毎日・本三昧 オススメ小説エトセトラ


毎日・本三昧

 
バイバイ、ブラックバード   .

バイバイ、ブラックバード

著 伊坂幸太郎

双葉社
2010/7/4 発行


太宰治の未完の絶筆「グッド・バイ」から想像を膨らませて創った、まったく新しい物語。
1話が50人だけのために書かれた「ゆうびん小説」が、いまあなたのもとに

感想:
女にも金にもルーズな男が、交際していた女性に別れを告げにいくお話です。

”女にも金にもルーズな男”を、ここまでよい人っぽく描ける伊坂氏はさすがです。女性読者も嫌悪感を抱かないことでしょう。
露悪家、繭美とのコントラストも見事でした。
どちらのキャラも嫌味がなくて気持ちがいいです。特に繭美は鮮烈でした。夢に見ますよ。

文章は少しだらだら目。のんびりと展開していきます。
途中から、ラストをどうやってしめるのかとハラハラしましたね。

さらっと読めるのも魅力のひとつ。
結構悲惨なストーリーなのに、不快値ゼロです。

「ゆうびん小説」という試みも興味深いナ…。定期的に伊坂氏の短編がポストに届けられるだなんて、ちょっとドラマチックじゃありません? 毎日が少し楽しくなりそうです。選ばれた50人がうらやましい。
★★★



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箱庭図書館   .

箱庭図書館

著 乙一

集英社
2011/3/30 発行


コンビニ強盗との奇妙な共同作業。暗くてイタい文芸部員男女の不器用なやりとり。お正月に降った雪がもたらす不思議な出会い。読者を魅了する、6篇収録。

感想:
やはり乙一さんはいい。乙一さんらしさが随所に見られる出来のいい短編集でした。
乙一さん久しぶりだったから、もう楽しかくてたまりませんでした。

俗に言う白乙一、黒乙一の分類で言うと白寄りでしょうか。けどユーモアありファンタジーありで、全体的に軽い印象の話ばかりでした。
どれも雰囲気が素敵でドキドキさせられます。ですが一番は「ホワイト・ステップ」でしょう。雪で白くなった町が美しく目の前で広がるようでした。ストーリーも良い。
「ワンダーランド」の鍵のくだりは、星新一さんのショートショートを思い出しました。どうしようすごく似ている、とハラハラしましたが、きちんと枝分かれして、ほっ。

ただ、最後のあとがきを読んで僅かにがっかりしました。もともと投稿者の考えたストーリーを乙一さんがリメイクしているんですね。
乙一さんよくこんなの思いつくな〜って思いながら読んだので、なーんだという気持ちはぬぐえません。
けど、文章力はずば抜けてますので、それだけでも十分すぎるくらい酔えましたヨ。
★★★★

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葉桜   .

葉桜

著 橋本紡

集英社
2011/8/30 発行


書道教室で生まれた、長い長い片想いの行方
小学生の頃から通う書道教室の先生に、長い片想いをしている佳奈。けれど先生には奥さんがいて・・・・・・。春から夏へと移りゆく季節のなかで、ひとりの少女の成長を繊細に紡ぎだす長編青春小説

感想:
透明感の高い文体で描く、高校生の片思いと青春の物語。
肝は書道です。

最大の特徴は、感覚的でやわらかい文章で語られる、若い女の子の繊細な心の動きなのでしょうね。
キラキラと美しく、まどろっこしく、冗長で、つかみどころがなく、見るもの全てがロマンチック。まさに、箸が転んでもおかしい年頃、な主人公少女。彼女がふわふわと恋に恋をしています。

好き嫌いわかれるかもしれません。こういう「無駄なほど丁寧な文体」はちょっと前に流行っていたし、うまい人はうまいんですが、私はこの作品、超がつくほど苦手でした。
丁寧な文章は好きなんですよ。洗練されているのなんて大好きです。だけど、これはちょっとそういうのとは違います。
原稿量の水増しにしか見えません。
共感できない会話の応酬、やたらに多い改行、意味のない記述、だらけた雰囲気。
美しいシーンすらあざとさが感じられて、まったく心が受け付けませんでした。

特に、最後の20ページを目にして、ほとほと呆れました。
この本、単行本で1300円も取るんでしょう?ほとんど詐欺です。
★★



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花桃実桃   .

花桃実桃

著 中島京子

中央公論新社
2011/2/25 発行


40代シングル女子まさかの転機に直面す。昭和の香り漂うアパートでへんてこな住人に面食らい来し方をふり返っては赤面。行く末を案ずればきりもなし…ほのぼの笑えてどこか懐かしい直木賞作家の最新小説

感想:
相続したアパートをアラフォー独身女性が経営していくお話し。
「アラフォー独身女性」が主人公なんだけど、流行りものな軽さはなく、切なくも懐かしい、しみじみとした小説でした。

ゆうらりとした雰囲気が最大の魅力です。のらりくらり、ぽかぽかとっぷり。時間がゆっくり流れていきます。
読みすすめていくうちに、じわじわと魅力にはまりました。気付けば自分もアパート住人の一員になったよう。

登場人物のキャラクターもよく、それが浮つかずしんみり心に響きます。誰も彼も実があって魅力的。
主人公の、いい人じゃないけどなんだかいい人、な設定も良かったです。

とまぁかなり満足度の高い小説でした。
けど、これで1500円?文章量とかページ数とかで考えると、1500円は高い。直木賞効果ですか?せちがらいのぉ。とも思う。
★★★★★



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ハニーズと八つの秘めごと   .

ハニーズと八つの秘めごと

著 井上荒野

小学館
2011/3/2 発行


直木賞作家・井上荒野氏の短編小説集。
著者がこれまでに発表した作品のなかから選りすぐった全9篇。

感想:
井上さんはやはり短編がいい。
タイトルがかわいらしいので、期待して読み始めました。

私が一番好きなのは一編目「ブーツ」。暗く乾いたクラブハウスの雰囲気がいい。
「泣かなくなった物語」は私小説だそう。彼女のお父さんって作家さんだったんですね、初めて知りました。これもドキドキしてよかった。
「他人の島」も嫌いじゃない。

どれも20ページ〜30ページの短い話です。
一冊の本としてみると、いまいちかな。
唯一の書き下ろしもやっつけ感否めません。
★★★


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ばらばら死体の夜   .

ばらばら死体の夜

桜庭一樹

集英社
2011/5/10 発行


本の街・神保町を舞台にした極上サスペンス
四十過ぎの翻訳家・吉野解は、かつて自分が下宿していた古本屋の二階で謎の美女、白井沙漠と出会う。粗末な部屋で何度も体を重ねるが、沙漠が解に借金を申し込んだことから歯車が狂い始め・・・。

感想:
神経衰弱気味の中年男と、頭からっぽの女が織りなす殺人の軌跡。金に飲み込まれる不幸な人々のお話でした。

桜庭さんらしい、どこかが妙に濃いストーリーでした。
そして絵作りが綺麗。比喩に注ぐ比喩という感じで、しかもそれが的確で面白くて、読むほどに世界観に引きずり込まれました。
主人公男女の性格がまた濃くて、いい具合にすれ違っているのも良かったです。

ただ、終盤はほとんど蛇足でした。四章までで十分かな。
特に五章の甥のくだりは、文体から何から、全く違うものを読んでいるような錯覚に陥りました。
四章までは秀逸。ほぼ欠点がなかっただけに、もったいなかったです。
★★★★



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