大好きな、貴方と。







「待てっ!!メイっ!」
キールが止めるのも聞かず、メイは迷うことなく走っていった。
「・・・逃亡、だな。全く、後でひーひー言うのは自分だってのに・・・。」
キールは髪をかきあげ、ため息まじりに呟いた。

一方、本人は。
「なーんでこんないい天気の日に、部屋に篭ってなきゃいけないのよっ
冗談じゃないっ!!アイシュのとこにでも行こっかな〜。」
などと呟きながら、足はしっかりとアイシュの元へと向かっている。
・・・無意識に、アイシュに会いたがってる自分がいることに、メイは気付いていな
かった。
外は眩しいともいえない丁度いいたいような光が、さんさんと降り注いでいる。
「やっほー、アイシュ、いるー?」
「あ〜メイじゃないですか〜。今日は課題があるとか言ってたんじゃないですか〜
?」
「そんなんサボりよさぼり!!ね、それより何か食べるものない?嫌々やってたら、
お腹へっちゃった。」
椅子に腰掛けると、メイはごく当たり前のように言い放った。
「あ〜、そうなんですか〜。じゃあ、パイを焼いたんですよ〜。たべますか〜?」
「あ、食べる食べる!!美味しーんだもん、アイシュの焼くパイ!!」
二つ返事で返事をすると、少しふてくされていたメイの顔が、ぱっと笑顔に変わる。
「じゃあ、お茶も淹れましょうか〜。待ってて下さいね〜。」
「うんっ。早くしてねっ!!」
小さな子供のように、メイは楽しみ、という感情を、丸っきり表に出していた。
アイシュは、こんなメイの顔を見るのが、とても、嬉しく、楽しみである。

「あーっもう!!やめたやめたっ!!つまんなーいっ。勉強なんてもーまっぴらっ
!」
向かっていた紙を放り出すと、芝生の上にメイは寝転がる。
「つまんないな・・・。」
ぽつりと、呟く。
あれから、放り出した課題に追われ、三日間、アイシュにも会っていない。
無意識、というのは、逆に言えば素直なもので。
心は、素直にアイシュに会いたい、と願っている。
「会いたいな・・・。」
初めは、のんびりとしてて、少し苦手なタイプだった。
だが、いつの間にか、作るお菓子、そして本人の事が、好きになっていった。
けれど、会いたい時ほど、会えないもの。
「・・・アイシュ・・・。」
ふと、名前を呼んでみる。
「何ですか〜?メイ。」
「きゃっ!?ああああアイシュっ!?」
びっくりして、つい大きな声を出してしまう。
「何ですか〜?今、呼んだじゃないですか〜。」
「えっと・・・あ、あのねっ・・・」
「あ、そういえば、メイの好きって言っていたアップルパイ、また焼きました
よ〜。」
「えっ?ホント!?」
「はい〜。」
驚きも、動揺も忘れて、がばっとメイは起き上がる。
「ねねっ、今から食べに行ってもいい!?」
「ええ〜。構いませんよ〜。」
「うわあっありがとっ!!パイ大好きっ!!アップルパイは特にっ嬉しいっ。」
「嬉しいですね〜。」
メイは、気付かれないように、そっと呟いた。
「作った人も・・・ね・・・?」
「何ですか〜?メイ?」
「ううんっ!!早く食べたいっいこいこっ!!」
「はい〜。」
大好きな、パイと。
大好きな、お茶と。
大好きな、時間。
大好きな、この時を。
大好きな、貴方と。
一緒に、過ごそう。


       大好きな、貴方と。














橘司様に、キリ番のお礼、と頂いた創作です。
メイが、とっても可愛いです〜。
アイシュもなんだからしくて…(笑)
頂いた瞬間、UPさせていただこうと心に決めてしまいました(笑)

橘様。 どうもありがとうございました♪