ありがとう…が、いいたくて
汽笛の音を背に、二つの人影は船の甲板で腰を下ろしていた。
端から見たら、兄妹にでも見えるだろうか、
金の髪の少年と、銀の髪の少女。
仲の良い、始めての旅行のような、そんな風体。
でも、
二人の内に流れるものは、そんなに生易しいものではなかった。
でも、
それでも。
「…わたしは、…『しあわせ』だよ…」
どこへともなく…、
いや、…海へ向って、アクアはぽつりと呟いた。
その呟きに、うたた寝していたユニシスは、ふと目を覚ます。
当たり前に隣にいるその顔に、アクアは静かに笑みを送る。
事件があり、葛藤があり、飛び出したばかりのその島は、
まだ間近に見えていた。
ふと、アクアはユニシスに目を向けると、
やおらぽんと手を叩く。
「…そうだ、…わたし…、ユニに、いうことが…あったんだ」
「え? 何だよ今更…」
真っ直ぐに見据えられ、ユニシスは思わず赤面して戸惑う。
そんな姿にアクアは面白そうに笑みを含みつつ、
ふっと、…かつてない程に愛らしい笑みで、
「ありがとう」
告げられた本人は、一瞬凍りついたようになっていた。
そして、
「………は…??」
やっとのことで搾り出したその反応に、アクアはやれやれとため息をつく。
そしてそのまま、何故か嬉しそうに、
「…わたしに、…ほしをくれて…、…ありがとう、といったの」
にっこりと、そう言った。
その言葉に、ユニシスはますます目を丸くした。
「な、何言ってるんだよ、…お前に…その…星の印を付けたりしなきゃ、
お前はあんな目には会わなかったって、さっきも言っただろう」
怒ったように言うユニシスに、アクアはそれでも笑顔で、
「ううん…、…そんなことない」
静かに、そう言った。
「…ユニシスが…、ほしをくれなかったら…、
わたしはきっと…『しあわせ』には…、なれなかったよ。 …きっと、ずっと」
何も言えなくなってしまったユニシスを見つめ、アクアは呟いた。
「…だから…、…ありがとうが、いいたかったの…」
呟いた後、アクアはふと、今だ煌くその印を見つめた。
この印がなければ、
きっとあり得なかった日々。
出会えなかった人。
居られなかった場所。
そこは確かに、『しあわせ』のあった場所。
『しあわせ』を見つけられた場所。
アクアは、静かに海を見つめていた。
もしかしたら、
もしもあそこで、ユニシスが自分を見つけなかったら、
その手に星を描かなかったら、
まだ、まだ、ずっと、
この海の、青のどこかで、
自分は今だ、ただ、漂っていたのかも知れない。
そして、
もしもそうなら………、
『終わり』は、来てしまった後だったかもしれない。
アクアは小さく首を振った。
「…わたし…、『あなた』は、…見つけられなかったけれど、
『しあわせ』は…見つけたよ…」
海に向って、呟いた。
「……だから、…きっとまだ…、このせかいは、…あるのよね…」
意味の不明な呟きに顔をしかめつつ、
ユニシスはアクアと一緒に、海を見た。
ぬける様に、青い、海。
ユニシスは、ふと、微笑んでいた。
「関係ねぇよ、そんなのさ」
「……え…?」
唐突に大きな声で言われて、アクアはふとユニシスを見る。
「お前は、お前だから、…だから、幸せを見つけられたんだろ、
星の娘候補になれたからって、何もしなけりゃ何も出来ないままだ、
俺が何しようとしまいと、…お前なら…、きっと幸せになんてすぐなれたさ」
そんなユニシスの言葉に、アクアはふっと微笑む。
「……うん。 そうだね、…そうかも…しれないね」
小さく、頷いた。
そして、ふっと立ち上がり、
静かに、ユニシスの顔に口を寄せる。
「…でも。 …やっぱり…ユニには、
…たくさん、たくさんの…『ありがとう』が…ある…」
頬にやわらかな感触を憶え、ユニシスは顔を真っ赤にしていた。
「……いいことばね、…ありがとう…って」
「………ん…そうだな」
「またいつか、あそこにかえるときまでに…、いくつ、『ありがとう』が…あるかな?」
いつのまにか、小さく、小さくなってしまったその島を、ユニシスは見つめた。
「…たくさん、たくさんの、ありがとうを、…もって、かえれたらいいね…」
横で呟くアクアの言葉に、ユニシスは深く頷く。
「……ありがとう、アクア」
呟いたその言葉に、アクアは無言で微笑むと、静かに肩をもたれかけた。
そしてほどなく、
小さな島国は、形も見えなくなり、
二人は静かに向かい、微笑み会う。
旅はまだ、始まったばかりだった。
初書きのファンタ2です。 いきなりネタバレ話で読者狭めてどうしようと…?(自滅)
とりあえず、読んでいただけたということは、アクアでプレイ済みの方ということで。
拙い突発文…、読んで下さってありがとうございます。
……ホンット。
ヤバイくらいに惚れてます、アクアに(笑)
アクアでプレイしなかったら、きっとファンタ2は封印されてしまっていたはずというくらいですので。
そして、アクアでプレイしていて一番気に入ったのが、このアク×ユニです。
なんだか、外見可愛いのに、一本筋の通った二人組で、お気に入りですー。
一応、告白シーンの数十分後くらいの設定ですこの話。
キャラED向えつつも、ある程度記憶の戻っているアクアが無償に書きたくて、勢いで書いてました(笑)
…実際のプレイでも一応可能ですしね。
まぁそんなこんなで、
今後、ちらほらと、増えて行くかもしれません、アクア創作(←ファンタ2創作じゃないのか?)