毎日・本三昧 オススメ小説エトセトラ


毎日・本三昧

幸せになる百通りの方法   .

幸せになる百通りの方法

著 荻原浩

文芸春秋
2012/2/10 発行


「ここではないどこか」「あなたじゃない誰か」はいつも予想外!
恋人が突如「歴女」になってしまった、リストラを家族に言い出せない、不倫の恋の踏ん切りがつかない……そんなあなたのための7つの物語

感想:
ゆるくってちょっと可笑しい短編集。

荻原さんの「ユニーク」は、なにかを貶めて皮肉る笑いでないから好感が持てます。安心して読めます。本著もそう。一遍目が「原発〜」だったから、なんらかのメッセージが込められているのかとヒヤヒヤしながら読み進めましたが、その点はさすがに無色透明ですね。戦中戦後の思い出をライトに語るお婆さんが可愛らしい。
現代を反映した旬のテーマを扱ったものが多かったです。薄く広く。それぞれはちんまりと仕上がっていて、悪くない出来でした。ただ、やはりさよなら、そしてこんにちはにはさまざまな点が及んでいません。

たまに、てにをはの使い方がおかしい気がして、つるつると目が滑ったけど、これはなんだろう…。
★★★



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シューマンの指 (100周年書き下ろし)   .

シューマンの指

著 奥泉光

講談社
2010/7/23 発行


高校3年の春、彼の前に現れた天才美少年ピアニスト。その白く艶めかしい指が奏でたのは、≪殺人の序曲≫だった――。
甘美なる調べ。衝撃の結末。
生誕200周年・シューマンに捧げる、本格音楽ミステリ

感想:
著者の、音楽知識の奥深さにまず驚かされます。ピアニストを目指す少年達の物語。読んでいると、遠くでピアノが鳴っているような錯覚に陥りますよ。

少々クセがあって読みづらけど、味があって引き込まれる文章です。紡がれるのは、真っ白で、美しくて、眩しい物語。
持って回った展開がやぼったく感じたりもしたけれど、語られる音楽論や少年らの奇妙な友情はキラキラ光を放っています。爽やかさとは対極な妖しさを醸していますが、これもひとつの青春小説。
読めばだれでも、修人に心惹かれることでしょう。

かなりコアなクラシックネタがバンバンでてくるので、そっち方面に明るい人にはより楽しい一冊だと思われます。
興味のなかった人もきっと、youtubeなどで聞いてしまうこと請け合い。

ラストも良い。
★★★★



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女中譚   .

女中譚

著 中島京子

朝日新聞出版
2009/8/30 発行


昭和初期の林芙美子、吉屋信子、永井荷風による女中小説があの『FUTON』の気鋭作家によって現代に甦る。
レトロでリアルな時代風俗を背景に、うらぶれた老婆が女中奉公のウラオモテを懐かしく物語る連作小説集。

感想:
小さいおうち」のおかげで、中島さんというと昭和初期、というイメージを定着したような気がしますが、これは小さいおうち以前に発表された連作短編。
タイトルどおり、かつて女中をしていた女性が主人公です。

とにかくモダーンでハイカラ。
はすっぱでたくましい女性が旺盛に世を渡っていくのですが、この主人公女性、行儀のいいお嬢様などではないから、行動が読めなくて面白い。さばけた様子も気持ちがよくて、読むほどに清々してくるから不思議です。
特に「ヒモの手紙」は好きでした。意地悪心理もすんなり胸に入って共感させてしまうのだからすごいなぁ。

やはり書き方はうまいです。
説明的にならず、要所要所で力が抜けていて、場面の雰囲気がよく伝わってきます。短い文章の中にこれほど意味を込められるのはあっぱれの一言。
★★★★

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白い花と鳥たちの祈り   .

白い花と鳥たちの祈り

著 河原千恵子

集英社
2010/2/28 発行


居場所のない中学生と仕事の出来ない郵便局員。
子供でいられない子供達と、大人になれない大人達の出会い。

感想:
デビュー作だというから驚きです。レベル高いですね。

アダルトチルドレンに近い少女と、発達障害っぽい青年の成長物語です。
生きていくのに大変そうな彼らを見ていると、読んでいるこちらまで息苦しくなってきます。
分厚い本です。どう二人が変わっていくか、ゆっくりと見守ります。

文章はとてもナチュラルで力みがなく、読みやすかったです。
展開はすこしのんびりしてるなと感じます。論点がどこなのかつかみづらい。ですが、おおむねスムーズですね。文章同様、さらさらと流れるように進みました。
こういうストーリーにありがちな、くっさくさな状況にならなかったのも好感度大。べたついていませんよ。

次の作品が楽しみな作家さんがまた一人増えました。
★★★★



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新月譚   .

新月譚

著 貫井徳郎

文芸春秋
2012/4/10 発行


美人ベストセラー作家は、なぜ突然絶筆したのか?
突然筆を折ったベストセラー作家・咲良怜花。執筆復活を願う編集者に対し怜花が告白した衝撃の物語。甘美で残酷な究極のラブストーリー

感想:
加納朋子さんの闘病記に触発され、久しぶりに旦那さんの著作に手を出しました。
ある女性がベストセラー作家に上り詰めるまでを、一途な愛を絡めて語ります。500ページあまりの大作でした。

簡潔な文体でさらさらと読ませます。込み入った描写がなくて、大変読みやすいと感じました。ストーリー自体も単純で、難しいことを考えずに読みすすめることができます。

ただ、分量に反して内容は決して濃くありませんでした。端的すぎる文体のせいで情緒がそがれ、主人公の圧倒的な熱が真の意味で迫ってきません。木之内木之内…、ずっと言い訳を聞かせられているかのよう。エピソードを半分に削ってでも、一つ一つのやりとりを丁寧に描写したほうがよかったのでは。結局のところ私は、恋人の魅力もうまく納得できませんでした。

ストーリーにもご都合主義がちらりと匂います。
いかにも男性が好みそうな主人公女性のあり方に、首を捻ることしきり。
特に最後の最後の写真の件は、本気で嫌がらせだとしか感じられません。
★★★



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新参者   .

新参者

著 東野圭吾

講談社
2009/9/18 発行


もう、彼女は語れない。彼が伝える、その優しさを。悲しみを、喜びを。

日本橋の一角でひとり暮らしの女性が絞殺された。着任したての刑事・加賀恭一郎の前に立ちはだかるのは、人情という名の謎。

感想:
もう東野圭吾氏は『小説』をお書きにならないのかと思ってました。
だからなおさらうれしいです。 あぁ、おもしろかった〜。

ミステリーです。ひとつの殺人事件をめぐる悲喜こもごもを連作短編としてつづっていきます。

よく出来ています。
きちんとストーリーが練られているんです。書き出す前に精査されたのでしょう。とても端正。
ばらばらだったパズルが徐々に組みあがっていくのを眺める快感はなにものにも勝ります。とても気持ちがいい。
アラなんてひとつもなくて。

ストーリー自体も、通り一遍でない人情があり、殺人事件の物語だっていうのにほっこりやさしい気持ちになれました。

そして読みやすい。東野氏の文章はほんと不思議。無個性で上手。するするとつまづくことなく頭に入ってきます。

とても楽しめました。文句なし。
うまいなぁと何度もうならされましたヨ。次もこういうの頼みます!東野さん。
★★★★★



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