毎日・本三昧 オススメ小説エトセトラ


毎日・本三昧

 

ベーコン

ベーコン

著 井上荒野


ささいで、そして艶めかしい、日常の営み
人の気持ちが動くとき、人生が少しだけ変わるとき、傍らにある料理と、それを食べる人々の心の機微を描いた珠玉の短編集。

感想:
男臭い小説ばかりが候補にあがった今回の直木賞において、異彩を放っていたのがこの作品。とても女性らしいテーマで、繊細に人々の日常を描いています。

起承転結があるようでないようで、その半端な雰囲気が好きです。こうだ!と断じてしまわない、潔さを感じました。
何気ない日常を、食事やなんかで絡めとって、上手に表現しています。心地よくて、ただひたすらゆるゆると読み進められました。

確かに直木賞にはちょっと弱いかなって感じ。でも好き。
★★★★



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ヘヴンリー・ブルー

ヘヴンリー・ブルー

著 村山由佳


もう一つの『天使の卵』
『天使の卵』では、どんなに熱い想いを歩太に抱いても報われなかった夏姫の恋。思いがけず姉・春妃に向けた恨みの言葉。
狂おしい熱情と悔恨と懺悔。夏姫のモノローグで綴るせつない4つの短編。

感想:
えらい「天使の卵」に依存しちゃってる本だなぁ。「天使の卵」読んでないと、これはつらいですね。

内容は薄っぺらいです。
悲しいとかつらいとか、わかりきってるようなことを、上澄みだけとって、きれいにならべただけ。深みがなくて、全く心に触れません。

感想は、蛇足の一言。
発行の意味がわからない。「天使の卵」が映画化されるから、関連本だしたら売れると思ったのかしら。気持ちはわかるが、やらしいなぁ。

私にとったらこれで1200円は高いと思うのですが、ファンなら許せるのでしょうか…?
★★



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ベジタブルハイツ物語  
ベジタブルハイツ物語  <文庫>
著 藤野千夜


自分にもなにか取り柄があったらいいのに、なにかあったら―。
芥川賞作家が描く、「目立たない」人々のゆるやかで切実な日々。


感想:
平凡平坦な人々の暮らしをまったりと描く連作短編集。
可もなく不可もなくといった感じで、突出したものは全く感じません。けど、目立った欠点もなく、非常に平均点な一冊でした。

ただ、私は、この文章、ちょっと苦手。
ストーリーがたいしたことないので、せめて文章くらいセンス見せてよって思うんだけど、つまんない仕上がりなんですね。残念。
難なくまとまっているのですが、ただそれだけ、といった感じ。
★★★



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蛇を踏む (文春文庫)   .

蛇を踏む

著 川上弘美

文芸春秋
1996/8 発行


女は藪で蛇を踏んだ。蛇は女になり食事を作って待つ。母性の眠りに魅かれつつも抵抗する、女性の自立と孤独。芥川賞受賞作他二篇

感想:
たまたま手に取ったのですが、芥川賞受賞作だったのですね。
三篇からなる短編集。

表題作の「蛇を踏む」が受賞作品。
好きです。一行目からイイナと思いました。淡々とシュールなのに、突き放しはしない愛ある文体で、流れるように異様な世界へいざないます。バランス感覚が秀逸。終盤が多少だれたかな、という気がしないでもないですが、おおむね好感が持てました。

「消える」も良かった。
「蛇を踏む」と同じようになにかが狂ったオカシナ世界観なのだけど、毅然とした価値観が否応なく香ってきて、その采配にうっとりします。言い回しも好きでした。

「惜夜記」は一転、読むのが大変でした。
決して嫌いなわけではないのですが、無法図すぎてついて行くだけで精一杯。
だけど読後感は一番良かったかも。ぼやぼやとした幻想的な光景が、読み終わってからも脳内に残り続けました。
★★★★



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ベルカ、吠えないのか?  
ベルカ、吠えないのか?  <文庫>
著 古川日出男


>二十世紀をまるごと描いた、超・世界クロニクル。四頭のイヌから始まる、「戦争の世紀」。

1943年、日本軍が撤収したキスカ島。無人の島には4頭の軍用犬が残された。捨てられた事実を理解するイヌたち。やがて彼らが島を離れる日がきて-。それは大いなる「イヌによる現代史」の始まりだった!
感想:
犬と戦争、というテーマで描かれた壮大な年代記です。
柔らかい犬小説を望んでる方は読まないほうがいいです。めっちゃ硬いですから。戦争・政治・マフィア、そして犬は犬でも軍用犬が大いに活躍する話です。

独特な強い調子で語られていて、かなり癖があります。慣れるまで苦労しました。
そして、登場犬が多くって、一気読みした私でも「え、これ誰だっけ?」状態に何度か陥りました。もう少しストーりーを絞って欲しかった。感情移入もしにくかったです。
もちろん、それぞれの犬エピソードはドラマチックでおもしろかったんですけどね。だからこそ、もう少し狭く深く描いてもらいたかったなぁ。

にしてもなんでこの犬たちはみながみな粗野な思考しかもたないんでしょう。かわいらしい犬小説じゃないというのを強調したかったのかもしれないけど、あまりに露骨なのでは?無駄に下品な言い回しには閉口されられました。
★★★



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ヘルマフロディテの体温

ヘルマフロディテの体温

著 小島てるみ


ある日、母が「男」になった。それが始まりだった。以来、シルビオの世界は少しずつゆがみはじめた。

年老いた女装街娼や去勢された男性歌手、伝説の人魚や両性具有の神たちが織りなす哀しくも優しい異形の愛の物語。

感想:
デビュー作、なんですよね??

ちょっと信じられません。
あまりに巧みで。

どこにも無理がなく、流れるように言葉が続きます。それも、洗練された言葉が。
情熱的で、幻想的で、セクシャルなのに美しい。なじみがない国の、なじみがない事が取り上げられているのに、すらすらと物語が頭に入ってきます。
そして、すらすら読めるのに、どこもかしこも印象的でした。

最初から最後まで、独特な雰囲気をもっていて、ずっと圧倒されました。
びっくりした。おもしろかった。

同時刊行された「最後のプラチネッラ」も是非読んでみたいです。
★★★★★



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変奏曲 (角川文庫)   .

変奏曲

著 姫野カオルコ

マガジンハウス
1992/11/19 発行


双子の熱い絆、危ういエロティシズムが奏でる哀しいまでの愛の旋律。長編恋愛小説。

感想:
男女の双子の愛と連帯を描いた連作短編。

不思議な小説でした。四編からなります。
どの章も双子のどちらかの視点で描かれていました。登場人物はどれも似通ったもの。だけど、章それぞれは独立していて、まったく違う時間軸にあったりします。大正、昭和初期、現代?、そして未来…。
読めば読むほど双子同士の強い執着を感じる、不思議な読み物でした。

最初の「桜の章」と二編目の「ライラックの章」が特に良かったです。
四編通して感じるのは言葉足らずな魅力でしょうか。足りないところを脳内で補完しながら読むことになるのですが、そのバランスがとてもよく、さっぱりとそっけないのにふいにねばっこくなる文体とあいまって、強くひきつけられました。
とくに「ライラックの章」はドキドキしましたね。弟君の息遣いまで聞こえてきそうで。

ただただ、うまいなぁと感心させられた小説です。
★★★★


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