毎日・本三昧 オススメ小説エトセトラ


毎日・本三昧


ミーナの行進

ミーナの行進

  <文庫>
著 小川洋子


美しくてか弱くて、本を愛したミーナ。あなたとの思い出は、損なわれることがない――
懐かしい時代に育まれた、二人の少女と、家族の物語。


感想:
一年間のお屋敷住まいをすることになった少女の、思い出の物語です。
小川洋子氏らしさ溢れる、控えめなぬくもりに包まれた優しいお話でした。
登場人物たちは派手さこそないものの、愛情豊かな目線で丁寧に個性が描かれています。
安心して読みすすめられる、癒し系でした。

ただ、ちょっと、もう、私は小川洋子氏に飽きてきた。
毎回おんなじような空気感のお話を、おんなじような文章でつづられておられて、もちろんそれを楽しみにしておられるファンの方もいらっしゃるんだろうけど、私はちょっとマンネリ。

でも、本作が安定感のある素敵な小説であったことは間違いありません。
★★★



  Booksメインへ  TOPへ

 
未成年儀式 (Style‐F)   .

未成年儀式

著 彩坂美月

富士見書房
2009/8/25 発行


夏休み、寮に残った七瀬たちを襲ったのは大地震。助けを求められない状況で、何重もの危機で少女らは追い詰められていく。
そして、哀しいまでも純粋な少女たちが見たものとは?

感想:
高校の女子寮を舞台にした、青春ミステリーです。
デビュー作ですから、甘めにいきます…。えぇ、情熱は感じます。

ストーリーは今流行り(!?)の密室パニックものです。そこに不可解な謎や、こんがらがった人間関係がからんでいきます。

ストーリー自体は上手にまとまっています。細かくプロットをたてて書かれているのがひしひしと伝わり、好感が持てました。
文章も、頑張って書こうとしている姿勢が伝わります。

人物像が薄っぺらいので、どのエピソードもどこかで見聞きしたようなものに感じる。
もってまわった表現方法が板についてなくて、ふわふわしている。
大きく言えばその2点。気になりました。

致命的な欠点ではあるものの、小説に対する情熱はとても強く伝わるので期待しています。
きっと若い著者なのでしょう。なんてったってデビュー作。これからがりがり磨いてもらって、すばらしい作家さんになってほしいです。
★★★



  Booksメインへ  TOPへ


ミタカくんと私

ミタカくんと私

  <文庫>
著 銀色夏生


特にこれといった事件も起こらず、毎日は次々とやってきては過ぎていく。
起承転結は人にゆずろう。そして私たちの恋はつづく…。

感想:
こりゃすごい。
このほわほわ、ぼんやりとした空気感ったら。癒し系です。こっちまでのんびりした気分になってきます。
なんでもない日常が描かれているだけなのに、なんでこんなにあったかいんだろう。懐かしい、って感覚に似てるかな。なんだか、とっても、いい。素朴。

ざくっと書かれたいたずら書きのような挿絵(!?)も味があって素敵です。

著者の本は初めてだったのですが、他の本も読んでみたいと思いました。
★★★★★



  Booksメインへ  TOPへ


ミッキーかしまし

ミッキーかしまし

著 西加奈子


テヘラン生まれ、エジプト・大阪育ちの「ミッキー」。
その波瀾万丈、驚天動地、抱腹絶倒の日々。自由奔放なイラストも楽しい脳みそつるつるエッセイ

感想:
大好きな西さんの初エッセイ集です。
相変わらず言葉のセンスがよく、さらさら読めます。笑えます。たまにはっとさせられます。心地よい文章で、いちいち楽しいです。

にしても、西さん。やさしくてほわほわした作風とは異なって、パワフルなお姉さんなんですね。すごい。すばらしい。その意外性にまず笑えます。
大阪の超ローカル話題も、地元民としてはうれしい。「食品館ラピュタ」を活字で見る日がくるとは思いませんでした。
★★★★





  Booksメインへ  TOPへ

 

密室キングダム

密室キングダム

著 柄刀一


有り得ない。有り得ない。
絶対に不可能だ。

本格ミステリーは時代から逃げない。すべての推理小説愛読者に贈る正々堂々たる大長編本格推理!

感想:
なーがーいーーー。
全923ページですよ!もう長いったら。

懐かしさ漂う、館ミステリーでした。トリックは密室。ひたすら密室が活躍します。こだわりはすごいですね。

こんだけながい小説に難をつけるのは気が進みません。これだけの分量、描くだけでも大変だもの。齟齬をみつけて、鬼の首とったみたいにいいたかないです。
けど、布石まるだしのセリフが浮いちゃってたり、文章が仰々しすぎて寒かったり、説明がくどかったりと、あれもこれも気になっちゃって気になっちゃって。
だいたい、殺人計画のバランス悪すぎませんか。
(以下ネタバレ)一つ目の殺人は動機なんかも納得できるけど、二つ目の殺人はいったいなぜおきたの?? 警官殺して、大げさな密室トリックをほどこすほどのリスクを背負ってまで、図面欲しかった? 図面、その後全然活躍してないし、すぐに機械にて隠し通路ばれてるし。 隠し部屋などが発見されるのは犯人らの想定内だったわけでしょう。一生懸命鏡はずして溶かしたりしてるんだから。私が犯人一味だったら、図面なんてほっとけよって言うけど。排気ガスまで引っ張り込んで、なにやってんのって感じ。
だいたい、その図書室での火事、燃え始めがどうこうで〜ってそこそんなに執着するところ?
一つ目の殺人。盲目の二郎さんが、血だらけの一郎さんを棺に収めて、血に触れないように南京錠閉めたりできるんでしょうかね?
三郎さん、一度も行ったことないであろう、春香夫妻のペットショップで、毒蛇の毒を採取だなんてアクロバット、よく引き受けましたね。

(以上ネタバレ)
ふー。
他にも言いたいことはたくさんあるけど、とりあえず思いついたことを書いてすっきりさせてもらいました。
とにかく、雑ではあります。
けど、古い屋敷が舞台の連続殺人、というノスタルジー溢れる雰囲気は魅力的でした。
★★★




  Booksメインへ  TOPへ


三つの名を持つ犬   .

三つの名を持つ犬

著 近藤史恵

徳間書店
2011/5/31 発行


愛犬エルとの生活を綴ったブログがきっかけに、ようやく仕事が入り始めたモデルの草間都。彼女にとって、エルとの絆はあらゆる意味で人生の救いだった。だがある夜、デートから帰るとエルは死んでいた。犬嫌いの男と会っていたばかりに……。

感想:
愛犬家と犬の、サスペンスミステリー。
犬を中心に物語がすすみます。

粗いです。薄いです。残念だけれど、面白くなかったです。
まず人物描写がとてもざっくり。モデル女性もヤクザ下っ端も、なんとなく描かれていて、重みや質感が全く伝わってきませんでした。
心理描写も破天荒すぎてぺらぺら。リアリティーもないし、当然共感もできません。というか、なぜこの場面でそう思う?と疑問ばかり覚えました。

サスペンスだろうに、恐怖感や、焦燥感が全く伝わってきません。
どうしたの?というぐらい、ダメダメでした。
★★


  Booksメインへ  TOPへ

緑の毒   .

緑の毒

著 桐野夏生

角川文庫
2011/8/31 発行


妻あり子なし、39歳、開業医。趣味、ヴィンテージ・スニーカー。連続レイプ犯。水曜の夜ごと、川辺は暗い衝動に突き動かされる。救命救急医と浮気する妻に対する、嫉妬。邪悪な心が、無関心に付け込む時――。

感想:
鬱屈する男性医師とそれを取り巻き、巻き込まれていく女性を描く連作短編。
一遍は約30ページほどで、ぽんぽんと視点が切り替わっていくテンポのよい小説でした。

好きです。
桐野さんは愚かな人を描くのが本当に上手ですね。愚かだけど憎めない。嫌悪感がわかない。魅力的な人々。犯罪モノなのに、犯人すらも嫌いにはなれません。
冒頭のアボガド眼鏡と爪の描写だけで、あぁこの本は面白い、と引き込まれました。

端的でそっけないのに毒がにじむ、からっとした媚びのない文章が気持ちいいです。
登場人物みんなにカラーがあって、短い一遍であっても、生々しく息づいています。
ラストも爽快なら、徐々に縄が縮まっていく感覚も絶妙。

最後の最後まで楽しく読めました。
読んでよかった!
★★★★★


  Booksメインへ  TOPへ


水底フェスタ   .

水底フェスタ

著 辻村深月

文芸春秋
2011/8/25 発行


村も母親も捨てて東京でモデルとなった由貴美。突如帰郷してきた彼女に魅了された広海は、村長選挙を巡る不正を暴き“村を売る”ため協力する。だが、由貴美が本当に欲しいものは別にあった―。
辻村深月が描く一生に一度の恋。

感想:
山間のどかな田舎を舞台にした、濃厚な村社会を生きる清い青年の恋の物語。

辻村さんはどんな題材でも器用に書いてしまうからすごい。
村の地形や風土や仕組みについて、これでもかと細部まで描く丹念さには頭が下がります。しかも、ただの説明文であっても、容易に頭の中で風景が再現されるくらい、表現が端正です。

ストーリーは「年上女に惹かれる男の子の恋物語」にとどまらず、ぐんぐんと色んな意味を帯びて複雑さを増していきます。
テンポの速い展開に飽きる間もなく、のめりこむように読みました。面白い。特に中盤の、甘やかかつミステリアスな雰囲気はすごく好きでした。

惜しむらくは終盤の雑っぽさ。ばばーんと暴かれ転がるように展開する様が、ざっくり荒っぽく扱われており、もったいないなと思いました。特に、辻村さんのよくする「意味不明な大どんでん返し」はここでも健在で、それも主軸がどこなのかわかりにくく、読み終わっても消化不良のままです。
どうしてここにきて集中力が切れてしまったのか。残念。

途中まで息も止まるほど面白かったのに、終わりに近づくほどに色あせてしまった感じ。
でも、人には十分におすすめできる小説です。
★★★★


  Booksメインへ  TOPへ

南の子供が夜いくところ   .

南の子供が夜いくところ

著 恒川光太郎

角川書店
2010/2/28 発行


呪術的な南洋の島の世界を、自由な語りで高らかに飛翔する、新たな神話的物語の誕生!

感想:
和な魅力あふれる恒川さん。本作はいつもとカラーが違います。
南国です。極彩色です。ジャングルです。
そこにはこれまでとは違った恒川ワールドが広がっていました。

うっすらとつながりがある、連作短編です。
どの話も南の香りがして、読み終わると切ない気持ちが残ります。ファンタジーなのに薄ら暗い。そしてファンタジーなのに、なぜか身近。

私は「夜の果樹園」と「十字路のピンクの廟」が好きです。
「夜の果樹園」は”夜の果樹園”が目に浮かぶようだし、「十字路のピンクの廟」はかわいくて良いなと思いました。

ただ、やはり恒川さんには”和”のものを書いてもらいたいなぁ〜。
あのテイストは恒川さんしかできませんもの。
南国カラーになったことで、逆に特徴がなくなっちゃったかな。
次の作品はどうなるのだろう。期待期待。
★★★



  Booksメインへ  TOPへ


未来いそっぷ (新潮文庫)

未来いそっぷ

著 星新一


『アリとキリギリス』『ウサギとカメ』など、誰でもごぞんじの寓話の世界。語りつがれてきた寓話も、星新一の手にかかると、ビックリ驚く大革命。
表題作など、愉しい笑いと痛烈な風刺で別世界へご案内するショート・ショート33編。

感想:
33編!盛りだくさんな一冊です。
短いだと、たった2ページなんて話もあります。ショートショートの醍醐味ですね。
余分な物は極力省かれた、洗練された話ばかり。
どれもニヤリとさせられます。

この一冊の特徴は、古典のパロディが多数収録されている点。星氏の感性が大いに生きているのではないでしょうか。

私は「おカバさま」が好き。カバを重宝するというアホっぽい光景は、何年たっても忘れらない印象的なものです。
★★★★★






  Booksメインへ  TOPへ


みんないってしまう

みんないってしまう

  <文庫>
著 山本文緒


大人になるにつれ、ひとつずつ何かを失くていく。
たとえば恋、信頼、友情だったり…そして残るのは自分。喪失を越え、人はたったひとりの本当の自分に出会う。
かなしくも、いとおしい自分探しの物語。

感想:
シュンとした気分にさせる短編集でした。
テーマはいろんなものが自分の前から去ってしまう寂しさ、でしょうか。
劇的に去る人もあれば、緩やかに去っていく時代もある。潔く捨てたものもあれば、気づけばなくしていた若さもある。
最後の短いあとがきが、この短編集をきゅっとまとめていて、良いです。無性に焦った気持ちにさせられました。

全体的に出来の良い仕上がりになっていると思います。
特に印象的だったのは「裸にネルのシャツ」と「みんないってしまう」。なんてことない話なのに、胸にぐっと迫りました。
おかしかったのは「イバラ咲くおしゃれ道」。こんなおもしろかわいい従姉妹、いいなぁ。
★★★★






  Booksメインへ  TOPへ




  

  .

 

  .

  Booksメインへ  TOPへ




Copyrightc2006毎日・本三昧Allrightsreserved