毎日・本三昧 オススメ小説エトセトラ


毎日・本三昧


誘拐児   .

誘拐児

著 翔田寛

講談社
2008/8/6 発行


第54回江戸川乱歩賞受賞作
終戦翌年の誘拐事件。身代金受け渡し場所、闇市。犯人確保に失敗。そして15年後、事件がふたたび動き出す――。人間の非情と情愛を見つめる魂の物語。

感想:
昭和初期を舞台にしたサスペンスミステリー。
終戦後すぐに起きた誘拐事件と、その15年後におきた殺人事件がシンクロします。

とにかく時代背景が見事です。とても丹念に当時の日本が描けていると感じました。特に昭和21年の誘拐事件における描写はとても念がいっていて、重く、分厚く、身に迫るようです。これはすごい。

ストーリー展開には若干の無理が感じられました。もしくは説明不足を。終盤は完全にご都合主義で、さらにはオチが見えてしまっています
刑事ら4人のキャラクターがないため、誰が誰やら途中でわからなくなりました。

とはいえ、全体的にはよくまとまっています。こなれた文章さばきで癖もなく、読みやすいのもよかった。端的でサクサクすすむので飽きることもありません。

新人賞でこれなら万々歳では?
と思って調べてみたらこの著者、これ以前に何冊か本を出しているんですね。
なるほど、納得。
★★★


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哀愁の田町遊廓浜田楼   .

遊廓浜田楼

著 鈴木ナミ

文芸社
2005/6/15 発行


そこには堕ちることしか許されない女たちがいた-。飢えと恐怖、爆弾の雨降る中、必死に生きた少女の叙情詩。八王子田町遊郭にまつわる秘話の数々を収録。

感想:
雅な表紙につられて手に取りました。
戦中、戦後の著者の体験が綴られています。遊廓の楼主と顔見知りだったことから、遊廓のこともちらほらとでてきます。よってこの表紙、タイトルなのですね。

現代とは別世界のような時代に青春をすごした著者の、苦労、恨み、悲哀、そしてささやかな楽しみのつまった一冊でした。大変な時代にも明るさを失わない著者の、好奇心や探究心がキラキラと輝きます。
遊廓で見聞きしたエピソードもドラマチックで面白い。

あの時代のことを語り継ぐ人も少なくなってしまいました。
こういう本は貴重ですね。
★★★


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夕暮れのマグノリア

夕暮れのマグノリア

著 安東みきえ

夕暮れ時、静かに目をこらして。ふしぎな世界はすぐそばにある。
女子中学生・灯子の感受性がつむぐ、やさしさと不思議さに満ちた一年間を、美しく巧みな筆致で描く。

感想:
中学生の日常を、デリケートに、色鮮やかに、ちょっとファンタジックに、描いています。
たまにピリリとしてるんだけど、全体的には丸い印象。主人公の感性がおもしろいです。幼くて素朴で気持ちいい子。

地味で、ちょっとぱっとしないんだけど、悪くない
★★★



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ユージニア

ユージニア

  <文庫>
著 恩田陸


遠い夏、白い百日紅の記憶。死の使いは、静かに街を滅ぼした。知らなければならない。あの詩の意味を。あの夏のすべてを。

あの夏、青沢家で催された米寿を祝う席で、 十七人が毒殺された。
ある男の遺書によって、一応の解決をみたはずの事件。町の記憶の底に埋もれた大量殺人事件が、年月を経てさまざまな視点から再構成される…

感想:
なんともすわりの悪いラストをむかえて、あぁ、もやもやする。
すっきりカラッと解決しないのが、この小説の良さ、なのでしょうか。
私はきちんと答えを出してほしい人なので、こーゆーのはどうもお尻がムズムズします。どーゆー事なのか、きちんと説明がほしい。

インタビュー形式で話が進行していきます。「Q&A」を思い出しました。
「Q&A」の方は小説というよりも、事件のルポという感じが強かったのですが、こちらはちゃんとした「お話」になっています。

とっても緻密に丁寧に描かれていてリアリティがすごかった。
夏のじわっとした暑さや、どしゃぶりの雨の匂いや、祝いに湧く人々の喧騒が、うわぁっと目の前に広がります。これはお見事。没頭して読めました。
★★★★



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幽霊人命救助隊

幽霊人命救助隊

著 高野和明


自殺者の命を救え! 浮かばれない霊たちが、天国行きと引き替えに人名救助隊を結成、地上に舞い降りた。救うべきは、100人の命…。
怒涛の人命救助エンタテインメント。

感想:
とてもおもしろかったです。
可笑しいのに、何度もナミダナミダ。久々に気持ちよく泣けた作品でした。

幽霊四体が、自殺志願者を助けていくお話です。
設定も展開もユーモラスで、とっても読みやすいです。小難しさが取っ払われているので、スルスルと読み進められます。

それでも、取り上げられている問題は深刻だし多種多様。
自殺、リストカット、うつ、いじめ、病苦、経済苦etc…
これらを重すぎず、でも軽くなく、絶妙な描写で解決していきます。著者はすごい!

後読感は最高でした。生のありがたみが身にしみた本です。是非!
★★★★★



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ゆくとし くるとし

ゆくとしくるとし


著 大沼紀子


年末帰省すると、そこには母とオカマがいた。そんな我が家の風景に違和感を覚えながらも、明るくたくましいオカマと母の変わらぬ愛で、閉じこもりがちな感情が開いていく…。
第9回坊っちゃん文学賞大賞受賞作。

感想:
ナチュラルでやさしい一冊です。
ほっこりできる「ゆくとしくるとし」と、まっさらな「僕たちのパレード」 どちらも素敵ないいお話でした。

言葉のセンスが良い。随所に笑いがあってうまい。甘い中にもピリリと毒もあって、配分が絶妙。
デビュー作とは思えないくらい、安定感があります。
ただ、あと一歩、なにかほしいところ。なにか足りない感じ。なんだろう。
次の作品が楽しみです
★★★★



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夢うつつ   .

夢うつつ

著 あさのあつこ

東京書籍
2009/9/8 発行


著者が初めて試みたエッセイと小説による短編集。
平凡な日常の出来事がつむぎだすファンタジックで不思議な6つの物語

感想:
エッセイ半分、小説半分。読み心地軽い、気楽な短編集でした。

文章に人柄が表れてます。親しみやすいおばちゃん(失礼!)な等身大の姿に、あさのさんのことがぐっと好きになりました。

エッセイと小説と。一冊にしてしまうと、どちらも半端でどっちつかずな気もしますが、この徒然感を楽しむのも一興かな。これぞ小説家のエッセイ…なのかもしれません。

あさのさんのファンなら、買いです。
★★★



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夢のカルテ

夢のカルテ

著 高野和明 阪上仁志


あなたを苦しめている夢を、私に見せて―
夢の力を信じた二人の愛のファンタジック・ミステリー

銃撃事件に遭遇した麻生刑事は、夜毎の悪夢に苦しめられていた。心理療法を受けようと決意した彼は、来生夢衣という不思議な雰囲気をたたえた女性カウンセラーと出会うのだが…。

感想:
他人の夢の中に入る力をもつ女性カウンセラーと、重要事件を追う刑事のお話です。
ファンタジッーが読みたくなったので手に取りました。装丁が素敵です。

が…はっきりいって面白くなかったです。
ノリが甘いというか少女趣味というか。子どもっぽいのです。
なぜそうなる?どうしてそこで悩む? 主人公たちの心理が幼稚で、共感ができませんでした。
ミステリー要素も極薄です。すぐにトリック(といえるのか?)がわかってしまい、発見も驚きもありません。

根本的に文章能力がないのでは…と読み終わった後に著者名を見てみたら、なんと高野和明氏じゃありませんか!もうびっくり!「13階段」や「幽霊人命救助隊」の高野さん!?マジで!?これぞミステリー!!
…お腹でも痛かったのかなぁ。
★★



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夢見通りの人々

  <文庫>
著 宮本輝


今日も埃が風に舞う夢見通り商店街―。
そこに住むのは、名称とはうらはらに、ひと癖もふた癖もある人たちばかり。
そんな彼らが、ふと見せる愛とやさしさを通して、それぞれの心に秘められた“大切な思い”を描き出す。

感想:
なんとなくタイトルに惹かれて読んでみました。
かわいらしい名前からは想像できないほど、人間味溢れる生々しい連作短編でした。あぁ、こんな内容…、大阪の人間が誤解されるじゃないか!

舞台は大阪のとある商店街。夢見通り、という名に似合わず、住んでる人々はあこぎで自己中な、自分に正直な人が多い。
そこで巻き起こる人間模様は、美しいとは言いがたいけど、へんな共感を覚えるものばかりなのです。

人間の暖かさや優しさ、そして計算高さややりきれなさ、二色が味わえる、商人人情ドラマでした
★★★



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夢見る黄金地球儀   .

夢見る黄金地球儀

  <文庫>
著 海堂尊

東京創元社
2007/10 発行


「久しぶり。ところでお前、1億円欲しくない?」

首都圏の端っこに位置する桜宮市に突如舞い込んだ1億円。だがその金は黄金をはめ込んだ地球儀に姿を変え、今では寂れた水族館にひっそり置かれているだけとなった――はずだった。

感想:
なんだこりゃ。海堂さんには裏切られっぱなしです。

医療小説では「チーム・バチスタ〜」を超えられない海堂さん。そろそろ路線変更したほうがいいのではと思っていたので、この小説は期待してました。コメディータッチの強盗ものですか。面白そうじゃないですか。

文章はお上手で大変流暢。流れるようにストーリーが展開していくので、読みやすいっちゃー読みやすい。
けど、なんでしょうね、この上滑り感は。面白おかしく描かれているのですが、面白くない。笑えない。ストーリーもムリムリギチギチで、不自然。
ちょいちょい出てくる、ネーミングセンスなんかはうまいのに、活きてないんですよね。もったいない。

この路線もNGですね
★★



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夢を与える

夢を与える

著 綿矢りさ


チャイルドモデルから芸能界へ。幼い頃からテレビの中で生きてきた美しくすこやかな少女・夕子。ある出来事をきっかけに、彼女はブレイクするが…。
成長する少女の心とからだに流れる18年の時間を描く待望の長篇小説。

感想:
綿矢さん、がらっと作風変えてきましたね。若くて軽い感じがなくなり、普通にちゃんとした小説然としてます。これからはこっちの線でやってくのかなぁ。なんかちょっともったいないような気も。

さて、一人の少女が芸能界で成長していく物語です。
順調に階段を上っていく姿は華やかで輝かしいはずなのですが、どこか鬱々とした空気が漂っています。成長物語なのに、青春って感じもしないし。
なんかイタいんですよね。

こんな終わり方でいいんでしょうか。
疲労感を残す小説でした。
★★★



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