「私の卓球人生」 '07.4.15
金丸武夫

 私は37歳のとき一つの決心をした。自宅に卓球専用の練習場を建てることにしたのだ。土地はあるが、資金はもちろんない。家内を拝み倒し、借金して何とか完成に漕ぎ着けた。以来、苦楽の20数年間が夢のように過ぎた。 振り返れば、そもそも私が卓球と出会ったのは小学生のときである。遊ぶものは多くない時代である。夏は川で泳ぎ、雑魚しめ(魚取り)、冬は近くの山でスキー(もちろん、長靴スキー)、そして卓球である。公民館にある古びた1台の卓球台に、子どもたちが集まってはひとときを過ごした。中学の上級生が下級生や小学生にやり方を教えるのが習わしだった。卓球の盛んな地域だった。小学生、中学生が団体を組んで戦う、地域対抗卓球大会は中体連の大会よりも大きなイベントであった。毎年、子どもたちも必死になった。それ以上に地域挙げて、応援してくれたことを思い出す。地域がコミュニティとして濃密に機能していた時代です。 こんなことで、自然に卓球に親しんでいった。また、当時の日本卓球は世界を席捲していた。荻村伊智朗、田中利明など世界を制したチャンピオンが綺羅星のごとく輝いていた。憧れであった。中学生になって部活動は卓球を選んだ。部活動といっても通年ではなく、大会の2ヶ月前ぐらいの練習だった。それでも団体戦で地区優勝し、県大会に出場することができた。このとき初めて新しいラケットを買ってもらった。厚いスポンジのラケットで、寝るときも枕元に置いた。高校に進学してからは卓球にのめり込んでいった。学習の成績と卓球の成績は反比例していった。学級担任からはこの成績が逆になればとよく言われた。高3のとき、鹿児島県インターハイへの出場権を得た。鶴岡から列車を乗り継ぎ、36時間かけて鹿児島にたどり着いた。蒸気機関車で、顔は煤けていた。2回戦で負けたので、試合時間の数十倍の時間を要したことになる。隔世の感がする。大学を卒業し教員になってからは、ずっと卓球部の顧問を続けてきた。 放課後、土曜日はもちろん、日曜日も練習を休みことはなかった。事務的な仕事はすべて帰宅してから処理した。 勤務した学校でそこそこに卓球の成績は残すことができた。しかし、40歳近くになると主任などいろいろの仕事が付いてきて、思うように卓球の指導ができなくなってきた。そこで卓球練習場ということになったのである。 もっと卓球好きの子どもを育てたいと思った。日本を背負う強い選手を育てたいと、大それたことも考えた。また、この世に生を受けて、自分らしいオンリーワンの生き方はこれだとも考えた。しかし、男子40歳にして、他のことは一切顧みず卓球場とは、世間からは「オンリーワンはただの変わり者」としか映らなかったようである。時折、そんな声を耳にしたものだ。 夜の7時から9時までが練習時間である。週の練習回数は、その子の希望によって決める。子どもたちには卓球の基本を徹底して指導してきた。ここで、卓球の基本は何かということが問題になる。残念ながら日本には、系統立って基本を指導する教本がない。その時々に、選手として、又は指導者として全国に名を成した人が、経験をもとに本などに著している。それらの多くは中学、高校あるいはそれ以上のトップレベルの選手向けである。小・中学生の、特に初心者には無理なものが多い。そこで私なりに卓球の技術を類型化し、単純化し、基本を理論的にまとめた。後はその基本を反復練習するのみである。基本は強い。基本的な技術を身に付けると、全国レベルまでとはいかないが、ある程度の成績は残せるようになる。ただ、同じ技術の練習でもバリエーションを多くすることは欠かせない。マンネリに陥るからである。最も難しいのは初心者の指導である。年齢が低ければ低いほど難しさは増す。正に根気比べの世界である。できたら誉める、またできたら誉めるの繰り返しである。但し、ある程度の技術をマスターした子どもには、高いレベルの練習態度を、意識して要求する。いわゆる、集中した練習である。そのためには、誉めて意欲を伸ばすときと、叱って引き締めるときの使い分けが肝要となる。 我々は試合や練習で、子どもたちに「頑張れ!頑張れ!」と言って励ますことが多い。この「頑張る」の中身を具体的に教えておくことが不可欠である。練習で頑張る、試合で頑張るとは何をどうすることなのかを示すことである。また、短時間集中で技術を高めるには、練習方法の工夫と共に、練習の用具の工夫も重要である。用具で何か思いついたら試作し、改善を加えて練習の効率化に心がけている。

 子どもと私が、次の試合や技術の目標を共有できたとき、子どもの目も輝き、汗を厭わない。伸びも早い。緊張感あふれる練習場の経営を日常化する。いつもそう自分に言い聞かせて、今日に至っている。そして、老骨に鞭打って今日も小さな練習場の戸を開ける。



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