外は外道の外。ってことで……
9月1日のmemoで触れた会話のネタです。
痛い表現とかあらゆる意味で18禁。
なんかもう色々とごめんなさい。もちろん死にネタ。
ちょっと改行大げさにして下げておきますので大丈夫そうだよ!っておひとのみお進みください。
もう動けない。
地面に仰向けに横たわり、三成は傷がなるべく痛まぬようそっと息を吐いた。
肋骨が折れて肺に刺さっているようだ。
このままなら「終わり」はそう遠くはなさそうだった。
傷と痛みと失血と疲労のせいで、身体が重くてもう動けない。
何よりも、三成を突き動かしていた「目的」がもうない。
秀吉様、半兵衛様。
秀吉様の仇も討てなかったわたしを、お許しくださいますか……
もう望むものなど何もない。先に逝った主君への慕わしさと、悔いばかりが胸に残る。
目に映る空は墨を流したように黒く、太陽はどこにも見当たらなかった。
湿気はなく雨の降る気配はないのに雨雲のような黒雲が空を覆い尽くしていた。
まるであの日の空のように。
間近に憎い憎いあの男が、徳川家康が立っているがもうどうでもよかった。
わたしは負けた。すべて終わったのだ。あとはこの命が尽きるのを待つだけ。
男は部下も戦国最強の腹心もすべて下がらせて、一人で横に腰を下ろした。
こんなザマのわたしは警戒に値せぬ、か。
人払いをした陣の中に他に気配はなく、しんと静まり返って、
時折遠くに聞こえる銃声や剣戟の音がなおさら静けさを際立たせた。
男は動かない。
肺に溢れる血が苦しくて、げほげほと咳き込む。
だが血を吐き出すほどの体力は残っておらず、仰向けに横たわった姿勢とあいまって
ほとんどの血は喉の奥でごろごろと音を立てるだけに終わった。
口内に溜まった血が呼吸を遮り、口の端から流れるように滴り落ちる。
それでも男は動かない。
とどめを刺さずに、苦しみながら絶命する様を見届けるつもりだろうか。
三成の知るこの男はそんな男ではなかったはずだが、そこまで三成が憎いのだろうか。
仇の前に無様な姿を晒したくはないが、動けないのだからどうしようもない。
呼吸が出来なくて、頭の中ががんがんと痛み意識が遠のいていく。
このままなら終わりもそう遠くはない。なるべく家康を視界に入れないように空を見上げて、
ひでよしさま、と口の動きだけで、慕わしい主君の名を呼ばわった。
いま、おそばに。
「三成」
家康が三成を呼ぶ。疲労の色すらない強い声だ。
三成はちらりと視線を向けた。それが精一杯だった。
痛ましいものを見るような家康と目があう。
家康は三成を抱き起こすと、三成の顔を下に向けさせて背中を強く叩いた。
ごぼ、と口から血があふれて流れ落ち、呼吸が少し楽になった。
ぜいぜいと喉が苦しい音を出す。
呼吸を助けるように、大きなあたたかい手が背中をさすってくれた。
「三成」
「……」
「三成、三成」
家康が後ろから抱きすくめて、何度も名を呼ぶ。
失血で体温を失いかけた身体に、高い体温の身体が存外心地よい。
腕に支えられて呼吸が出来るようになって、少し頭が働くようになった。
とどめを刺す前に何か言いたいことでもあったのだろうか。
秀吉様への謝罪くらいなら聞いてやらんでもない。
「なんだ……いいたいことがあるのなら、はやくいえ。おそらく、もう、ながくはない」
「――三成っ」
家康の腕が、乱暴に三成を振り向かせた。
身体のあちこちがひどく痛んだが、三成の身を起して支えているのは家康なので抗うすべもない。
「ひでよしさまへの謝罪なら、わたしがあちらで伝えてやろう」
「三成……、おまえはまだそんな」
家康の表情が引き歪む。
この男のこんな表情を見るのは初めてだ。
いつも笑顔で本心を隠して、自分自身すらもだますような男だったのに、と三成は何の感慨もなく思った。
「おまえがひでよしさまを殺したように、今度は、おまえがわたしを殺す。それだけだ」
「……」
「とどめを刺せ。刺さないなら、直接手を下したくないというなら、ここに捨て置け。
この傷がじきにわたしの命をうばい、わたしはひでよしさまのおそばにゆける」
「……捨て置け、だと?」
「安心しろ、万に一つも助からぬ。きさまの手を汚すひつようも、ない」
三成の身体を支えている手が、大きく震えた。三成は疲れたように目を閉じる。
「ワシが、自分の手を汚すことを厭うていると、そう言っているのか?」
「……野望を夢ということばで飾り立てるように。
きさまは、自らの欲や汚いことを見ぬふりをして、きれいなうわべだけで取り繕うのだ……
そうだろう……?」
そうやって本音を隠してうわべだけの笑顔を振りまいて。
わたしは貴様のその生き方が、どうしても許せなかった。
……だが、もうそれも、どうでもいい。
「去れ。わたしのことなどわすれてしまえ」
三成の肩を掴んでいた両手に力が籠められた。
握りつぶされそうなほどの力にぎしぎしと骨が鳴って痛み、思わず眉をひそめた。
目を開くと、そこには今まで見たこともないような表情を浮かべた男が、
妙にぎらぎらした目で三成を見つめていた。
「ワシは忘れないぞ、三成」
ぞくり、と背筋に冷たいものが走る。
「ワシが手を汚すことを厭うているわけではないと、
どうやったら三成にわからせることが出来る……?」
にたり、と目の前の男がわらったように見えた。
家康の手が荒々しく着衣を剥がしていく。その合間に、指先が身体中の傷の状態を確かめている。
大小の打撲や打ち身はそのままに、出血のあるものには拭って軽く布をまいていく。
わき腹に大きな槍の傷があった。陣大将にやられたものだ。
そのときはさしたる怪我でもなかったが、後にそこに拳を受けて傷が大きく深く広がった。
出血の大半はその傷からだった。
血をざっとぬぐうと、家康はその傷を舐めはじめた。
「いえやす……きさま、何をしている……っ?」
最初はあまりの痛みに傷口を抉られているのかと思ったが、
舐められてることに気がついて、三成は戸惑った。
痛みの中に何か違うものが混じって、なんとも言えない感触に腰が引ける。
家康は答えない。気が済むまで舐め終えると布を当て、その上からさらに布を巻く。
この期におよんで応急手当? 何を考えている?
肺から血がこみあげて、げほげほと咳き込めば、
家康の腕がさっきと同じように三成の半裸の身体を起して血を吐かせる。
痛みに身体が竦むせいで、体力の消耗が激しい。
応急手当など施したところでこの身体は保つまい。
そんなことを考えて、三成はされるがままになっていた。
下を向かせて支えるために胸にあてられた大きな掌が、ゆっくりと肌を撫でている。
その指先が胸の飾りに触れ、やわらかく揉み始めたので身体がびくりと跳ねた。
背中をさすっていた手がそのまま下に撫でおろされて、尻の丸みを確かめるように動く。
「……? 何を……?」
意図がわからず、三成は身を固くした。
その首筋に家康が後ろから顔を埋める。
耳のすぐそばでぴちゃりと舐める音がして反射的に首をすくめた。
そのまま家康の舌と唇が、うなじをついばむように何度も触れる。
「いえやす……?」
動かない身体を必死に動かして顔を見ようとするが、思うように動かない。
家康の手が三成の下肢に触れて、行為の意味をやっと理解した。
「貴様……わたしを嬲るつもりか……っ」
「嬲るもなにも……死にかけててもここは反応するんだなぁ、三成」
耳元で笑いを含んだ声で言われて、恥ずかしさに頬に血が上る。
既に昂っていたそれをゆるゆると梳かれて、腰の奥に蟠るものがあった。
「きもちいいか?」
「―――!」
問われて、瞬時に蟠る熱が快楽に変化した。
ゆるやかに梳き上げる感触が物足りなくて、腰が揺れたのがわかった。
家康にも伝わったのだろう、笑う気配がしていたたまれなくなる。
それと同時にぐらりとめまいを感じた。血が足りないのだ。
快楽に身体が反応するたびに、あちこちの傷が熱をもって痛む。
身体は痛みにすくみ、快楽にこわばり消耗していく。
この身体はゆるやかに死にかけている。
なのにそこは、はっきりと快感を感じて立ちあがっていた。
「わ……わたしは……」
「さっき傷を舐めてたときから勃ってたぞ。三成はそういうのが好きなのか?」
「……そんな……」
家康がわざとそういう言い方をしているのはわかっていたが、
自らの身体の反応が信じられなくて反論することもできない。
げほ、とまた肺から血がこみあげてむせれば、やさしい手が伸びてくる。
しかし胸に当てられ支えるだけの手にも、背中をただなでる手にも、
今は身体が勝手にぞくぞくと違う感触を拾ってしまいどうしようもない。
まるで己の意思とは別に、快楽を求めておののくのが苦しい。
咳が治まると、そのままうつぶせに倒された。
胸の内部の傷に体重がかかり、圧迫されて脈打つようにずきずきと痛みを訴える。
家康の手で裸の腰を高く掲げさせられた恥ずかしい格好に抵抗を試みるが、
太腿の内側を撫で挙げられて、三成はあられもなく身悶えた。
「や……め、やめて、くれ……っ」
見えないのが怖い。
見えないまま、他人が触れたことのない最奥に触れられて押し開かれるのに恐怖を感じた。
なのに、それでもこの身体はそんな行為にまで快楽を拾って、奥にいくつも熱を灯す。
指が中に差し込まれると、感触に背がのけぞった。
わき腹の傷が開いて出血したのがわかったが、身体が止まらない。
慣れる間もなく二本目の指がさらに入り込んできて内側をこすりあげた。
「ああぁ、やめ……や、ぁ、やぁあっ…!」
たったその感触だけで、三成はあっけなく吐精した。
腰ががくがくと震えて、羞恥と屈辱と快楽とで涙があふれる。
指を引き抜かれ、震える身体を仰向けに転がされると、身をひねった拍子に折れた肋骨が肺を抉った。
激痛が駆け抜け身体が強張った。あまりの痛みに息が詰まって気が遠くなる。
目の前がチカチカしながら暗くなって、指先から冷たくなっていくように感じた。
頬に触れる指だけがあたたかい。
その指が涙を拭うのを感じて視線を動かすと、神妙な顔をした家康が目に入る。
「い……えや……」
「三成、……最後まで死なないでくれ。ワシがとどめを刺してやるから」
とどめとこの行為の関係がよくわからなかったが、それを問うことは出来なかった。
もう声も出ない。指一本動かせない。
視界が徐々に暗くなり、胸部の脈打つ痛みだけが意識と感覚を支配する。
このまま意識が闇に落ちれば、すべてが終わる。はずだった。
足を開かれる感覚はなかった。
押し当てられた熱い感触だけがやけにくっきりと意識に上る。
そのまま一気に貫かれて、冷えた身体の奥に熱さが押し入ってくるのがわかった。
内臓を引き裂き押し上げるような痛みを一瞬感じ、それがすぐに熱さに変わる。
違和感と異物感と、圧迫感と息苦しさと、それらを忘れるほどに酷い快楽が
脳髄を痺れさせ、すべての痛みを忘れさせた。
がくがくと激しく揺さぶられて失いかけた意識が引き戻されると、目の前には家康の顔。
じっと三成の顔を見ているのに、表情がよくわからない。
何かにすがろうとわずかに動かした手が地面の上をぬるりと滑った。
わき腹の傷がひらいて、地面に血だまりを作っていた。
家康がその手を取って自分の背中にまわすが、そのままだらりと滑り落ちる。
もう持ち上げ続けるほどの力が残ってなかった。
ああ、こんな形で貴様に殺されるとは夢にも思わなかった。
声にならない声でそう言って、家康に触れようとしたが手が動かなくて叶わなかった。
最後に見たのは、覗き込んでくる表情のわからぬ友の顔。
いえやす、と呼んだ声は、音にならなかった。
そのまま三成の意識は闇に落ちた。
つめたくなっていく身体を抱きしめて、家康はひとりくすくすと笑い続けた。
(2010.09.02)
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あれです、死にかけると生存本能が云々で勃起するとかしやすくなるとか
発情しやすくなるとかなんとか、そんな嘘かほんとかわかんないネタ。
殿はきっと三成が今にも死ぬって時にまでひでよしさまーとか呼んだのが気に食わなかったんだと思います。
ううん知らないけどきっとそう。
討死の時の絶叫が大好きです。
進行状況次第でたまに いえやすううううううぅぅぅって言ってくれてもいいのに。