アリゾナ滞在記

1992年3月3日から1993年3月2日までの1年間,長期在外研究としてアリゾナ大学(The University of Arizona)化学科へ出張し,アリゾナ州ツーソン(Tucson)に滞在しました.ツーソンは西部劇の舞台として,銀幕の世界では有名ですが,実際の姿を知っている人は少ないでしょう.なにしろ,往路のチケットをお願いした旅行社の営業マン(当然,旅行のプロフェッショナルでしょう)から「タコソンって読むんですか〜」と言われて,腰が砕けそうになった位ですから.

さて,1992年3月3日の夕方にツーソン空港に到着しましたが,彼の地の最初の印象はまるで異郷の地でした.一面の赤茶けた砂漠に巨大なサボテンが林立し,遠くにダウンタウンの高層ビルが3棟だけ見えていましたが,それ以外は赤煉瓦の平屋が並んでいました.最初の夜は「本当に1年間も住んでいられるだろうか」と思いました.暫くは「あと360日・・・,あと350日・・・」と帰国の日を数えていました.それでも無我夢中の数週間が過ぎて,生活に慣れてくると実に過ごしやすいパラダイスであることが分かりました.何しろ,物価は安いし,年間350日は晴天だし,キャンパスの芝生には金髪のお姉さん達がビキニで寝ころんでいるし・・・.そして,様々な経験を通して,私達はこの町のファンになり,この町は私達の第二の故郷になったのです.

スペイン統治時代には州都であったツーソンの町の持つ独特な雰囲気は,元々の住人であるネイティブアメリカン,最初の征服者であるスパニッシュ,そして西部開拓者達が持ち寄った文化の集合として醸し出されているのでしょう.一方,一歩町を出ると夏には45℃にもなる灼熱の太陽が照りつける荒涼たる砂漠が広がっています.このような土地に設立されたからこそ,アリゾナ大学は歴史家Douglas Martinに「砂漠の中の文化の灯(The Lamp in the Desert)」と称されるような独特のステータスを保ってきたのでしょう.アメリカに滞在すると言っても,規模も歴史もNYやLAのような大都会とは全く異なるこの町で経験することは,通常のアメリカ生活とは異なることも多いでしょう.だからこそ,ここでの思い出は滅多に手に入れることのできない貴重な宝物です.帰国後に,この体験を忘れないようにまとめておいたこれらの文章はこのHPの基となったものです.

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