家康赤ルート後捏造。三成を生け捕りにした設定。
1〜2のこどもっぽい家康が好きでした。








仰臥して裸体を晒している三成の、あらわな首から鎖骨、胸にかけてをなでまわす。
三成はひとことも話さない。
ただ憎しみに染まった瞳だけが家康をじっとにらみ続けている。

(そんな目でにらんでも、ワシは嬉しいだけだ。)

何度ものぼりつめた三成の身体はうすく朱に染まっているのに、触れるとまだ冷たく感じた。
そのひんやりとした肌がお互いの汗に濡れ、しっとりと手のひらに吸いつくような感触を残す。
身体の奥から衝動がつきあげる。まだ足りない。もっと欲しい。もっともっと三成が欲しい。
腕を掴んで手元に引き寄せようとすると何かが引っ掛かる手ごたえ。
見ると、赤い荒縄で後ろ手に縛った三成の手首から腕にかけて、脱がせた着物の袖が絡んでいる。
裾は二人の身体の下でくしゃくしゃになって、先ほど放った二人の精で濡れていた。

(縄を解かなければ袖が抜けないな。脱がせてから縛れば良かったなぁ。)

縄を解くか悩んだが、三成の白い肌に赤い縄が思った以上に似合うので――そのままに。
引き寄せるのをやめて、横たわる身体の上に覆いかぶさる。
家康をじっと見つめ続けている三成の顔を覗き込み、きゅっと結ばれている唇をなめた。
声が聞きたいが、最初に色々試みて駄目だったので今日のところは諦めた。
三成の肌の感触が気持ちよくて、撫でる手を胸から腹へと下げながらうすい胸に頬をすり寄せた。
感触だけでなく、火照った頬につめたさが気持ち良い。
家康は幼子のように喜びに頬を熱くさせている自分に気がついて、照れくささにひとり笑った。





やっと手に入れた。
長年ずっと思い続けた。
三成が好きだ。
ずっとずっと好きだった。

子供の頃の家康にとって、真面目で素直な三成は気になって仕方のない存在だった。
少しでも長く一緒にいたくて後ろについてまわり、こちらを向いて欲しくて幾度となくちょっかいをかけた。
(ワシは子供だった。そして、とても幸せだった)
どうしたら好いてもらえるかわからず、しつこく付きまといすぎて真面目な彼を怒らせたこともあった。
お互い武将となるとかつてのように気軽に接する機会は減ったが、その代わり肩を並べて戦場に立てた。

やがて家康に徳川の棟梁としての自覚が芽生え、己を客観的に見る余裕が出てきた頃には
――三成に強くものを言うことが、徐々に出来なくなっていった。
三成に対して抱いてきた感情が「好き」という気持ちだと気がついたのだ。
自分の三成への想いを自覚すればするほど、子供だった頃の己の所業を恥じた。
今更好かれるなどと期待も出来なかったが、せめて嫌われたくなかった。
努力家の三成の隣に立ち続けるために、己を鍛えることに時間を費やした。

もっと違った接し方があったのではないかと、のちに苦く思い返す。

三成が、秀吉の力に傾倒し神と崇めていくまでの時期を、家康は間近で過ごした。
純粋すぎる三成にとって、その思いの強さが危険だと、その思いの形が危険だとうすうす気がついていたのに、
嫌われるのを恐れるあまりに何もしなかった。やんわりと制止の言葉をかけるくらいしか出来なかった。
そして気がつけば、三成は秀吉の左腕として、力で治める秀吉のもとで無慈悲な凶王として名を馳せていた。

秀吉のやり方では駄目だ。日の本は治まらない。
そう決意したとき、家康は三成の敵となった。

家康は考える。

三成が「凶王」となっていくのを自分は何もせずに見ていた。だから彼は自分が止める。嫌われても仕方ない。
しかし三成が自分を嫌っても、自分は三成が好きだ。それは決して変わらない。
だから絶対に殺しはしない。どれほど嫌われ憎まれても殺すことはしないと誓おう。

ああでも、どうせ嫌われるなら。
いっそ手を伸ばしてその存在を――自分のモノにしてしまっても、いいんじゃないだろうか?

このとき家康の三成へのあわい想いは、明確な肉欲を伴ったものへと変化したのだった。





そして今、子供のころから振り向いて欲しくて仕方のなかった存在が、手の内にある。
その目が自分だけを真っ直ぐに見つめてくる。
好かれることを諦めれば、手に入れるのはあまりにも簡単だった。

家康が下肢に片手を伸ばすと、三成のそこは既に勃ち上がっていた。
握り込むと身体がびくんと跳ねる。
素直に反応を返す三成の身体がいとしくて、そして哀しくて、もう片方の手で肢体を抱き寄せた。
憎んだ相手に抱かれて快楽を感じるのはどれほどの屈辱だろう。
何も考えられないくらいに追い詰めてやりたいが、あいにく家康には余裕がなかった。
白い足を割り開き、閉じた場所へ己を押し当てゆっくりとねじ込んでいく。
既に何度か繋がったあとのそこはひくつき、きつい感触ながらも家康を迎え入れる。
家康は、己の肉が三成のそこに飲み込まれていくのを我知らず凝視して、ごくりと息を飲んだ。
腰も腿も白すぎる。白くて細い、いとしい人の身体。それを己が犯していると思うと頭に血が上り、
ふつりと抑えがきかなくなった。腰を強く掴んで押さえつけ、めちゃくちゃに突きあげる。
「……っは、ぁ……っ!」
がくがくと揺さぶられて、三成が声をもらした。
罵倒でもなんでもいい、声を聞かせて欲しいといくら家康が懇願しても
決して口を開いてくれなかった三成の、あの日以来の初めての声だった。
その声にあおられて、家康はさらに動きを激しくする。
むかしのように名前を呼んで欲しい、と思ったが、彼の中が熱くて熱くて言葉が出ない。
「ひ……っ、あ、あ、ぁあ――」
三成は悲鳴をあげて身体をそらせると、家康をきつく締めあげた。
「みつなり……っ」
その感触を味わいながら細い身体を両腕に抱き込んで、奥に熱を注ぎこんだ。
腕の中の身体が弛緩するのを密着した肌で感じる。
家康の精を受けた内側がぴくりぴくりと痙攣していて、再び衝動が沸きあがるのを感じた。
三成が欲しい。まだ、足りない。いくら抱いても足りない。満たされない。

わかっていた。
どれだけ身体を抱いたとしても、心が手に入らなければ決して満たされないことを。
覚悟していたはずだった。秀吉を殺せば、三成の心は二度と手に入れられないことを。
(それでもワシはこの道を選んだ)
日の本に平和を、絆で結ぶ泰平の世を。
そして三成を手元に。たとえ心は得られなくても生きてさえいれば、と。

三成は今、家康の手の内にある。
満たされないなら手を伸ばし、気が済むまで存分に貪ればいいのだ。
どんな形でも、生きてさえいれば。

吐精後の虚脱感にぐったりとしている三成の顔を覗き込むと、うつろだった目が家康をとらえた。
その瞳に光が、憎しみが戻る。正気は失っていない。
それに微笑みかけながら、いっそ狂えばお互いに楽かもしれないのに、と家康は思った。





まだ一度も「好きだ」と言葉にしてないことを、家康は気がつかない。





(2010.08.23)