(1)相談事項
1.「地主へ返還する」か「借地権として売却する」か、どちらが良いか。各々のメリット、デメリットは。
2.いずれの場合でも、建物(亡姉登記済)と庭の植栽(高低木)はそのまま残して相手に引き渡したい。
3.もし、更地で返還するとした場合でも建物解体金額が多額で、これらの費用をまかなえる方法はないか。
4.現時点で算定される「借地権の評価額」はどの程度の金額か。その額がそのまま売却価格となるのか。
この場合、借地権契約の残存年数の長短は考慮されるのか、考慮されないのか。
(2)地主に返還する場合
1.建物(登記済)と庭の植栽は現状のままにして地主に返還したいが、引き取ってくれる可能性があるか。
2.その場合、借地権は放棄するので、地主が建物等を解体するのであれば借地権はその対価としてほしい。
3.借地権の評価額が、これら建物等の解体費用を上回れば、引き取ってもらえる可能性があると思われるが、
どうか。
4.「更地に戻して返還して欲しい」といわれた場合、従うしかないのか。他の有効な手段はあるのか。
5.借地権を売却したいので承諾して欲しい旨を伝えた場合、地主は承諾してくれるものなのか。
「承諾不可」と言われた場合は、どのように対処したら良いか。
6.最初に地主と面談に行く場合は、相続人だけで行くつもりでいる。
その際、地主に対してはどのように話を進めていったら良いのか。
(3)借地権を売却する場合
1.売却する前に、建物は相続人の名義に変更しておく必要があるか。
2.この場合、地主の承諾が必要か。
3.地主から「相続人との借地権契約の再契約」を求められた場合、する必要があるか。断ることは出来るのか。
相続人として住む予定がなくても、再契約する必要があるのか。
4.再契約する場合、契約期間は何年か。契約更新料を取られるのか。
5.借地権を売却する場合、地主が借地権売却の承諾をしてくれるかどうか。承諾の場合、承諾料はいくらか。
6.承諾しない場合があるか、その場合、どのようにしたら良いか。
7.一般的に不動産業界として、相続人が借地権を売却する場合、地主から「不動産業者」を指定されることが
あるか。これを断ることができるか。こちらで不動産業者を選定することができるか。
(地主にとって、買主=新たな借地権者には不安を持つので、地主と取引のある業者に任せたいのでは)
8.売却価格はおおよそどの程度の金額となるか。(借地権の評価額よりかなり下回ると考えている。)
9.相続人として、借地権売却価格の構成原価(積上げ項目)として、
⇒ 最低限、下記の費用を上回る価格で売却したい。
@建物の解体費用、測量、境界標・囲障(塀)設置費用、植栽(高低木)の処分費用
A地主への承諾料
B第三者へ売却が出来た場合の不動産譲渡(売却)税の相当額
C不動産業者への売買手数料、その他契約・登記関連費用等の雑費
⇒以上の4項目を積上げた金額以上で「借地権売却価格」が設定できるかどうか。
10.売却の見込みがあるのか。売却の目処がたつまで、どのくらいの期間(年月)が必要か。
11.承諾料を支払っていても、この売却期間中は、地主には借地料を払い続けることになるのか。
12.福島市内の不動産の取引事例、借地権の売買事例、ここ数年の周辺地区不動産の動向
(4)まとめ
1.地主へ返還する場合は現状のままとしたい。その場合「借地権」は地主に対価としてほしい。
2.「更地」で返還せざるをえない場合は、建物の解体、庭の整備、囲障(塀)敷設、植栽(高低木)の処分等、
かなりの費用を相続人が負担しなければならない。
3.「地主への返還」あるいは、「借地権の売却」のいずれの方法が良いと思われるか。
4.地主に対して、どのように話を進めていったら良いのか。
《 物件概要 》
1.土地・建物の概況
@所在地 福島県福島市地内
A借地面積 500u(151坪)
B建物 木造瓦葺2階建 ・車庫他 ⇒ 延床総面積260u
築年数 おおよそ65〜70年位
2.相続人の状況
@ 相続人は兄弟姉妹
3.借地権の内容 ⇒不動産賃貸借契約書内容
@ 契約期間 30年間、残存年数あり
A 借地面積 500u(151坪)
B 賃借料 年に1回、1年分を前払い
C 明渡し 本借地を明け渡すときは、6ヶ月以上前に通知する。
本借地を明渡しに際し、如何なる名目をもっても一切金員の請求はしないこと。
4.借地権の評価額 、売却価格
@ 借 地 権 3 割
A 当該借地権の評価額算出 500u(151坪)
● 路線価での算出
● 世間相場(地価)での算出
B実際の販売価格はどの程度か
C買主の新規賃借料はいくらになるのか。どのように決まるのか
●新規賃料は、現状の賃料と同額とするのか。
●買主は見つかりづらい。賃料が低ければ低いほど買主は早く見つかるのでは。
●依頼する不動産業者が世間相場を参考に、新たに地主と折衝してくれるのか。
以上の相談を受けたのが今年(2017年)の2月ですが、その後面談、地主宅への同行、電話・メール
での打合せ等を10数回行い10月末にようやく解決しました。
解決内容
@ 地主(底地所有者)は底地割合を70%と計算し第三者(分譲業者)に売却する。
A 借地権付建物の売買契約は結ばないが、底地の売買契約後、速やかに建物の解体撤去を行い
建物の滅失登記を行うことで「取引の安全」は担保できた。
B 分譲業者は借地権付建物の解体費用と借地権価格をほぼ同額とみなし、買主が建物の解体撤去後
に、土地(底地)の引渡し・代金決済を行う。
C 分譲業者は、2区画に造成区分し、更地として分譲販売する。
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