毎日・本三昧 オススメ小説エトセトラ


毎日・本三昧

ゲゲゲの女房   .

ゲゲゲの女房

著 武良布枝

実業之日本社
2008/3/11 発行


巨人・水木しげると連れ添って半世紀。赤貧の時代、人気マンガ家の時代、妖怪研究者の時代、そして幸福とは何かを語る現在…
布枝夫人にとって、夫と歩んだ人生とは、どんなものだったのか…!?水木しげる夫人が、夫婦の半生を綴った初エッセイ。

感想:
作家さん以外のエッセイを読むのはとても珍しいのですが、鳥取旅行を機に手に取りました。
よかったです。
テレビドラマをやっていたときは全く興味がもてなかったのですが、本著を読んで少し後悔しています。きっとおもしろいドラマだったんでしょうね。だって原案本がおもしろいんですから。見ればよかったなぁ。

さらりとしたいいエッセイでした。
奥ゆかしく慎み深い著者の性格がにじみ出た、あじわいのある文章で綴られます。読みやすく親近感の感じられる筆致は、それだけでほんわりした空気をかもしていました。
語られるエピソードも、どれもいい。
祝言の際、義手がコツリと音を立てたこと、バナナの一件、そして忙しくなったころのこと…。些細で何気ないからこそ、家族のありようが良く見える、そんなエピソードに、こちらまで心が騒ぎました。
昭和初期生まれの女性の結婚観も新鮮ですね。「夫唱婦随」というそうな。勉強になります。

機会があれば、次はドラマを見てみたいな。
★★★★★


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月桃夜   .

月桃夜

著 遠田潤子

新潮社
2009/11/20 発行


想いは人知れず、この世の終わりまで滾り立つ―。死んでもいいと海を漂う茉莉香に、虚空を彷徨う大鷲が語りかける。かつて二百年前の奄美にも、許されぬ愛を望んだ兄妹がいた…。
第21回「日本ファンタジーノベル大賞」大賞受賞作

感想:
江戸時代の奄美大島を舞台にした、奴隷兄妹の愛情物語。

新人でここまで書けたらすごいものです。丹念なリサーチあってのことでしょう。言葉ひとつ、風習ひとつとっても丁寧に描かれており、著者の豊富な知識量がうかがえました。無理なくストーリーに入っていけます。
文章も端的で読みやすい。登場人物のセリフや心情もうまく描けていたかと思います。

ただ、うまいのと面白いのは別でして。
好きかといわれると、私はあまり好きではありませんでした。陰湿な雰囲気も苦手だし、せっかくの南国風情が全く感じられないのも残念。特にストーリーには心が躍りません。ピクリとも。
終盤に入ると途端にご都合主義っぽくなったのももったいないなと感じたところ。登場人物らの心情が急に遠く感じられ、なぜ?と思うところが多かった。

とはいえ、新人さんとしてはすごいことです。
これから腕を磨いて、すばらしい書き手になってほしいです。
★★★


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結婚   .

結婚

著:井上荒野

角川書店
2012/3/30 発行


結婚願望を捨てきれない女、結婚生活から脱したい女…。
サスペンス色に溢れる父・井上光晴氏の同名小説に材を採り、まったく新しい物語を構築した野心的な長編小説。

感想:
上の謳い文句を読んで、なるほどそういう意図があったのか、と知りました。

結婚にまつわる連作短編。
何も知らずに読みはじめたので、「何が起こるんだろう」と序盤はかなりドキドキしました。前作「だれかの木琴」のこともあったので特に期待値は高かったです。
テーマがわかってからは、すんなり落ち着いて読みすすめました。

全体的には閉塞感が占め、明るい話題であっても根底には冷たいものの流れている気配を感じさせる一冊だったと思います。誰も余裕がなくて、矮小で、悲しい。惨め。「結婚」なんてタイトルなのに、ここまで嘘寒い話にしてしまえるのは、やはり著者の腕のなせる業なのでしょう。

ただ、難をいうなら、もう少しなにかほしかった。
じわじわとした雰囲気や、端的な筆致は申し分ないのですが、どうにも芯が細い印象を受けます。
個人的には「男」にもう少しは具体的な魅力を宿してほしかったかな。
★★★★



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獣の樹 (講談社ノベルス)   .

獣の樹

著 舞城王太郎

講談社NOVELS
2010/7/6 発行


ある日ある朝、西暁町で、12歳くらいの僕が馬から生まれる。記憶も名前もない。でも名前なんかいらない、と僕は思う。
失踪した父親。地下密室。獣の大革命。そして恋。混乱と騒動の中、僕は暗い森を駆ける駆ける駆け抜けていく。

感想:
初めて舞城王太郎さんの本を読みました。
昔、話題になったとき手に取ったのだけど、2ページで読むのやめちゃったんですよね。なんでやめたのか忘れたけど、普段絶対にそんなことしないからきっとよっぽどだったんだ、との思いが強くて、ずっと敬遠してたんです。

あぁ、けど面白かった。
爆裂にシュール。その個性的な世界観に丸々呑まれてしまいました。これはすごいね。

馬から生まれた少年がアイデンティティに翻弄されながらも恋に猛進するお話。設定もすごいし、冒頭から飛ばしてます。強烈です。

ストーリー自体は、いい意味でも悪い意味でも、子どもっぽいです。そしてところどころ理屈っぽい。けど面倒な部分はざっくりアバウト。が、嫌な気はしない。

私はそれよりも、文章が気に入りました。シュールなやりとりがツボですし、突飛な設定もするする納得できる説得力がありました。
短い会話文の応酬に改行をいれてないってのも好印象。

読後感は「ぽかーん」。 結構好きです。
★★★★



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