〜 blank 〜
Sei‐lan
……3年間。
そうか、
あれからもう、3年も経ったのか。
それが、正直な感想。
それほどまでに、空虚に感じてしまうのは、
多分、それほど、
あの3年間は、僕にとって消し去ってしまいたいことだったに、違いない。
君のいない、
あの、日々を。
「さようなら、とは言わない」
今思えば、それはきっと、僕が自分に言い聞かせる為に告げた言葉。
決して離したくなかった存在。
失いたくなかった想い。
別れは、いつでも、冷酷でさり気ない。
数ある別れのそのひとつ。
そう言い聞かせ、そしてその別れを受け入れた。
そのつもりだった。
もとは、自分の責任。
本来なら、
もっと早くに、この想いに気付いてさえいれば。
あの時、
あの女王試験の時、
無理やりにでも、君を攫ってしまえば良かった。
悔やんでも仕方ない過去を思うほど、虚しいことは無い。
だから、
それでいいのだと、言い聞かせた、自分自身に。
だけど、
それは、すぐにやってきた。
始めのうちは、それこそ、気が狂うのではないかと思ったほど。
肖像画は描かない、
そう告げたはずの腕が、
気がつけば、君の姿を写している。
美しい風間を見ると、
そこに君が居ない事が、たまらなくなる。
走らせていた筆は、いつのまにか君を描き出している。
正直、自分でも笑いが込み上げた。
思っても見なかったのだ。
こんなにまで、女々しい自分が居るなんて。
それからすぐ、僕は髪型を変えてみた。
何でもいい、
君と会っていた頃の自分を
ただ、消し去りたかった。
ふと、勝気に微笑む笑顔が、胸によぎった。
きっと君は、今のこんな自分をみたら、
ケラケラと笑い飛ばすに違いない。
それが分かったから、
全てを変えてみたくなった。
いつのまにか、
君に笑われてもおかしくなくなっていた、自分を。
機分転換に、髪型を変えるなんて、まるで女の子みたいだと、
きっと君は、やはり笑うのだろうと、思いながら。
それから、一年ほど、
髪型、服装、
あの頃とはすでにかなり変わっていた。
そして僕は、
気がつけば、君の姿を描く事はほとんど無くなっていた。
それと同時に、
僕の絵からは、
何か大事な色がひとつ、抜け落ちた気はしたけれど、
それもさほど、気にはならなかった。
君が居ない日々。
君が居ないことが、当たり前な日々。
退屈な日々が過ぎて行くのは、妙に早い。
まるで、それを退屈だと、感じる間もないほどに。
そして、それからさらに年月は流れ、
ある日、
異様なまでにさり気なく、
その時はやってきた。
「セイラン様、ほら見てください、星があんなに近くに見えますよ」
星見の塔と呼ばれる場所。
彼女ははしゃぎまわって宇宙を指差していた。
ちっとも変わらない。
まぁ、彼女にとっては、さほどの時は流れていないのだから、当然と言えば当然ではあるが。
そして、なんとなく、感じる。
ああそうか、
彼女は、女王なのだった、と。
それを忘れさせるほど、
彼女は変わっていない。
「セイラン様、わたしね、最初はちょっとビックリしちゃったんですよ、だって、大分印象が変わってて…」
ある日、彼女はふいに笑いながらそう言ってきた。
何のためらいも無く、ケラケラと言う様が、なんとも彼女らしい。
そして、彼女は笑った。
「でも、こうしてお話してみて、ちょっと安心しちゃった。 やっぱり、セイラン様は、セイラン様だなぁって」
「………なんだい、それ…」
にこにこと言う彼女に、僕は思わず吹き出しながら言った。
「…ちょっと、心配だったんです。 だって、そっちじゃ3年間も経ってたって言うし…」
彼女は少しはにかむ。
「でもね、やっぱり、セイラン様はセイラン様だったから。
…変わったとこ、変わってないとこ…、全部が全部、セイラン様らしいなぁって…。」
照れくさそうに、彼女は俯いた。
「結局、そうなんですよね。 その人らしく、変わって、その人らしく変わってなくて、
なんか、そう思ったら、安心しちゃった。」
そこまで行って、彼女はふと寂しげな顔を見せた。
「あたしね、ずっと、…なんだか置いて行かれちゃったような、そんな気がしてたから…」
そう言った、その瞳は、決して、一宇宙の女王の顔ではなく、
初めて会った、あの試験での、
ただの、一人の、少女の顔だった。
なんとも、不思議な感覚。
空虚でしかない、あの時は、やはり僕を変えていたらしい。
思えば、これほどに、僕が退屈と言うものに慣れてしまったことは、
ある意味大きな変化なのかもしれない。
その人らしく変わり、その人らしく変わらない。
その言葉は、
僕の中で無意味でしかなかった時間に、初めて意味を持たせたものだった。
そして、彼女のその寂しげな笑みを見て、
初めて気がついた。
流れていた時は違えど、
きっと、彼女もまた、同じ思いを抱えていたということに。
きっとまた、この夢に時間には、終わりが来るのだろう。
でも、
女王試験から数えて、
2度目の、再開と言う名の奇跡。
きっと、僕らの運命の女神は、相当な気まぐれに違いない。
だとしたら、
きっと、
気まぐれな再開は、また、いつの日か訪れるのだろう。
そんなことを思いながら、ふと君の肩に手を乗せ、
この夢の時間が、少しでも長く続くよう、
誰にとも知れず、僕は祈っていた。
ふと浮かんで、勢いだけで書き上げてしまったものです…。
〜Blank〜は、前のを書いたときから、シリーズにしたいなぁ、とか思っていたのですが、
結構間が空いて、何やら唐突に浮かんだだけのものではあります。
ふいに、セイランが髪型を変えた理由ってのを、こじつけネタが出来あがってしまいまして(汗)
妙に書きたくなって、一時間もかからずに書き上げてしまいました。
…なんか、そんな突発的なものなんd、えUPしようかどうしようか、結構ためらったのですが…、
ま、折角書いたし、とか思って(爆) 勢いだけでUPしてしまったわけです(笑)
本気で拙いですが、どうぞ大目に見てくださると嬉しいです…(逃)←コラ