君を想う夜





「アリオス・・・。」
アンジェリークは、何度目か、同じ青年の名を口にした。
皇帝を倒し、宇宙に平和が訪れた。
それは、彼女にとっても、嬉しい事だった。
・・・だが、どうしても、吹っ切れなかった。

たしかに、「レヴィアス」は、皇帝を名乗った侵略者だ。しかし、アンジェリーク達
と行動を共にしたのは、「アリオス」だ。
少なくとも、アンジェリーク自身は、そう考えていた。
「レヴィアス」と、「アリオス」は、全くの別人。
・・・アンジェリークは、やり切れないような、吹っ切れないような表情で、
溜息と一緒に、涙を一筋だけ、頬に伝わせた。


「・・・レイチェル・・・。」
「ん?何、どうしたの?アンジェ。」
「私は・・・確かに皆さんと一緒に皇帝を倒して・・・宇宙を救う事が出来たわ。でも・・
・私は、一番救いたかったものを、救えたのかしら・・・。」
少しばかり伸びた茶色の髪を、風が靡かせていった。
救いたかったのは・・・レヴィアス。そしてアリオスでもある人を。
「・・・アンジェ・・・気持ちも解るけどさ、まずは、信じなきゃ。」
「信じる・・・?」
「そ。救いたいなら、また命として生れられるように、信じて、祈ろう。」
レイチェルは、悪戯っぽくウィンクをすると、アンジェリークの肩を、ぽんとたたい
た。
「そうね・・・。こんないつまでもメソメソしてたら、女王なんて、務まらないわよ
ね。いくら有能なレイチェルがいても。」
「よく解ってるじゃないのv頑張ってよね、アナタは、この天才少女レイチェルを負
かしたんだからv」
「ええ!」
「頑張ってよね!女王、アンジェリーク・コレット!!」


あれから、数日。
両目の色の違う少年が生まれ、アンジェリークはずっと見守っている。
・・・アリオス、あなたは・・・。
「アンジェリーク!」
「あ、レイチェル。なあに?」
「陛下からの招待状だよ!」
「わあ・・・!!」
・・・あの日、あの人のために流した涙。
また、会える?
あなたを想う夜。
それはきっと、いつまでも続く。
また、会える・・・?
二人が出会うのは、これから、数日後。

「あんたを、探してたんだ・・・。」
               白い翼のメモワールへと続く…