「水の華」と銅の溶存状態
「水の華」とは富栄養化湖沼に見られる植物プランクトンの大発生現象のことである.鮮やかな緑色の「水の華」というと美しいイメージであるが,現実には毒性藻類の発生,魚のへい死,悪臭など数多くの問題がある.日本における「水の華」は,Microcystis,Anabaenaなどの藍藻類が異常発生したもので,生活排水等の流入による湖沼水中の窒素,リンの濃度の上昇がその主因であることは分かっているが,なぜ他の藻類を抑えてこれらの種類だけが優先的に大量発生するのかは謎である.
ところで,これらの「水の華」を生成する藍藻類はいずれも水中の銅に対して感受性が高く,わずか数ppbの銅が存在すると成長が著しく阻害される.ここにEDTA等のマスキング剤を添加すると通常に成長することから,溶存する銅イオンがこれらの藻類の生長に対して毒性を有すると考えられる.銅イオンがどのような形で毒性を発現するのかは未知であるが,他の藻類に較べて銅イオンに対する感受性が高いという生理学的特徴は,現実の環境問題から見れば,「水の華」の発生制御因子として利用することが可能であり,一方,地球化学的に見るならば,バイオアッセイへと応用することで水中の銅の溶存状態を知る手がかりとなる可能性があり期待される.