トピックス vol.09 : 理想の夫婦
自分にとって、すっごく大切なもの
愛情・友情・経験・技術・知識・・・
そのひとつに『出会い』があると思う。
わたしにとって看護師として病棟で働いた経験は、すごく貴重な経験でした。
病棟で働く前までは、救急部で3年間の経験を積みました。
救急部と病棟の仕事は、同じ看護師の仕事とは思えないくらい、
患者さんとの関係が濃いものでした。
もちろん目には見えないけど、
不思議な人と人とのつながり。
意識のない患者さんと、こころが通じる瞬間。
命が消えていく瞬間。
言葉ではうまく伝えられないけれど、
『人ってひとりじゃないなぁ』と、その時に感じました。
そんな経験の中で、今でも鮮明に思い出せる夫婦がいます。
わたしにとって、理想の夫婦。
Nさん夫婦
わたしはNさんの担当看護師!
担当看護師っていうのは、
Nさんの苦痛や精神的なつらさを受け止めて、
それを解決するにはどうしたらいいのか、
プランを立てる担当のこと。
ここで少しNさんの事をご紹介すると、
Nさんは40代前半の男性。
小学生と中学生の、サッカー好きの男の子のパパ。
Nさんに「胆のうのがん」が発見されたときはもうすでに末期でした。
担当医の先生もいろいろ治療法を考えて、
本人とも相談したけど、もう何もできない状態
性格は、あんまり人と打ち解けるタイプでもなく、
病室では、会話に困ってしまうくらい寡黙(かもく)な人。
はじめは、病室に行くのも少し気が引けてしまうくらい。
「あ〜また話ができなくて、気まずいんだろうな。」と感じていました。
今から思えば、ナースがそんな風に感じてたら、
Nさんも何となく気付いて、余計に何も話してくれないですよね。
そのときはそんなにも気が付けなかった・・・。
あまり喋らないNさんとは逆に、奥さんはとっても社交的!
いつも明るく毅然(きぜん)と振舞って、しっかりママという感じ。
何より、Nさんへの深い愛情を持っている人!
がんの告知は、だいたいが家族に先に伝えられます。
その後、本人も一緒に先生から伝えられる。
でも、この奥さんは違った。
なんと、がんであること、もう末期であること。
こんなに気の重いことを自分から夫のNさんに伝えたいというのだ。
それを聞いたときは、わたしも、他の看護師も、先生もそりゃびっくりした!
「自分から伝えたい、この人にはわたしから話したい。」
がんを告知されたときにはもう、奥さんの気持ちは固まっていたらしい。
Nさんは病室を個室に移動して、
その日の夜、奥さんが泊まることになった。
夜、個室の病室で、二人っきり。
その日、わたしは夜勤で朝まで病棟にいることになっていた。
ナースステーションで仕事をしていて、チラッと腕時計を見た。
23時05分・・・
Nさんの奥さんは、旦那さんの命がもう残り少ないことを自分の口から話したのだろうか・・・
わたしはNさん夫婦が心配でたまらなかった。
自分の愛する人に、残された時間が少ないことを告げる。
Nさん本人も、なんとなく気がついているのかもしれない・・・
でも、何かの間違いであって欲しいと思っているに決まってる。
冷静に『そうか。』なんて受け止められるような事ではない。
次の日の朝、夜勤だったわたしは、すぐにNさんの病室へ!
いろいろな思いが込み上げてきて、なかなかドアをノックできなかった。
緊張しながら、個室のドアをノック。
コンコン
すると、以外にも明るい
「はい、どうぞ。」という声に後押しされて個室へ入った。
(アッ!)
二人とも目を真っ赤に腫れさせていた。
一晩中泣いたのかもしれない
でも、その二人の印象は、
「なんて、すごくいい表情なんだろう!」
ふたりとも、本当に分かり合って信頼しあっているような、
なんともいえない温かい笑顔!
このとき初めて、わたしの心配が、ただのおせっかいだったと実感した。
ふたりには強い信頼関係があるんだ!
奥さんはそれから最後の時まで、Nさんの前では一度も涙を見せなかった。
最後の瞬間まで、ふたりの時間を大切にするように、
明るく楽しそうに。
でも、
「少しでも一緒にいたい・・・」
「この人が生きていてくれればそれでいい・・・」
唯一、奥さんがわたしの前で涙を見せたことがあった。
そのときの、奥さんの口から重くかみ締められた言葉。
「自分から告知をするのも、すごく辛かったです・・・」と。
あぁ・・・本当に愛し合っている。こんな夫婦になりたいなと、心の底から感じたのを
今でもはっきり覚えています。
人の時間は限られている。
そんなこと、みんな知っている。
『知っている』けど、『分かっていない』のかも。
忘れがちなこのことを、わたしの胸に強く焼きつけてくれたNさん夫婦。
その中でも、『好きな人』、『大切な人』といる時間は
もっと限られている。
それからわたしは、
(おかしな言い方ですが…)
もしわたしが今、死んだとしても、
『この人といて良かった!』って相手に思ってもらえるように、
一日一日を大事に大切にしようと思っています。
もちろん、いつもというわけにはいかないけれど、
忘れてしまうこともあるけれど、
Nさん夫婦から学ばせてもらったこと。
時間の大切さ。
大切な人と一緒にいる時間の大切さ。
わたしは、あの涙を忘れることはありません。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
ベビーマッサージで家族の絆を深めたい。
ベビーマッサージアドバイザー 岡 千夏 |