毎日・本三昧 オススメ小説エトセトラ


毎日・本三昧

小さいおうち   .

小さいおうち

著 中島京子

文藝春秋
2010/5/27 発行


昭和初期、ある一家の忘れがたい、秘めた恋の物語

女中奉公の記憶を綴るタキの胸に去来する、昭和の家庭風景と奥様の面影、切ない秘密。そして物語は意外な形で現代に繋がり……

感想:
第143回直木賞受賞作品。
戦前、女中として小さいおうちに奉公していた女性の回想物語。
当時のことが生き生きと楽しげに、リアリティーをもって描かれています。

ささやかな出来事の連続でストーリーはすすみます。
まず、小さな物事に心を砕く主人公のありようがいい。すがすがしい。
まるで見てきたように語られる、当時の風景・様子もいい。とにかく自然で無理がなくて、読むほどに愛しさをかきたてられます。
そしてそしてラストがまたいい。それまでのぼやぼやした雰囲気を、最後でぎゅっと上手に締め上げて、きちんと作品にカラーをつけた感じ。

地味な装いではありますが、味わい深い作品でした。
読み終わってみると、表紙にすら愛着がわいてきます。
心に残る良著。受賞、納得です。
★★★★★


  Booksメインへ  TOPへ

 
地下の鳩   .

地下の鳩

著 西加奈子

文芸春秋
2011/12/10 発行


特別な何かを求め、人々はミナミに集う
大阪、ミナミの夜。キャバレーの呼込み男、素人チーママ、イロモノのオカマ。行き場のない思いを抱えて懸命に生きる人々を描いた力作

感想:
大阪を舞台にした、夜の住人の悲喜こもごも。登場人物はそれぞれ一癖も二癖もあります。

二編からなっていて、ページ数の配分からいっても表題作の「地下の鳩」がメインの位置づけなのでしょう。
あまり好きではなかったです。もちろん文章はほとんどアートの域で、職人の仕事を見ているようなのですが、ストーリーがどうしてもだめでした。面白い面白くないというレベルでなく、興味がもてなくって。主軸の二人のあまりに細かい心のやり取りに関心も共感もできず、魅力も感じず、そうなってしまうと二人の展開など「どーでもいいんですけど」という感じになってしまい、視点の変化もうんざりして、読むのが大変でした。これは完全に私側の好みの問題かもしれません。

「タイムカプセル」のほうが断然好きです。
主人公のオカマに共感しやすいし、するするストーリーが入ってきました。
もともと文章は均整がとれているのだから、こういう無難(?)なものを書いてくれれば十分私は満足できるのです。

西さんは初期の頃の作風のほうが好きだったなぁ。もう、戻る気はないんでしょうね…。
★★★


  Booksメインへ  TOPへ


乳と卵

乳と卵

  <文庫
著 川上未映子


姉とその娘が大阪からやってきた。
三十九歳の姉は豊胸手術を目論んでいる。姪は言葉を発しない。
そして三人の不可思議な夏の三日間が過ぎてゆく。
第138回芥川賞受賞作。

感想:
いろんな意味で、芥川賞をとりそうな作品だなぁと感じました。
だらだらとしたオチのなさ加減、徹底してます。

まず「乳と卵」ですが。
文章の特異さに驚きました。クセがすごい。リズム感があるんだかないんだか。ぽんぽんと読めるんだけど、読みやすいってこともないし…。不思議な世界です。
内容はシュール。そして薄いです。でも、たまにハッとさせられる一言があったりして、良センスを感じさせます。最後の一文も印象的でした。

「あなたたちの恋愛は瀕死」は、一言。ノイローゼ。

この内容で、ここまでページ数稼げることがまずすごいなぁと感心しました。
でも、この人の文章だと、すぐに飽きられちゃうかも?
女優に転向するらしいですが、それがいいかもしれません。
★★★



  Booksメインへ  TOPへ

 
眺望絶佳   .

眺望絶佳

著 中島京子

角川書店
2012/1/31 発行


自分らしさにもがく人々の、ちょっとだけ奇矯な日々。客に共感メールを送る女性社員、倉庫で自分だけの本を作る男、夫になってほしいと依頼してきた老女。中島ワールドの真骨頂!

感想:
東京の空の名所、スカイツリーと東京タワーにまつわる連作短編集。
一遍は20ページほどと、大変に短いです。

ひどいマジックを見ているような心地で読みました。
「眺望よし往信」と「アフリカハゲコウの唄」と「キッズのための英会話教室」とぎり「眺望よし復信」は読むに値しました。特に「キッズのための英会話教室」は本の終盤に収録されており、思う存分辟易したところに出てきたこともあって、面白く読めました。ふわふわと夢のような描写の中、最後の台詞ががつんと色濃く、印象的です。

ただ、それ以外のものは…。著者の魅力である、たくみな文章さばきは見ることが出来ませんでした。「倉庫の男」などは、あまりのことに愕然。著者の体調が優れなかったのか、どうしても時間がとれなかったのか…。だけどどちらにしても、一冊の本として編集する際、多少の加筆修正は加えるものでしょう?どうしてこのままゴーサインだしちゃったのか。不思議すぎます。もしかして私の知っている中島京子さんとは別に、同姓同名の作家がいるのか…。まさか!

直木賞をとった後だからといって慢心せず、文学と向き合って大切に作品を作っていってもらいたいものです。単行本1500円ですよ。悲しいです。
★★★



  Booksメインへ  TOPへ


調理場という戦場 ほぼ日ブックス (ほぼ日ブックス)

調理場という戦場

著 斉須政雄


あの繊細で優しい料理のつくられる場所は、それこそ命がけの工房だった。

日本じゅうすべての「働く人たち」の明日の勇気のために、この本を捧げます。

感想:
なんだか評判がよかったので読みました。料理人の本だけど、どんな人が読んでも共感の嵐だとか。

うーん。え、なに?
私は小説かと思って手を出したので、それが失敗でした。
エッセイ?指南書?ノンフィクション?普段私が読まないジャンルです。
正直申しますと、きびしかった。
それこそ「調理場という戦場」的な怒涛の仕事風景が描かれることもなく、フランスでの出会い喜び悲しさ辛さが描かれることもなく、料理の描写もなく、ただひたすら、教えを説いていらっしゃる。
ここで働いて「こういうことに気づいた」、次ここで働いて「自分のここがよかった」。ストーリー性ゼロで、なんというか、息苦しい。クドイ。
こういうものなんでしょうけどね、このジャンルの本って。やはり私には合わないと再確認。

門外漢なので、評価はしないでおきます。




  Booksメインへ  TOPへ

 
 
  .
  Booksメインへ  TOPへ


Copyrightc2006毎日・本三昧Allrightsreserved