さらに忘れてならないのが 「分断国家」 という現実。
ギリシャ系住民とトルコ系住民の対立から
キプロス共和国と
北キプロス・トルコ共和国
に二分されて30年!である。(紛争からは40年以上)
前者はEU加盟を果たしたばかりで、
後者は国際的(トルコ以外)に国家として認められていない。
グリ−ンラインには今なお国連軍が常駐し、往来を制限している。
それでもやはりキプロス島は多くの観光客を惹きつける、
魅力に満ちた地中海・最奥の島なのだ。
*----- いきさつ -----*
1990年のトルコ旅行前から、時々通っていた吉祥寺のレストランがあった。
残念ながら閉店して久しいが、当時としては珍しかったトルコ料理の店だ。そのマスターが 「珍しいチーズが手に入った」 と出してくれたのがハルミ・チーズとの出会い。見た目は豆腐のようで、クセもない。あぶって食べると塩気がいい具合に引き出されて、とても美味しい。
「キプロス産のチーズだけど、トルコでも売っているよ」
それからはトルコに行くたび、最終日に買い出しである。「いつかキプロスにも行ってみたいね」 と友人と話していたものだ。きっかけはチーズだが、宗教の異なるふたつの民族が住むというこの島に興味も湧いていた。
しかし、いかんせん紛争中の地域と聞いている。親同然?で犬猿の仲のギリシャとトルコがそれぞれに加勢しているのだから長引きそうだし、きっと私らが行けるような場所ではないだろう・・・。
その後は、トルコまで行かずとも東京のデパートやチーズ専門店でハルミ・チーズが買えるようになり、キプロスは旅行の候補地にも上らなくなっていた。
それから10余年を経た2004年春、EUの新加盟国ということから、TVでキプロスの現状を見る機会があった。日帰りという制約はあるものの、ようやくギリシャ系住民がトルコ側へ行けるようになったという。かつて住んでいた村の家を紛争以来はじめて訪ねるご夫婦に同行取材したりしていた。
今年はキプロスに行こうかな。
にわかに、そして久々に、仕事以外のことで忙しくなる。外務省はもとより、いろいろなサイトで情報を探した。なんとなく買ったまま放置していた本、「交錯する文明 東地中海の真珠キプロス」 篠田節子・著(中央公論新社) も読んだ。
ときおり南北問題に起因する悲しい事件が起きるようなので、もう安心と断定はできないが、単なるリゾート好き(私)でも行けそうな雰囲気。
そうして準備は着々と進んだのだった。