った。

「あの、黒井先生・・・引き続き、プレイをお願いします!」

「・・・はい・・・。」


・・・私は今、暇を持て余している自分を呪いたい。


万里亜:『ちょっと!黒井さん!そのスカート丈、校則違反よ。』

麗子:『え・・・?そ、そうなの?』

万里亜:『風紀委員の私の目の前で良い度胸じゃない・・・』


磯辺 万里亜は風紀委員のちょっと真面目でカタイ女の子、という設定だが

デレるとそのカタさが消え、感情のコントロールが効かなくなり、可愛く見えるよう・・・まあ、ワザと始めはキツ〜イ性格に設定してある。

設定してあるのだが・・・このゲームでそれが”ちゃんと”反映されているといいのだが・・・。


麗子:『あ、いや・・・その〜見逃してくれませんか?』

万里亜:『ダメです。』

麗子:『く、く〜・・・こうなったら・・・』


(ふむ、まあ、ここまでは問題なしね・・・・・・お、ここで選択肢か・・・どれどれ・・・)


『→ 謝り倒す。』

『→ 殺す。』

『→ 脱ぐ。』



「ダメだあああああああああああああああああ!!!」



「え!?な、なにか問題でも!?」

「殺すってなんですか!?百合ゲーさせる気あるんですか!?そして脱ぐってなんですか!?AVじゃないんですよ!?

もはや三択でもなんでもないじゃないですかッ!!」

「あ、す、すみません!開発者一同、ここ最近寝ていなくて・・・!深夜のノリで、つい・・・ドメスティックでエロティックな一面が・・・!」

「アナタ達の深夜のノリは”百合の世界を壊す”しか選択肢無いんですかッ!?そもそも百合ゲー作る気あるんですか!?このままじゃアダルトゲームですよ!?」


「おお〜」「言われてみれば・・・」「これは全年齢対応だったな・・・」「修正しよう。」「そうしよう。」

”カタカタカタカタ・・・”

「・・・・・・。」


開発の人達が頷きながら、パソコンのキーボードを猛烈な勢いで叩き始めた。


「黒井先生!プレイをお願いします!」

「・・・はい・・・」

(嫌な予感しかしない・・・。)



〜数時間後・・・私の悪い予感は当たった。〜



「だから!百合ゲーだって言ってるでしょう!?どうして、戦国武将が学校生活に出てきたんですか!国獲りゲーじゃないですか!!」

「あ、す、すみません!開発者一同、ここ最近寝ていなくて・・・!深夜のノリで、つい・・・歴女を狙ってしまって・・・」


次から次へと出てくる、百合とは程遠いイベントやミニゲームの数々に私は声帯が潰れるかと思うほどツッコんだ。

我が子達の扱いの酷さと言ったらなかった。

ある女の子は戦国武将の娘にされ、ある女の子は選択肢をミスるだけで殺しにかかってくるし

ある女の子は不良というだけで喧嘩(しかも何故かそこは格闘ゲーム)に勝たないと好きになってくれない、という凄まじく酷い設定になっていた。


「それから、この魚釣りゲームとお宝盗みゲームは百合全く関係ないじゃないですかッ!!

カジキマグロを釣って、お宝盗んで攻略できるキャラなんか作った覚えありませんよッ!?」

「おお〜」「言われてみれば・・・」「これは百合ゲーだったな・・・」「修正しよう。」「そうしよう。」

”カタカタカタカタ・・・”

「・・・・・・。」



「あ、す、すみません!開発者一同、ここ最近寝ていなくて・・・!深夜のノリで、つい・・・」


堪えきれず私は叫んだ。


「もういっそ、しっかり寝なさいよッ!アンタ達ーッ!!!」



「あの、黒井先生!」

「なんですかッ!?」


「よかったら!モグリーのゲーム開発室に入社しませんか!?」


藤井さんの誘いに、私は答えた。


「・・・考えときます。」


・・・確かに私は仕事が無くて暇だけど・・・ここは危ない企業な気がしたので、とりあえずそう答えるしか無かった。



百合。

それは一言で言えば、女性と女性の恋愛をさす言葉である。・・・言葉にすれば、それは至極簡単である。

そう、言葉にするのは簡単だが・・・



・・・それを作り出すのはやはり難しい・・・のだろうか・・・?



ちなみに。


『学園百合シミュレーションゲーム・スイート★ライフ』は、女の子達が

”ヘラヘラ笑いながら主人公を罵る”というバグが多くて、クレームが殺到し、わずか3ヶ月で配信が終了してしまったらしい。


・・・あの開発チームが一刻も早く、快適な睡眠をとり、人並の判断が出来るようになるよう、私は遠くから祈るばかりである。


ああ、それにしても・・・あのゲームがコケたせいで、私の印税生活がまた遠のいたわ・・・トホホ。


現在、まだ暇人の私は真剣にモグリーに入社しようか、考え中である。



― とある漫画家の苦悩 〜 黒井麗子の場合 〜 ・・・END ―



あとがき

勘違いされやすいんですけど・・・何度も言いますが、私はどこかに喧嘩を売っているつもりはありません。(苦笑)

○バゲーとグ○ーの違いが、もはや私にはわかりません!(笑)