美朱の人間味のなさ。


美朱に関しては、貞操感以外にも、すごく疑問がありました。
それは、人間味のなさです。

旅の途中で流行り病にかかって、
美朱が失明していまう、というエピソードがありました。

本当にびっくりして、真剣に、美朱どうなっちゃうんだろう、と思った覚えがあります。
失明したその時は、その病には治療法はないとされてましたし。

なのに、まるでショックを受けた描写がないのです。
食べ物を臭いで察知して、物にがすがすぶつかりながら歩く。
美朱の失明時の描写はそんな感じで、臭いとか、音で周りを判断してる美朱を描くだけ。
目が見えなくなった当人の心のショックには、本当にビックリするほどに触れられてないんです。

ある中途失明者の文章を読んだ事があるのですが、
2,3ヶ月間を茫然自失して過ごした後、失明者のサークルのような場所に出向いたら、
ここへ来るまで立ち直るのにも、2,3年かかる人が多いのに、あなたは強い人だ、と
そう言われたという記載は、今でも心に残っています。

目が見えていた人が、ある日突然見えなくなる。
これは、本当にこれだけで、映画一本、小説一本、作れてしまえる程の題材なんです。
軽々しく扱っていた様には、怒りすら感じたことを覚えています。

そして、
美朱というキャラクターに、言いようの無い薄気味悪さを感じたのも、この時でした。

失明したその時、
もう、治す術はないって、宣言されてるんですよ。
一生目が見えないかもしれない。 それがどれほどのことか。


なんというか、
この子は、人間としての心がないのか、と。


まるで、
あたしヒロインだし、そのうち治るに決まってるよ。
そう知っているかのように感じました。


人間ならば、当たり前にあるであろう葛藤。
それが欠如した描写は、
なんとはなしに、現在のケータイ小説に通じるものを感じたりもします。





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