型取りトラブルQ&A
当コーナーは・本書記載のネタで回答を作成しておりますので、さきに読んどいてください。

 2003/06/28追加 ベビーパウダー


 Q.小さいパーツ(A・B)にキャストが流れにくくて困ってます、太いランナーを切ってるのですが……。

 
A.パーツの配置がまずいようです。( 図 I )



 「AとBのパーツに湯が流れない事がよくある」とのことです。
 位置関係はおおむね図 I のとうりだという事なので、この場合は(B)のパーツがボトルネックになっているのが原因と見ました。
 キャストはそれ自体の粘り気によって、常圧のままではかなり意外な流れ方をします。
 特に大小のパーツを同回路の中に配置したり、型自体の高さの低い(もしくは横に長い)型の場合はこの条件に合いやすくなります。
 ここで表面張力の説明をすると長くなるのではしょりますが、これを知る、知らないが成果に及ぼす影響は結構大きいので、高校の教科書程度の知識は感覚的に理解できるようにしておくことをお勧めします。
 とりあえず、気をつけないといけないのは、キャストが細い道を通るときにはかなりのパワーが必要だということです。
 プロはこの問題を解決するために真空機(内部の減圧で、大気圧がキャストを型に押し込む)や遠心機(回転の遠心力でキャストの見かけの重量を増やしてる)を使うのですが、まさか我々がこんな機械を買うわけにはいかないので、経験と工夫でカバーしていくこととしましょう。




 とりあえずは、図IIIの様に配置しなおす事を前提に説明して行くこととします。


其の壱 回路設計段階にて

 A.配置の基本 図 II参照
 基本的に、メインの湯口と底の横枝を2辺にとった3角形、この中は『キャスト流れ易いゾーン』となりますので、ここに小・細・長パーツを配置するようにします。
 1の範囲が1番流しやすく、以下、の順に流れにくくなっていきます。
 3の範囲の外にあるパーツはトラブるとちょっと大変な事になる場合があるのでなるべく配置しないようにしときましょう。

 

 B.上下の順番
 さらに、1のゾーン内でも下側ほど流れ易いので、細物、小物はなるべく下のほうに配置します。
 上方に配置すると、もともと流れにくい上に作業時のフォローも大変です。



 C.置き方の妙 上記 図 III 参照
 同じ座標でもパーツの置き方でずいぶん流れ方が変わります。
 配置の際にはパーツを次のパーツまでのパイプと考えて、容積に見合った流量を確保できるように配置します。
 図 II のCの様に、1パーツごとに本管を繋ぐことによって小パーツにも十分な流量を確保するのが簡単な方法です、
 この場合、本管に直接『D』の形のようなパーツを繋げているのと同じ状態にして、湯を流れ易くした訳です。
 また、図のようなクランク型の湯口を切り、枝管の入り口をパーツ最下部(この場合は指先)より低い位置にすると、
パーツ部に湯が満ちてくるまで追加の湯が流れ込まず、枝管から入った湯が本来の湯口(又は、下部のパーツの空気抜き穴)を塞いでしまうのを避けられるのでこの形状のときは特に注意するようにしてください。
 あと、原型を埋める向きも・注型時に正面観、側面観共に出来るだけタテ(垂直)になるように心がけましょう。



 D.空気抜きのワナ 図 I のBからAにかけて
 下側のパーツの空気抜き穴を上側のパーツの湯口に使っている場合、上のパーツにキャストが満ちた後に下のパーツの残っていたエアが抜け、上のパーツに残ったりする不都合というのはよく出ます。
 単純な形のもの以外は1本ずつ湯口を切っていくのが賢明でしょう。
 思い切って上記、図 IVの様に並べ方を変えてみるのも有効な方法です。そのままでも、図 IIIで説明したクランクパイプ法で結構かわせます。
 図 Iの型でも、Bのエア抜きをAに繋げずに上まで直通に切り、Aの湯口は体パーツの左太股から取っていたら、すんなり流れていたでしょう。


 ちなみに、遠心注型は多分こんな↓感じの型で流してます(都合上、若干ぼやかした表現になっとります)。
 写真に書き忘れてますが気泡は中心部に向けて集まって来よるんですな。
 あくまでもイメージね、ほんまはぜんぜんちゃうから。

 型のサイズはシリコンの限界上(でかいほど遠心力で歪む)、大体が20〜40センチの円盤、機械の構造上あまりデカイ原型(厚さでは7センチを目処に)は機械にはいりません。
 流し方は、回しながら流す方法と流してから回す方法があり、原型の大きさや形、注型材の性質で使い分けます。

 う・ん・ち・く
 遠心機の中には決まった大きさの型を使わないと動かない物がありまして、その機械だと、小さな製品を作るときは、1枚の型内に入るだけの数のコピー原型を作り、1ショットで数セット出来るようにすれば、ゴム型の分かなり安く、早く上げれたりします。
 要は1枚の型を効率良くまんべんなく使えるようにすると良い
…事もある、と。


其の弐 流し方でフォロー


 1.エア抜き動作
 揺する、叩く、傾ける等、様々な方法があります、が、実は抜いてるつもりがかえって気泡の原因になることもかなりあったりします。
 大き目のパーツに半分くらい湯が入ってるときに叩いたりすると、丁度シェイクするような感じになる場合が結構あるので、考えなしに無闇やたらにやるのはどうかと、まあ、流し込むだけで放っておける型が一番理想なんですが、いつもいつも上手くいくわけでもないので、揺するタイミングに湯がどこまで流れているか、勘がえ(誤字に非ず)ながらやってみましょう。

 2.斜め流し
 その名のとうり、型を傾けて流し込む方法。
 気泡が抜けたところで向きを戻したり、変えたりで気泡がひっからない様に流す。
 出来た気泡を抜くのではなくて、気泡を作らないように流す事がポイント。
 斜めにするための台はビニール袋に油粘土を詰めたものを使うと座りがよくて良く、高さ調整も自由にできたりするので楽です、粘土は身近にあるしね。
 図VのようなのV字型のパーツなんかは、片方からあふれた湯がもう片方の出口をふさいじゃったりしてたりするので、もう作っちゃってたらとりあえず斜め流ししてみてください。



 3.強制脱泡
 ポンプ法(注射器法)>>>湯口の本管を太めの丸棒(5ミリ径以上、鉛筆やマジックが適当)で、はじめに作っておいて、1回前に流した際のランナー部を押し棒にして、湯を押し込む。
 注意点は、キャストが少しでも固まり出してから押すと、液漏れや、硬化後の事後変形の原因になるので気をつける事。
 ポイントは注型時に巻き込んだ気泡がある程度上がって来るまで待ってから押し込むということ。
 この方法だと、長もの(アンテナ、剣)や、薄もの(羽根、マント)にも安定した成型が行なえます。

 4.オーバーフロータンクの設置   図III・IV・Vの黄色の部分及び下図
 この方法は、簡単に行なえ、かつ、効果も高いのですが、余分に材料(お金)がかかります。
 でも、個人的には、必ず行いたい一番のお勧めなんです。
 方法としては『型を作るときに、天面に2センチほどの余裕を空けておき、空気抜きの開口部をえぐって液溜めをつくっておく』だけ、です。
 あとはふつうに注型を行なうだけで、空気抜き周辺に残りがちな残留気泡が激減します。
 しかけは簡単なもので『湯がタンクにあふれてくる分、その下のパーツの空気穴周辺の気泡を一緒に巻き込んで出てくるだけの事です。
 +αとして、湯がプールの底に顔を出した時、一旦気泡抜きをして、出口周辺に泡を集めてから、湯を足すか、ポンプ法を使って一気に押し出すと効果倍増です。
 図IVで説明すると、頭と両腕のタンクに湯(もしくは泡)が出てきた時点で一旦揺すり、エアを上部に集めてから注ぎなおす。
 体と足の時も同様にすれば、湯の泡まじりの部分を、きれいに取り除けるという寸法です。
 もしも、手流しで透明キャストを流すようことがあれぱこのタンクを併用することによって、かなり残留気泡を減らせます。

※なお、このプール法を使っていて、『大物のとき、ヒケて来たのでどうしようかと思ったが、プールの余剰分で補充できたので助かった』とか、『隙間から湯が漏れてきたが、プールに残ってた湯のおかげで補充が間に合った』、『突然モテモテになった(嘘)』などの思わぬ二次的な効果も耳に入ってきております。

 



暫定公開
 簡単に気泡を減らし、湯の周りがよくなる驚きの裏技

 型抜きの際、エア抜きを切っても切っても気泡が抜けてくれないツンツンの先っちょやリベット状のパーツはありませんか?
 この技は、お手軽・安価にこの問題を解決する魔法のような裏技です。

 さて、その方法とは・・・・・・

 問題のおきる部分にベビーパウダーを薄くまぶすだけなんですな。

       かんたんでしょー、こんなんできほうやゆびさきのかけるのがなくなるなんておもえないしょー

  でも、マヂ(本気) なんですわ

 もーコロっと劇的に変わります、それはそう!まさに
  今までの苦労と!
    抜き失敗のゴミの山が
       腹立たしくなるほどに!

   ほどに!ほどにぃぃぃ!


 ・・・はぁはぁ、やっと言えた、封印期間の長かったこと長かったこと ←自発的公開のできない事情があったんだよぉ

 とりあえずはかねてより当ページを参考にされている場合はきれいな成型品を作れていると仮定して(オイ)、既存の成型条件出ている型に使ったところで
『そこまで?』というような結果しか出ない場合もあるでしょうが…
 次に型を起こした場合、テストからベビーパウダーをまぶして条件出しをした型にパウダー無しで流してみればその違いは一目瞭然、つーか
むしろベビーパウダーのあまりの効果に打ちひしがれるかも(笑)、修行無しでイキナリ悟空にかめはめ波打たれた亀仙人の心境?←古〜(笑)


 簡単なだけに押さえるところは押さえないと100%の効果を出しきれません、とりあえずは以下の4点は守っとけ!みたいな。


 1つ 基本的には激薄塗り、付属(じゃないのね、最近は)のポンポンか耳掻きのポンポンで付いているんだかいないんだか?くらいで効果は出ます。
     ポンポンのサイズが型に合わない場合、手芸店で付属のポンポン見せて近い素材を買ってきて自作すると解決。
     (ポンポン(パフ)は、乳児向けコーナーにある場合が多いようで…探すより聞いたほうが恥ずかしくなかったです(^^ゞ)
 1つ 出来上がりが凸になる部分(型で凹んでいる部分、たとえば鼻の頭とか)に粉が溜まって残らない様に、
     溜まっている部分には湯が染み込みきらずに先が欠けます。
 1つ 離型剤は塗り過ぎないこと、フッ素系以外の離型剤はこの場合は少し不向きです。
     というのも、離型剤の滴と粉が混ざって泥状になり、樹脂中に滞留し、削ってきたら粉の塊が出て来たり、
     時間が経ってから泥の中の離型剤が染み出して来たりする場合があるからです。
     この場合はトラブル回避として、シリコン系の離型剤は塗布後乾燥させてから粉をまぶすようにします、もちろんフッ素形を使うほうが良いですがね。
 1つ 長期保存、もしくは本来の用途(笑)にも使っていた粉の場合、わずかに湿気を吸っている場合があります。
     もし、粉をまぶした以後、製品に発泡が出てきたら、アルミホイルなどの耐熱性のあるモノの上に粉を乗せ、トースターの余熱で2〜3分温めて湿気を飛ばすと良いでしょう。

 ちなみにアルテコの粉でも代用できます(グラム単価数百倍ですが)

 Q1.アルテコ以外に身の回りで使えるものってありますか? A1.粉末脱水剤で75%くらいの効果がありますが、湿気ちゃったら面倒なのでベビーパウダー使った方が楽ですよ。
 Q2.何で今まで教えてくれなかったのよ(怒) A2.ごめんなさい、マル秘ということで教えてもらったんです、模型板@2chで情報が出回り出したので解禁しました。
 Q3.これで業者抜きしなくてもきれいな製品ができますね、ありがとう! A3.(笑)そりゃよかったです、でも、かといって自分でXXX個抜くんですか(笑)、大量の場合は生産は業者サンに出して原型や見本に時間使ってください(^ ^ヾ
 Q4.出来上がりに悪影響というか、普通に抜くときとの違いって出ます? A4.なんもありません、あえて言うならクリアキャストに使うと濁るくらいです実はこれを利用すれば均質半透明の成型が…


 とりあえず駆け足でこれくらい、反響次第では早々に増補改定の予定(WHF神戸の準備次第でもありますが)
 どれくらいが適量なのかの目安はこちらの動画でご確認ください。





 Q&Aのおまけ



面相筆をこんな感じにしちゃった場合、
(1)穂先をシャンプーかリンスでちょっと湿らせる。
(2)ポットかヤカンで湯を沸かす。
(3)沸いたら穂先を蒸気に1分ほど当てて待つ。
以上でまっすぐに直ります(化繊筆は×)