毎日・本三昧 オススメ小説エトセトラ


毎日・本三昧

 
傷痕   .

傷痕

著 桜庭一樹

講談社
2012/1/11 発行


この国が20世紀に産み落とした偉大なるポップスターがとつぜん死んだ夜。彼は51歳で、娘らしき、11歳の子どもが一人残された。娘の名前は、傷痕。多くの人が彼について語り、その真相に迫ろうとする。
偉大すぎるスターの真の姿とは?そして彼が世界に遺したものとは?

感想:
マイケルジャクソンを髣髴とさせる、スーパースターの物語。

桜庭さんは、五章の終盤の孔雀の台詞を書きたくて、この小説を書いたのではないかな。あのスキャンダルについて、黒か、白か、著者がどちらの見解を示すのか気にしながら読んでいましたが、なるほどうまいな、という感じです。

さまざまな人々が、キングオブポップのことについて語っていきます。章ごとに語り手ががらりと変わり、それによってスターの人格が立体感を帯びていきます。
筆力はさすがの一言。丹念で、抜かりがない。全力投球で気持ちのいい書きっぷりですね。
章としては、二章と三章が面白く読めました。
だけどページ数が多すぎますね。後半はかなりだれています。もったいない。
しっかりと読ませてはくれるけど、間延びしていて、いまいちぴりっと胸にきませんでした。
もったいない。
★★★★



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気分上々   .

気分上々

著 森絵都

角川書店
2012/2/28 発行


きっとまばゆい明日が待っているから。
森絵都の魅力をすべて凝縮した、多彩な9つの物語。

感想:
それぞれ長さの違う、寄せ集め的短編集。
寄せ集めなのに、それでもすごくいいと感じるのは、私が森さんを好きだからなのでしょうか。

相変わらず、よかったです。
一遍目の「ウエルカムの小部屋」を読み終わったとき、思わずピューっと口笛を吹きたくなってしまいました。二編目の「彼女の彼の~」もそう。
親身で少し切なくて、でも密やかな希望と活力が垣間見れる、よいお話です。
「東の果つるところ」は冒頭からの「おまえ」発言に度肝を抜かれたけれど、ほんの少しの嫌悪感も、読みすすめるほどにしっくりとき、最後には「おまえ」でしかありえない、と納得させられておりました。見事。
「ブレノワール」も良い。これが一番好きです。森さんの端正な言い回しや語呂選びが、もっとも遊び心をたたえて躍動しているように感じました。ガレットがおいしそうで!
「気分上々」は、ザ・森さん、と言った感じ。これもとっても楽しそうです。

あとがきに、「長編も好きだが短編も好きだ」と書いておられて、それがなんだかものすごく嬉しかったです。
これからも彼女には良質な短編をたくさん書いていってもらいたい。
私の中で森さんは、ベストオブ短編作家さん!彼女を上回り人はいませんから。
★★★★★



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金色の獣、彼方に向かう   .

金色の獣、彼方に向かう

著 恒川光太郎

双葉社
2011/11/20 発行


樹海に抱かれた村で暮らす大輝は、ある日、金色の毛をした不思議な生き物と出合う。ルークと名付けて飼い始めるが、次第に大輝の体に異変が起きてきて……。「樹海」と「サンカ」をテーマに、鬼才が読者を神々の世界に誘う、表題作を含む4編を収録。

感想:
和の魅力あふれる、恒川流短編集。うっすら、ほのかーに、連作です。

相変わらず世界観の出来はかなり良いです。日本美溢れるしっとりとした雰囲気はさすがの一言。
だけどストーリーがね。今回はかなり微妙でした。
一遍目の「異神千夜」はよく練られていて、構成もよかったし、力作に感じました。ですがなにか物足りない。他の三遍はもっとそうで、アイディアは中途半端だし、鋭利さも欠けて、なんだか以前の作品の焼き直しを読ませられているような、ぬるい感じ…。

雰囲気は美人さんなんですけどね。

好きな作家さんなだけに、残念でした。
★★★


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銀色の絆   .

銀色の絆

著 雫井脩介

PHP研究所
2011/11/25 発行


夫の浮気で離婚、娘とともに名古屋へと転居し、無気力な日々を送っていた梨津子だったが、フィギュアスケートの名コーチに見出され、娘を支えることに生きがいを感じ始める。やがて…。フィギュアスケートの世界を舞台に母と娘の絆を描く、著者渾身の長編小説

感想:
女子フィギュアスケートをテーマとしたスポーツものです。
人気とは裏腹に、採点方法にとっつきにくさを感じさせるスポーツですが、小説にするとこんなに面白くなるなんて。

選手の母目線で物語りは進みます。
そのすさまじい献身ぶりに、ただただ唖然、驚愕。シンプルな文章とあいまって、その情熱は読み手すら飲み込んでしまいます。気付くと、こちらまでハラハラドキドキ。ページをめくる手にも力が入りました。
面白すぎて、どうしようもない。

選手の心情はほぼ全くといっていいほど語られません。なのに、努力の結晶が行間ににじみ出ていて、読むほどに息苦しく、胸が騒ぐようでした。
何度泣いてしまったことか。
崇高なものに触れました。読後感もとても良いです。

それにしたって、雫井さんは運の強い人ですね。クローズドノートの「別に」もそうだし、今度の出版だってものすごいタイミングでした。
きっと映像化するでしょうし、売れるだろうなぁ。
★★★★★


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キング&クイーン   .

キング&クイーン

柳広司

講談社
2010/5/27 発行


ある事件をきっかけに警察官を辞めた元SPの冬木安奈。六本木のバー「ダズン」で働いていた彼女に、行方をくらましていた元チェス世界王者の“天才”アンディ・ウォーカーの警護依頼が舞い込む。
依頼者の宋蓮花は、「アメリカ合衆国大統領に狙われている」というが…。

感想:
なんですか、チェス、今流行っているんでしょうか?
最近もチェスを題材にした小説を読みました。→猫を抱いて象と泳ぐ
奥深いチェスの世界に一度はまってしまったら、きっと容易に抜け出せないものなのでしょうね。

さて、本作。
テーマは、チェスとSP(セキュリティーポリス)です。
たぶん売りは、チェスの魅力あふれる世界観と、SPの氷のような完璧な仕事っぷりなんでしょう。
が、残念ながらどちらも不発状態です。チェスについていうと、どこかうすっぺたくて、語れば語るほど空々しいですし、SPのほうも中途半端で全然かっこよくない。
ストーリーもぱっとせず、どっちつかずでした。

最後のほうなんて、いつまで続くんだよーーとうんざりしてしまいました…。だらだらだらだら。

書下ろしって残酷。
★★



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