スポーツ選手の医科学知識

@選手の正しい食事について

 スポーツ選手の食事について、ごく最近まであまり気にされることは、ありませんで
した正しい食事をタイミング良く採ることにより、骨格筋の発達・筋力・筋持久力の向
上疲労の早期回復がはかられることにより選手の競技力(パフォーマンス)が向上します。

  「敵に勝つからカツ丼!!では・・・あまりにも・・・??です」

どのような時期に何をどのように食べたら良いか?具体的に述べてゆきたいと思います。

まずは1年間を「競技期」「競技直前期」「トレーニング期」にわけて考えてゆきたい
と思います。

 
「競技期」:まさに試合期間であり競技により1日で終わるものもあれば2週間ある
いはそれ以上、続くものもあります。この時期には急速グリコーゲンローディングをし
て失われたグリコーゲンを補充しましょう。

 
「競技直前期」:試合前の練習が普段よりきつく実践的な練習がおこなわれる頃より
試合前日までを言います。この時期はグリコーゲン・ローディングをして試合にベスト
の体調にするためグリコーゲン・ローディングを行います。

 
「トレーニング期」:いわゆるオフ・シーズン期で基礎体力をUPさせる時期です。
「トレーニング期」でわ、高蛋白低脂肪食を中心とした食事にし骨格筋の発達を促しま
す。この時期にプロテインを多めに摂るのも効果的です。



        ― グリコーゲン・ローディング ―

競技日にむけて1週間から2〜3日間炭水化物(ご飯・うどん・パン)を
極度に制限した高脂肪・高蛋白食をとり、体内からグリコーゲンを消失させる。
その後、競技日の2〜3日間高炭水化物・低脂肪にきり変え競技日前日から
競技直前の食事まで炭水化物を中心に食べることにより、選手の体内グリコ
ーゲン貯蔵力が高まり、選手の競技力が上がります。 

          

       ― 急速グリコーゲン・ローディング ―

1日の間に2試合あるいは、3試合・等、短時間で体内に失われたグリコー
ゲンを速やかに補充する方法で試合当日の朝食・昼食などに行われます。
脂肪を控え高蛋白質(卵・チーズ)高炭水化物(ご飯・うどん・もち)等を中心
とした食事の後、必ず柑橘系の飲料(100%オレンジジュース・グレープフルーツ
ジュース)を摂ってください。クエン酸を摂るためです。また、食事中になるべく
(梅干・プルーン)を摂るといっそう効果的です。

 
簡単にまとめると下記のようになります。
  
 【スポーツ選手が食事において気をつけること】

@温食の朝食は必ず摂ること。(腦にも良いです)
  
A食後のオレンジジュースは必ず飲みましょう!
 (嚢縮還元よりストレート果汁100%がおすすめ)

B中学・高校生は五時間目の昼休みに梅干しおにぎりをオレンジジュースで

C女性の選手は、お茶(ウーロン茶・紅茶)は飲まないでミネラルウォーターで
 (お茶の中に含まれるタンニンは貧血に良くありません)
          


Aスポーツ選手の正しい水分補給の仕方

一般に、熱射病 日射病などを総称して「熱中症」と呼びます。

 学校のクラブ活動の熱射病により生徒が死亡するという悲劇が年間十数件起こっている
のが現状です。
選手は、上手に強くなりたい!監督・コーチは選手を育ててあげたい!しかし熱中症の知
識がほんの少したりなかったために、生徒が死亡してしまうなどということが、毎年確実
に起きています。どのようにすばらしい栄光でも死んでまでやらなければならないクラブ
活動は無いはずです。


正しい熱中症の知識を持つことにより学校のクラブ活動中に熱射病により生徒が死亡する
などと言うことは、ほぼ100%防げますので正しい知識を身につけてください。


熱中症になるとどのような事が人体に起こるのか?簡単に述べてみたいと思います。



   @脳・・・出血・浮腫・壊死・低血糖・意識障害
   A心・・・出血・壊死・不整脈・心不全・低血圧
   B腎・・・腎不全
   C肝・・・小葉中心性壊死
   D筋・・・融解(筋力低下・筋持久力低下)



以上のように、熱中症により脱水が起こると体にとって何ひとつ、いい事はありません!


それでは、どのくらいの気温温度で熱中症が起こるのか?1983年Hughson博士が発
表した熱中症の警告がありますので参考にして下さい。




          1983年HughsonによるWBGT



  WBGT   危険度    警告
  〜18℃    低い     熱障害は起こりうるので、やはり注意が必要
  18℃〜22℃  中等度    熱障害の徴候に注意し必要ならペースダウン
  23℃〜28℃  高い     ペースダウン トレーニングが不十分な物は中止  
  28℃〜    きわめて高い ペースを落としても危険、競技中止



    WBGT(黒球湿球温度)=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度

    「盛岡の場合 約気温−5=
WBGTと考えれば簡単と思います」

    多少めんどくさいですが、要は、高温多湿で
WBGTが上昇します。

一般に、汗1gが蒸発すると約0.58カロリーの熱を奪います。しかし汗のすべてが気化熱
によって体から熱を奪ってくれるとは限りません(ぼたぼたと流れ落ちてしまう無駄な汗
など)マラソンを例にとってみますとフルマラソンを3時間で完走した場合、約3.5gの汗
が最低必要です。しかしこれもかいた汗が全部蒸発した時の計算です。先ほど述べた様に
無駄な汗もありますので、実際にはこれよりも多くの汗が必要になるのです。

体重65`の人が、3.5gもの水分が失われた場合5%以上の脱水となりますと普通は運動困
難となるばかりか「運が良ければ命がある!」このレベルです。
このような環境での運動は、なんの価値も見出せないのがおわかりいただけるでしょう。


むずかしい能書きはいいから どうすればいいのか!!と言う声が聞こえてきたので具体
的にどのような水分の取り方が良いのか?具体的にお答えします。


1 何を飲めばいいの?

発汗により水の他にミネラル類も失われるので、市販のスポーツドリンクを水で倍ぐら
いに薄めた物を飲むのが良いでしょう。市販のスポーツドリンクには、汗により失われ
るミネラル等も入っているので効率よく補給できます。しかし糖質もかなり含まれてい
るので激しい運動時にあまり糖質の多い飲み物を飲むと吸収率が悪くなるので水で1/2〜
1/3位に薄めた物が適していると言われています。(糖質を摂るとインスリンの血中濃度
が上がり運動能力が低下します。)満腹時より空腹時のほうが運動能力が上がるのは、
選手の多くが経験したことがあると思います。


2 温度は、どの位?

体温ぐらいの温度がいいと言われていた時代もありましたが、実験により3〜7℃できれ
ば5℃位の温度が一番吸収が良いとされております。

3 飲むタイミングは?

一度にあまり多くの水を摂りますと吐き気などを催すので、こまめに水分補給するのが
良いでしょう(以前はこまめに水分補給などしないで極限まで我慢させてから水を飲ま
せて吐き気等がしたので練習中は、水を摂らせなかったのでしょう)

具体的には、
練習前に30分位かけて500ccの水分補給、練習が始まったら15
分おきに50〜100ccを練習しながら全員摂るようにしましょう

胃腸からの水分吸収は、毎分25mlと限界があるため特に夏期の練習・試合で発汗
が多いと思われる時は、こまめに摂水してください。


  どのような条件化であっても3%以内の脱水にとどめましょう!!

この様に書きますと「水分補給のために練習が中断されるのではないか?」と言う不
安疑問等がでてきますが、各競技によって方法は違っても、水分補給することにより
選手の競技力は確実に上がりますし先ほど述べた様に脱水により脳や筋の機能が低下
するのを防ぎます、これがケガの予防にもつながってくるのです。


    即座に練習を中止させるべき症状!!



         胸部・上腕部の立毛(とりはだ)
       悪寒(寒気)
       拍動性の頭痛(ずきずきする感じ)
       吐き気
       運動失調(ふらふら歩く)
       皮膚の乾燥(汗をかいてない)
       なまあくび
       体温の上昇(39℃)
       意識混濁




Bスポーツ選手の正しい休養の仕方

最近の研究により休養のとりかたで、試合当日のパフォーマンス(競技力)にかなりの差
が出る事がわかってきました。

練習の時は、非常に調子が良かったのに試合では自分の力を出し切れなかった!!この
ような話を聞いたことのある方、経験したことのある方もいらっしゃると思います。以
前は、「あの選手は、精神的に弱いからだ!!」と思われておりましたが、そのような
ことは無く、練習と休養のとりかたが原因、特に休養のとりかたが原因という事がわか
ってきました。

「休養」と言うと、どうしてもただ練習をしないのを休養と思いがちですが、そうでは
なく積極的に身体を休ませる事を目的としておりますから「さぼっている!」のでは無
いことをご理解い下さい。

                 ― 全身の休養 ―

1週間に1日の完全休養は、取っているとは思いますが完全休養日でも専門家によるス
トレッチまたは、マツサージ前述した正しい食事による速やかなグリコーゲンの補給、
自律訓練法等により身体・精神・神経の休息を心がけてください。ほとんどのチームで
、十分なストレツチは出来ておりません!専門家に十分なストレッチを指導してもらい
ましょう!!(ストレッチは毎日を心がけてください)


              ― 局所の休養 ―

局所の休養・・・?と言われそうですが、たとえば捻挫したことのある関節へのテーピン
グ・アイシングなどがこれにあたります。競技によって多少の違いはありますが主に足首
・膝・肘・肩の練習、試合前のテーピンクグと練習・試合後のアイシングを必ず心がけて
ください。これにより「試合の5日前に捻挫して試合に出られなかった!」ということは
、かなり防げます。

 

                 《 日本体育協会へ 》


           参考文献  スポーツトレーナーマニュアル (株)南江堂