グリフィスの声

『戦記の序章』を読み返して、前はそんな風に思わなかったのに、グリフィスって孤独な人なんだと思った。
受肉後のグリは友情に支配されることはないと言いながら、やっぱりガッツを信頼してる。
「何も変わりはしない。オレはオレの国を手に入れる。おまえだけは、オレがそうする男だと知っていたはずだ。」
その台詞の向こうに私はグリフィスの声を聞いた気がした。

考えてみれば鷹の団時代、初めてガッツに会った時からグリはそうだった。「おまえは俺のものだ」
この台詞はファルネーゼがセルピコに寄せた思いと通じる。「おまえを救ったのは私だ。だからあなたは私のものです」
なんだ、台詞まで一緒じゃん。(笑)
孤独な者は信頼できる人を傷つける。それが一番の信頼の証だと思っている。
傷つけて、裏切って、完膚なきまでに叩きのめして、信じているからこそそうする。
誰よりも信じているからこそ、激しく裏切る。
その残酷な行為の裏に、「それでもワタシを赦して」と願う気持ちを抱いてるのか。
それは転じて、「愛して」というようにも聞こえる。愛してもらうために傷つけるのかもしれない。

「おまえだけは、〜知っていたはずだ…」
子供が親の愛を試すために我儘を言うように、おまえだけは俺の総てを見ていてくれと。
そしてその言葉どおり、これからグリのすることと、それに立ちはだかるガッツの行動によって『千年帝国の鷹篇』が綴られていくのだろう。
グリは思うままに生きていくだろう。追いかけるガッツを笑うだろう。深層心理に満足げな笑いなんかを浮かべながら。もしガッツが追ってこなかったら、君は本当に一人ぼっちになる。

こんな感想は感傷が過ぎるかもしれないね。まぁまたいつか変わるだろう。
とりあえず今はこう思った。作品ってのは、受け手の感情を映す鏡なんだろうか。

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