―私ハ、罪ヲ犯スダロウ―
「頼久さん!」
今日もまた、いつものように呼ばれる、甲高い晴れやかな声。
その神々しいまでに残酷な響きに、頼久は少しばかり目を覆う。
そう、眩し過ぎるのだ。 彼女は。
いつの頃からか…。
その輝きが、
他の何処でもなく、他の誰でもなく。
己の方のみを、向いていれば良いと、思い始めたのは。
だが、
その輝きに気付く者が、自分だけであるはずもなかった。
そうだ。
彼女は眩し過ぎる。
だから、誰もが必然の如く、彼女に惹かれ。
そして、それでも尚。
彼女は微笑むのだ。
あまりにも、眩しい、
あまりにも、残酷なその瞳で。
そこにあるのは、主であって、主とは既に思えぬ、一人の少女。
神々しいほどに、愛でし女性。
憎ましいほどに、誰からも愛されている存在。
あまりにも、その存在は、
眩しい。
だから、時に思ってしまうのだ。
その輝きを、その煌きを無くしてしまえば、
彼女を、この手に、閉じ込めておけるのではないか、と。
そう、いっそのこと、
彼女を―。
今日、突然二人きりで出かけようと申し出たのは、何故だったのか。
彼女は、気付かないのだろうか。
いつのまにか、こんなにも荒れている、この想いに。
壊れかけた理性のなか、微塵に残ったそれにすがり、今あるこの身に。
「どうしたんですか?」
無邪気に、彼女は微笑みながら近づいて来る。
迫ってくるその姿の中、
目に入ったのものは、
色めき立つ、鮮やかな唇。
輝かしいその笑みの。
天女のようなその存在の。
羽衣を、純白の羽を、
全てもぎ取ってしまえば。
彼女は、もう、羽ばたけない。
この、場所から。
誰隔てなく向けられる笑みを見続けるよりも、いっそ―。
北山と呼ばれるその地で、
ドサッという静かな音と共に、二つの人影が、もう片方の影に組み敷かれゆっくりと倒れ行く。
咄嗟に重なった唇からは、声すら出なかった。
組み敷かれたまま、開放された口から彼女思わず大きく呼吸を繰り返す。
紅潮した顔。
激しい鼓動が、すぐ近くで鳴り響いている。
そうだ、
すべて、もぎとってしまえばいい。
彼女のその、輝き全て。
飛べなくなった天女は、
闇に落ちた彼女は、
もう、どこへも行けない。
この腕の中から、
どこへも―。
「頼久さ……、どうして…」
息を切らせ、彼女は呆然としながら呟く。
そして、頼久はふと気が付いた。
どうして。
その問いをしながら、
彼女は何も抵抗を示していなかった。
そう、例えば今。
一瞬ひるんだ拍子に、
この腕から逃れようと思えば、容易く出たはず。
だが、彼女は…。
真っ直ぐに見据える、
眩し過ぎる瞳。
「…あ、…その。 だって、ホラ、いきなりだったし。 その、頼久さんだから倍驚いたっていうか……」
何故か、彼女は頬を赤らめた。
「嫌だったわけじゃ、ないんですよ」
にっこりと、微笑む。
やはり、眩し過ぎる笑みで。
自らの胸のうちで失うはずだった輝きを、
今も尚、鮮やかに発している少女。
晴れやかにこちらを見ると、ふっと再びこちらに身を委ねてくる。
眩し過ぎる、その姿。
奪う事など、出来るはずも無い、煌き。
「本当は、今日、言いたい事があったんです」
微笑みながら囁かれた、その言葉。
最も、欲していたもの。
何故、気付かなかったのか。
何故、気付けなかったのか。
誰隔てなく笑みを交わす彼女は、いつも。
自分のすぐ側に居た。
回りの者をたわむれつつ、
気が付けば、
彼女はいつも、こちらを伺って…。
気付けなかったのは、やはり、
彼女があまりにも眩しかったから。
その輝きに目を奪われ、いつしか影のように闇に染まっていた、この身。
償い方など。 知らない。
どうすれば、この罪は許される?
どうすれば、この罪は裁かれるのか。
思考を巡らせていると、彼女は再び眩い笑みを向けてくる。
その輝きこそが、まるで与えられた罰のようで、
頼久は必死で瞳を反らさず、その笑みを見据えた。
何事もなかったかのように微笑む姿。
やはりその瞳は、
眩しくて、そして、残酷なものだった。
…暗いです、しかも、ハッピーなんだか訳分からないです、ええ、書いた本人にさえ意味不明です(自爆)←待て
なんだか、絶賛八股中な神子ちゃんに、ぶち切れる頼久…といった感じの、思いっきりダークテイストな話が書きたくなったはずだったのですが…。
どうにも、後味の悪さに書いてる本人絶えられなくなりまして(汗)←…当初は頼久があかねを押し倒して終わり、のはずでした。
でも、いまさらハッピーにしても何やらおかしくなって、紆余曲折のまま、こんな妙ちくりんなシロモノが出来あがっていました。
つまり、ハッピーエンド好きが、ダーク目指しちゃぁいけない、ということですかね!(爆)
ホント、拙くてすみませんでした(汗) ここまで読んでくださってありがとうございます…。
とりあえず、次は素直に、今書いてるほのぼのなシリーズでも書こうかなぁ,と思ってます(苦笑)