毎日・本三昧 オススメ小説エトセトラ


毎日・本三昧

イオニアの風   .

イオニアの風

著 光原百合

中央公論新社
2009/8/25発行


オリュンポスの神々が課した3つの試練。
人間の未来を拓くため、最大の難関に挑むテレマコスとナウシカアの運命は?
ギリシアの神話世界を舞台に描く、壮大な愛と冒険の物語。

感想:
どんなに話がながくとも、登場人物が多くとも、そしてカタカナ名がややこしくとも、おもしろいものはおもしろい。

ストーリーがおもしろいのは半ば当然。ギリシャ神話をもとにしてるわけですから。

本作の魅力はなんといっても、その「表現力」!
登場人物一人として、つまらないのがいないのです。どれもこれも魅力と役割があり、生き生きとしてます。まるで目の前に彼らがいるかのよう。神々のまぶしい光が、人間の泥臭い匂いが、こちらまで届くようでした。丁寧に描かれた人物描写に著者の本気がうかがえます。
文章もそう。隅々まで磨きこまれています。読みやすく、わかりやすく、どの場面も端正に描かれ、要所要所は印象的。色つきの本を読んでるみたいです。

とにかくすごい。注ぎ込まれた情熱と根気に、頭が下がる思いです。

読み終わったとき、長い長いロールプレイングゲームを終えたような、少しの疲労と、寂しさと、強い充実感を覚えました。
あぁ、おもしろかった。すばらしい読書タイムでした。
★★★★★



  Booksメインへ  TOPへ

 

生きてるうちに、さよならを (集英社文庫 よ 14-14)

生きてるうちに、さよならを

著 吉村達也


親友の葬式で、勝手に死者との絆を強調する自己陶酔型の弔辞に嫌気がさした会社社長の本宮は、自分自身の生前葬を企画する。
だが彼は知らなかった。妻の涼子が重い病に冒されていることを…。

感想:
新鮮でした。
スタンダードな内容かと思いきや、先が予測できない。どうなるんだろう、が募ってどんどん読みすすめてしまいます。
手紙形式(?)にしてあるのも新鮮。文体の素人っぽさも、ストーリーにマッチしてていい感じです。

ふらふらと話題が蛇行するのですが、中だるみもせず話はさくさくすすみます。私のような若輩者には考え及ばない死生観にも触れられ、ほうっと感心したり。
たどり着いた結末は、突拍子がなくてあっけにとられましたが。。最後の章は救いに満ちてるし、まぁいいか。

いつの世も、男は女の手のひらで泳がされてるだけ、なんですねぇ。しみじみ。
★★★★



  Booksメインへ  TOPへ

イキルキス   .

イキルキス

著:舞城王太郎

講談社
2010/8/18 発行


物語には生をもたらすキスと、死を招くキスがある。
青春、恋愛、セックス、暴力、家族。みんなカナグリ生きている。
荒々しく吹きすさぶ言葉たちは
いつしか紙の上に優しく降り積もり小説となる。

感想:
舞城王太郎氏のを読むのは2冊目です。今回は短編集。

やはりダイナミックな文章ですね。ざっくばらんと無造作に、つらつら言葉を重ねていきます。ばばばっと書かれる書道みたい。勢いがすごい。思わず読んじゃう。
ストーリーも暴力的。あっさりと問題行動がおき驚かされます。目が回る。
繊細でナイーブな部分も同じ勢いで描かれ、読んでるうちになんのこっちゃかわからなくなって……。

愛や暴力や性や青春やら濃いものがいっぱい詰め込まれた、原色ごった煮の3編でした。
アクが強いし個性的なので、続けて読むと飽きが早いかも。
★★★



  Booksメインへ  TOPへ

異国のおじさんを伴う   .

異国のおじさんを伴う

著 森絵都

文芸春秋
2011/10/15 発行


思わぬ幸せも、不意の落とし穴もこの道の先に待っている。どこから読んでも、何度でも、豊かに広がる10の物語。誰もが迎える、人生の特別な一瞬を、鮮やかにとらえる森絵都ワールド。

感想:
一遍が20ページ程度の短編集。
森さんはやはり短編にて最良の力を発揮されるタイプの作家さんだ、そう確信できる一冊でした。

好きです。
身近なワンシーンをこれほどドラマチックに、美しく昇華できる作家さんが他にいるでしょうか?
どのお話も親しみやすく素朴で軽妙。なのに奥底に驚きを秘め、読むほどに深い広がりと複雑な景色を宿します。
一遍一遍の趣もさまざまで、いちいち楽しめ、心躍りました。
文章の端正さは言わずもがな。
やさしく当たり前の言葉を使いながらも、的確で、時にとぼけた表現が、どこまでも心地いいです。

一番好きな話は、言葉遣いの悪さに最初は拒否反応を覚えた「クジラ見」。「母の北上」と「夜の空隅を埋める」もいい。あぁ、共感を覚えざるを得ない「クリスマスイヴを三日後に控えた日曜の……」ももちろん好きです。

全部好きだ。
★★★★★


  Booksメインへ  TOPへ


1億5千万円の恋 ホストに恋した4年の日々

1億5千万円の恋

著 なお


相手がホストでも、「恋に落ちた」といってゆるされるなら。
私はこの日、恋に落ちた。

お嬢様育ちのOLが選んだ仕事は高級ソープ嬢で……

感想:
横書きの本増えましたね。この本もそうです。
WEBで掲載された日記を書籍化したそうです。
この手の本は敬遠してましたが、タイトルとショッキングな帯に惹かれて手に取りました。

フツーの女の子がホストに溺れて身を落とすという内容。実話だからこそ、重みが違います。最初の一年はきゃぴきゃぴとかわいらしい恋を謳歌してますが、月日がたつごとにねっとりじんわりしてきて……。
恋する乙女が、枯れた熟女みたいになっていく姿は、読んでて怖くなりました。

色々と学ぶところのある本です。
ただ、日記なのでエンターテイメント性は低い。ただただ「しあわせ〜」「せつない……」の繰り返し。ラストではそこに「恨めしい」も加わりますが、まぁ単調です。
後学のためにどうぞ
★★



  Booksメインへ  TOPへ


愛しの座敷わらし

愛しの座敷わらし

著 荻原浩


大切なものは、どこにあるだろう。

東京から田舎に引っ越した一家が、座敷わらしとの出会いを機に家族の絆を取り戻してゆく、ささやかな希望と再生の物語。

感想:
座敷わらしの話ということで、「押入れのちよ」が再登場するのかと思いきや、全く別の話でした。ちよもかわいかったけど、今度の座敷わらしには不気味さが全くなくて、可愛く可憐。癒しパワー持ってます。

ストーリーはいたって重松清的なんだけど、臭くないし、くどくない。親しみやすい家族劇でした。荻原さんらしいユーモアが光り、読むのが楽しかったです。
新聞掲載モノなので、どうしてもだらだらした感は否めませんが、文章が面白いので苦痛ではありませんでした。五人家族それぞれの目線で語られるので、飽きも来づらいです。

でも、もうちょっと座敷わらしに個性や、出番があってもよかったかな。ただかわいらしいだけじゃ、もったいない。
★★★★



  Booksメインへ  TOPへ


いのちのパレード

いのちのパレード

著 恩田陸


恩田ワールドの原点<異色作家短編集>への熱きオマージュ。
ホラー、SF、ミステリ、ファンタジー……クレイジーで壮大なイマジネーションが跋扈する、幻惑的で摩訶不思議な作品集。

感想:
恩田さんらしい、驚きと発見に満ちた一冊。奇想天外で一編一編に個性があり、読書の楽しみが詰まっています。発想が面白くて、いちいち感心してしまいました。

全体的に中途半端な話が多く、消化不良になりがちなんですが、それもまた恩田氏らしさということで納得できてしまうのが不思議なところです。

いろんな意味で、恩田陸全開、な短編集でした。
★★★



  Booksメインへ  TOPへ

 
イルミネーション・キス   .

イルミネーション・キス

著 橋本紡

双葉社
2012/1/22 発行


さまざまなキスのシチュエーションを切りとって描く、温かくて切ない5つの物語

感想:
キスをテーマとした短編集。
九つの、物語」が気に入って、それから橋本さんの新刊はおおむねチェックしていましたが、今回の作品を読んでつくづく苦手だと確信しました。

丹念でやさしい筆致が特徴。きれいにまとまり、さらさらと小川のように流れていきます。正しい日本語が使われているので、躓かされることはありません。それは素直にすごいことだと思えます。
ただどれも薄っぺらいですね。感情的な改行と、行数を埋めるだけのように見える意味のない会話文がストーリーを占めていて、どの話にも厚みが感じられません。ストーリーもおためごかしで、読んでいて辛いです。主人公がぼーっとしていて阿呆そのもの。共感しづらい。これが「ナチュラル」ってやつなのだろうなぁ。

最後の「ハウスハズバンド・キス」は設定にも瑕疵を感じ、意図が見え、とても気持ちが悪かったです。
★★★



  Booksメインへ  TOPへ


IN   .

IN

著 桐野夏生

集英社
2009/5/30 発行


彼は、小説に命を懸ける、と何度も言った。
小説は悪魔ですか。それとも、作家が悪魔ですか?
恋愛の「抹殺」を書く小説家の荒涼たる魂の遍路。

感想:
正直、面白くなかった。
とりあえず伝わるのは「自負」です。

小説家としての強い自負(小説家は他の職業の人より頭ひとつ優れている、という前提で書かれているよう)むんむん。言葉を尽くしてないので余計そう読めてしまいます。ちょっと気持ち悪い。

そして主人公の不倫劇が面白くない。相手の男性の魅力がいっこも伝わらないし、どちらにも共感できない。どこも示唆めいてて、明言を避ける姿勢にも鼻白む思いでした。
女の自負、むんむん?

「無垢人」や○子探しはそれなりに読めました。それと、さすがに文章は流れるようです。

「OUT」から早11年。こんなことでいいのでしょうか?桐野さん。過去の栄光にすがるにはさすがに早すぎます。
★★★



  Booksメインへ  TOPへ


インドなんて二度と行くか!ボケ!!―…でもまた行きたいかも

インドなんて二度と行くか!ボケ!!

著 さくら剛


引きこもりの著者が、ニートの現状を憂い一念発起してインドへ出発。
1ヶ月の間に出会った人々や騙された思い出など、トラブルだらけの道中を、笑いを誘う文章とたくさんの写真で振り返る、新感覚旅行記。

感想:
ずっこけインド旅行記です。ノリノリでインド体験を綴っておられます。
面白い。
インド人の、金の亡者っぷりが面白い。悪徳っぷりが素敵。悪人になりきれない明るさが魅力。
著者との激しくも熱いお金のやりとりも楽しいです。

タイトルはなんだか否定的ですが、読んでいるとだんだんインドに行きたくなってきました。著者の愛ある悪口にはまってみる?
★★★★



  Booksメインへ  TOPへ

   
 
  .

  Booksメインへ  TOPへ




Copyrightc2006毎日・本三昧Allrightsreserved