毎日・本三昧 オススメ小説エトセトラ


毎日・本三昧

ダークゾーン   .

ダークゾーン

著 貴志祐介

祥伝社
2011/2/20


神の仕掛けか、悪魔の所業か。
地獄のバトルが今、始まる!
戦え。戦い続けろ。

感想:
よくわからない不思議空間で、将棋をもとにしたバトルをするお話。ホラーファンタジーです。
貴志さんはこういうの好きだよね〜。と思いながら読みすすめました。

出てくるバトルの仕組みはほんとよくできています。微に入り細を穿つとはまさにこのこと。現実にあるゲームを説明しているような精巧さで描写される上に、矛盾もなく、クオリティーはかなり高いです。
バトルシーンもおもしろくて、まるで目の前で火花が散っているみたい。自分が戦いの渦中にいるかのようでした。

もったいないなぁと思ったのは、バトルが何度もあるので途中から飽きてくるのと、思い出として描かれるリアル生活が微妙なところでしょうか。
ゲームの性質上、バトルが何度もあるのはしょうがないにしても、バトルと交互に描かれる思い出編に感情移入しづらかったのは、ちょっと悲しいですね。特に終盤は、前半に散々気を持たせらていたこともあり、がっかり感が強かったです。

軍艦島はかっこいいし、バトルもダイナミックだし、男の子の小説だなという印象です。
出てくる女は馬鹿&ウザイのばかりですし
(貴志さんは女性になにか思うところがあるのだろうか…)
★★★★
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体育座りで、空を見上げて

体育座りで、空を見上げて

著 椰月美智子


「大人の階段を昇るのって、すごくしんどい。」

五分だって同じ気持ちでいられなかった、あの頃。
中学生時代の出来事を通して読者を瞬時に思春期へと引き戻す、おかしくも美しい感動作!

感想:
1980年代前半に中学生をやってる主人公が、思春期に振り回される、等身大の青春モノです。
懐かしい人は、きっと懐かしいのだろうなぁ。曲とか芸能人とか、そーゆーの。
私は年代ずれてるので、そのあたりはピンときませんでしたが、中学生特有の感覚には「そうそう」と頷きながら読ませてもらいました。この感覚、懐かしい。

まんま、中学生の日記を読んでるようです。
ほんとうにこの子がいるよう。すぐ隣に。そして、グチグチブーブー言ってるみたい。
ただ、リアルな日常描写ができてるぶん、エンターテイメント性は低く、面白みにはかけます。特に文章が秀逸なわけでもないし。

ただひたすら、懐かしい一冊でした
★★★



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退出ゲーム

退出ゲーム

  <文庫
著 初野晴


チカは高校一年生、弱小吹奏楽部に在籍。ハルタは女の子のように整った顔立ちで、同じく吹奏楽部員。
二人揃って顧問の教師が初恋の人なのだが……

高校生ならではの謎と解決が冴える、爽やか青春ミステリの決定版。

感想:
かわいらしくて、ベタだけど安定感のある青春ミステリーでした。

表紙のように初々しくて爽やかです。
登場人物らがきゃぴきゃぴと楽しげなのがいいですね。ザ・青春してます。

ミステリ要素がちょこっとヘビーめなのがこの本の特徴かな。高校生が立ち向かうには多少重い。けど、最後にはさくりと解決されるので、読後感はよいです。

それと、ネタが面白いです。「退出ゲーム」の退出ゲームとか、「エレファンツ・ブレス」の枕のアイディアとか。
深い知識が小出しにされていて、それに対する興味もわきました。

続きそうな予感。続編が出たら読んじゃう。
★★★★



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太陽の坐る場所

太陽の坐る場所

著 辻村深月


卒業から10年。高校の同級生たちはいま

クラス会で再会したメンバーは、次こそ女優になった同級生「キョウコ」を呼ぼうと話し合う。青春時代の苦すぎる思い出を抱えながら……

感想:
うまい。とても上手にまとまった、連作短編です。連作短編のくせに(!?)ばらばらしてません。全部まとめて一本の作品にちゃんとなってます。こういうのって実は珍しい。だから、驚きました。

ストーリーは辻村さんお得意の、苦くて苦い青春モノです。
弱く気高く幼い登場人物らが、章ごとにそれぞれの心境を吐露します。
各々の思い込みや浅ましさが、これでもかと暴かれていくわけですが、一章ずつの読後感は不思議に爽快。章が変わるごとに、人間臭い登場人物らをいとおしく感じるようになりました。
そして最後まで読み終わって、すごいなぁちゃんとまとめてくるなぁと感心した次第です。

ちなみに終盤でちょっとしたサプライズがあるのですが、これは別になくてもよかったという印象。ただ、混乱を呼んだだけでした。
★★★★



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他諺の空似   ことわざ人類学   .

他諺の空似

著 米原万里

光文社
2006/8/30 発行


歴史も地理的気候的条件も、従って文化も全く異なるところで、同じ文句が同じ意味に使われているとは、奇跡以外の何ものでもない、と興奮してしまう…。
米原ワールド炸裂の遺作。

感想:
とにかく驚いたのは、米原万里さんがお亡くなりになっていたこと…。
嘘つきアーニャの真っ赤な真実以来ファンで、機会があれば他の作品も読まねばと思っていたんです。もう新作が読めないなんて、とても残念。

遺作です。
諺にまつわるグローバルな読み物(エッセイ?)。世界中の諺がとりあげられているので、読むほどに壮大な旅をしているような気分になりました。世界は広いけど、人間はどこにいても同じような感性なんだなぁとしみじみ。

そして、唐突に始まる政治批判。的確かつ正確、わかりやすく皮肉たっぷりに、とにかく言葉を尽くして語っておられます。その豊富な知識と文章力には脱帽。あまりの小気味よさに、やじりたくなりますね。いいぞいいぞ〜。そうだそうだ〜(国会風)

1篇10ページに満たないですが、たくさんの要素がぎゅっと濃縮しています。
米原さんの明るく博識な人柄もむんむん伝わります。 だから、寂しい。
★★★



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たぶらかし   .

たぶらかし

著 安田依央

集英社
2011/2/10 発行


第23回小説すばる新人賞受賞作!!
マキは、市井の人々の中で誰かの「代役」を演ずる役者。花嫁や母親の代行から、果ては死体役まで・・・。依頼人たちの身勝手さに苛立ちながらも、淡々と仕事をこなしていたマキの前に、ある日、謎の男が現れて・・・。

感想:
誰かの代行をする女役者が主人公。人をたぶらかし、たぶらかされて、たゆたいます。
新人賞受賞作ということですのでやさしく評価したいけど、どうにも苦手な小説でした。

まず文章の癖が強い。そしてあざとい。片意地張っているし、いちいち語尾にひっかかりを感じて、内容が頭に入りにくかったです。段落の位置もいまいち変。
人物像も迫ってくるものがなく、誰もが画一的で、面白みや深みに欠けます。
ストーリーもこじんまりと当たり前な展開で、読んでいて楽しいとは思えませんでした。

ただ、テーマはいいように思いました。一般人相手の代役業って発想はおもしろいし、テーマがテーマなだけに何話でも書けそうです。
あとは基本的なセンスだけですね。磨けばどうにかなるでしょうか…。
★★


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ダブル・ジョーカー   .

ダブル・ジョーカー

著 柳広司

角川書店
2009/8/25 発行


結城率いるD機関にライバル出現。その名も風機関。
「躊躇なく殺せ、潔く死ね」を徹底的に叩き込まれた風機関がD機関を追い落としにかかるが……。

感想:
きゃー! ですよ。 もうかっこよすぎます。すべてが!

ジョーカーゲーム」の続編にあたる本作品。連作短編です。
とても面白かった。ずっとゾクゾクしっぱなしでした。

今作の特徴は、視点が遠いって事ですかね。スパイにはめられる人や、スパイに操られる人たちの視線で語られるので、スパイらの完璧な仕事っぶりがさらに浮き彫りになるんです。
見えてこないのに、この強烈な存在感! 魅力むんむんです。とにかくクールでかっこいい。

続くのでしょうか。
最後の最後、とても印象的な終わり方でした。続きが読みたい!
★★★★★



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たまさか人形堂物語

たまさか人形堂物語

著 津原泰水


小さなお店に今日も謎と人形がやってくる!

テディベア、お雛さま、ビスクドール……。大切な想いがつまってる。

感想:
人形修理屋を舞台にした、プチミステリー連作短編でした。

舞台が舞台だけに、さまざまなお人形が登場します。それぞれが奥行き深く、門外漢の私には目新しくて、それだけでも十分楽しく読めました。
お人形って、とっても奥が深いんです。

ミステリーとしてはさほど上等とはいえません。
が、でしゃばらない登場人物らには好感を覚えましたし、文章のリズムもいい。

最初から最後まで人形尽くしで、しかも魅力的に描かれ、わくわくしました。特に「最終公演」なんて、オチまで素敵で……。

続編が出たら絶対に読みたいです。
★★★★



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タルト・タタンの夢 (創元クライム・クラブ)

タルト・タタンの夢

著 近藤史恵


ビストロ・パ・マルへようこそ。
絶品料理と極上のミステリーをご堪能あれ!

客たちの巻き込まれた不思議な事件や不可解な出来事。その謎を解くのは、シェフ三舟。

感想:
居心地のよさそうなビストロを舞台にした、連作短編ミステリーです。

謎はかなりささやかなものです。
本作の魅力は、とっても美味しそうな料理たちでしょうか。
それぞれのタイトルを読むだけで、どんな料理がでてくるのかワクワクします。いつの間にかお客さんの気持ちになって、一つ一つの料理に幸福のため息をうつ……。

飾らない気楽なお店の雰囲気も満点。
続編が出るとの事。今から楽しみ。
★★★



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誰かが足りない   .

誰かが足りない

著 宮下奈都

双葉社
2011/10/23 発行


足りないことを哀しまないで、足りないことで充たされてみる。注目の「心の掬い手」が、しなやかに紡ぐ渾身作。偶然、同じ時間に人気レストランの客となった人々の、来店に至るまでのエピソードと前向きの決心。

感想:
評判のレストランを軸に、茫漠とした「誰かが足りない」との寂寥感に悩む人々が、解決策を模索する、日常系連作短編です。

「曽祖父の五十回忌だったか、もうあまり悲しみのない法事だった」
本著は、この一文に集約されているといっても過言ではないかもしれません。要するに、当たり障りのない、遠慮のある、平らかな本。ストーリーも、描写も、雰囲気も、言い回しも、どれもそうです。上っ面だけをひらひらへらへらすくい取って、それだけで満足してしまっている。
喜びもなければ、毒もない。読んでも読んでも心が騒がない。
ただただ、言葉の並びとか、書きやすさとか、テンポとか、読みやすさだけを考慮した文章でした。

一遍や二編ならいいですが、六編も続くとさすがに苦痛です。
日本語はきちんとしているのに、なんだか日本語を冒涜されたような気分…。中身のなさがそう思わせるんでしょうか。
この作家さん、私には合わないようです。

にしてもこの内容でこのページ数で1200円は、高すぎないかね。
★★★



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だれかの木琴   .

だれかの木琴

著 井上荒野
幻冬舎
2011/12/10 発行


どうしてわかってくれないのだろう。私はあなたが大好きなだけなのに。
主婦の小さな失望が、日常を静かに歪めていく。直木賞作家の待望の最新長編小説!

感想:
なんでもない専業主婦の、だけどいびつな物語。

面白かったです。
読み始めは、少しの変化に心を砕く純文的地味展開なのかと思って退屈しもって読んでいましたが、どんどん予想外のところへストーリーが行ってしまい、見事に引き込まれました。
どこもかしこもうまいです。ちょっとびっくりするような展開なのに、登場人物の心情がするりと理解できて、不信感なく受け入れることが出来ます。誰の気持ちにも違和感がありません。そして、こんなストーリーなのに、誰にも嫌悪感を覚えません。

当然のように筆致は美しく、繊細で絹のようにすべらかです。
特に「隣のラジオの音」のくだりは端正でいっそ幻想的。読み手の私ですら、彼らと同じようにすっぽりとくぐもった音に覆われたような心地になりました。

最後の最後までいい。面白かった!
★★★★★



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