初めてのデータ入稿


+++デジタル信号だけの原画+++

今回の表紙絵を、桜は描線とツヤベタ以外すべてパソコンで仕上た。
従って、アナログな『原画』と言うものはこの世に存在しない
ちょっとへんな感じだった。こんなに一生懸命描いてても箱の中にしか存在しないなんて(笑)
で、悩んだのは、データでしか存在しない自分の作品をどんな形で入稿するか。
今までも予告カットではパソ塗りしてたけど、サイズが小さいのでインクジェット用のハガキにカラリオで出力して渡してた。
しかしコミックスの表紙となると自宅のいい加減なプリンターじゃ不安。それにサイズも大きくなるし!

・@データ入稿するか。
・ATOO.の出力サービスでプリントして入稿するか

で迷う。編集さんに相談するとネガティブな答え。
「データ入稿は作者のイメージ通りに上がらない可能性が多いですよ」
これはよく聞いた話。
モニターの色がみんな違うから、自分が想定して作業していた画面とは違う色に印刷される。

そんならAのプリントアウトにしようと、その時点では思っていた。
そしてその後二転三転色々あるのだ。


作画

入稿の心配の前にまずはデータ作成。
原画を描いてペン入れしスキャナーで読む。私の持ってるスキャナーは縦だけが長くて横がA4サイズなので、B4で描いた絵の両サイドを切ってスキャン。
おかげでへんに縦長な絵になってしまいました。
読み取り解像度は350dpiにしました。今回のようなコミックスや予告カットでは、印刷上がりが小さいので(縮小率が高い)、B4やA4を350dpiで読んでおけば綺麗に出るでしょう。
印刷上がりがB5の本誌では、もうちょっと解像度を上げる必要があるでしょうか。
ただ、350でも何層もレイヤーを重ねて色を塗っていくとだんだんデータが重くなって、開く時や保存に何10秒もかかってしまって「む〜(ー"ーメ)」でしたが(笑)
あ、CG絵の作成の仕方に関しては、もっと上手くて詳しく解説してるサイトさんがいっぱいあるので私はおこがましくて何も言いません(笑)
まぁ地道に選択とブラシ塗りでゴシゴシと、何の技もありまへん…。


不毛なプリントアウト
7月の半ば、私はTOO.の出力サービスに、行く気満々で電話した。
場所や要領、値段を聞く。ピクトグラフィ(というらしい)というのはA4で¥1300、A3で¥2000する。B4はない。データを400dpiでCDRに焼く。その際ファイルはTIFフォーマット(拡張子はTIFF)にする…など。
350dpiで作ってたので400にして言われた通りCDRに焼いた。
後はこれを持って行ってあずければ数時間で綺麗な印刷物ができる。
そこまでした時ふと、
「向こうのコンピューターにこのCDRを入れたら、モニターにどんな色に映るんだろう
と思った・・・・・。
印刷所にデータ入稿するのと同じで、こっちの希望の色にならないんじゃないか。
向こうで何度も何度もダメ出しさせてもらえるわけじゃないだろうに。
じゃ、色見本を持って行かなきゃ。なんだ、それじゃデータ入稿と同じじゃん。

さらに、アナログで描いたカラー原稿も最終的にコンピューターに取り込んで製版される今、
紙媒体にしたところでまたデジタルに変わるわけだよな。
それってバカみたいじゃないか?
デジタルデータをお金出して紙にして、それをスキャンしてまたデジタルにするなんて。なんちゅう不毛な…。
・・・・・・・やめじゃ〜っ!


KP版って何?

編集氏に、データ入稿する意志を伝える。色見本は自宅のプリンターで作るつもりだった。
折り返し戴いたメールは、KP版(蛍光ピンク)をどうするかが問題、というものだった。

けいこおぴんく〜?!なんじゃそりゃ…。

ここで1つ勉強。
輝く生き生きした肌を表現するために、漫画のカラーにはCMYK版以外に蛍光ピンクの版を加えるんだって。
発色のいいインクで書かれたアナログの原画を再現するため、印刷会社の製版担当の人が裁量でKPを加えていくそうです。
そ〜んなこと、やってくださってたのね〜。
でもデータ入稿は原画がないので何をモデルにしたらいいかわからないので困る、と。
困る、と言われてもこの世に原画は存在しないんだよ〜(涙)
私がつけるって言ってる色見本じゃダメなのか? ダメなんだって。
私のプリンターには、そういう輝きを表現する機能も、KPインクもついてない。
私のデータもそういうことには行き届いてない。
じゃ、もし出力サービスへ行ってても勝手にKP加えてくれたりはしないから、
お金出してプリントしても解決する問題じゃなかったわけだ。
でも、原画がないのはどないする?
大丈夫。モデルがない場合は製版者がお任せでやってくださるそうです。
1年に何度も少女漫画のコミックスを扱ってる人達だから。
作家さんによってはKP版というデータを自分で作ってつける方もいらっしゃるらしいけど。
桜も編集氏もやり方は知らない。
ていうか、以前のコミックスで発色のド悪い画材で描いた原画よりはまだ、今回の出力見本の方が発色は綺麗だと思う。なのでおいらはお任せコースを選ぶ。


光からインクへ 出力見本

一番苦労したのが出力(色)見本です。
以前日記でモニターと印刷物が全然違うと嘆いたものだが、あれには続きがあるんです…^^;
その後調節してみた結果、私のモニターはそんなに色は外れてないことが判明。
問題だったのはだった
だから肌や髪などは殆ど調整しなかった。延延いじり続けたのは男の服…。
色相、彩度、明度のレベルをスライドするだけで調整は簡単にできる。
でも何度やっても、モニターで見ていた時の色と出力したものがものすごく違う。
今は理由はわかっている。黒と言うのはもともと
あらゆる色の明度と彩度をことごとく落としていったものです。
だからこそ赤っぽい黒だったり青っぽい黒だったりするのだけど、モニターはこの、彩度明度の落ちた状態でのビミョ〜な色相や彩度、明度の違いを表現しきれなかったのだ。
画面に変化が現われるくらい調整したら大体やりすぎだった。
印刷してみたら濃すぎたり、淡すぎたり。
もう一つ私が間違えたのは、黒い服だからって彩度を下げて無彩色にしたら黒くなる、と思ったこと。そう無彩色です。
モニター上ではなる。RGB(光)ではすべての色を断てば漆黒の闇になる。その明度を上げればグレーになる。
でもCMY(インク)ではすべての色を混合したら黒になると言いながら、実際は茶色になるのだ。
にもかかわらず、印刷技術においてRGBで彩度を落とした色は、変換されてCMYを全部混合される。
例えば派手な赤と青でを描き彩度を完全に無くして印刷すると、2つとも●やではなくこんなドドメ色●になる。小学校の図画の時間の最後、筆洗バケツが濁ったドドメ色になったように…。

インクを混ぜても黒にはならない。

そんなことわかってた。でもパソコンで絵を描く時は光で描かねばならない。
そして光では簡単に綺麗な黒や黒の濃淡が得られる。
だからCMYKなのね。CMYじゃなくCMYK。KはKURO。黒インクが別に必要なのだ、と改めて納得。
黒ベタみたいに明度を完全に落とせば黒インクで出てくるから綺麗なもんだけど、
濃淡があるとそうはいかない。
光からインクへ…。光で黒っぽい色の濃淡描き、それをインクに変える時は要注意ですよ。

この出力見本の作成のためにプリンターのカラーインクを半分以上使いました…。
そんなに神経質になったのは印刷屋さんがことごとく

出力見本を忠実に再現しようとしてくれるらしいから。

そのためには印刷屋さんはデータもいじります。
レイヤーに別れた元データではなく各場所を選択して色調整をしてるようです。
その痕跡を私は今回のコミックスの表紙から見つけることができました。
たぶんアナログな手書き原稿もそうやってるんでしょう。スキャンした時に元絵と色が変わりますから。こちらはCMYからRGBに変換する時にやはり誤差が出る。
原画を再現するために肌だけとか、髪だけとか、服だけ、装身具だけ、バックの花だけ…
細かく隅々まで選択して色をいじってる製版者の方の手作業を感じました。


↑この黒い服に泣かされた。

背景色
上の絵は完成データを.jpg圧縮したもの。これは背景が白いけどコミックスの背景は赤です。
これはビビッドな赤にしたいという意志と一緒に、PNATONEの色見本をいくつか添付しました。
家にある色見本に限定したくなかったのであくまでもイメージという意味でした。
添付した見本の番号、実は覚えてないんで(汗)実際にコミックスの赤が何番なのかはわかりません。
背景用のレイヤーも一応自分で塗って作ったのだけど、それを使ったかどうか謎です。
今はデザイナーさんも装丁をパソコンでやるのでどっちがやっても作業的にはかわりまへん。
私の選択の仕方はいい加減なのでデザイナーさんの方で作り直してくれたかもしれません。
以前お任せで選択を忘れて塗り残しが生じたこともありますが(^^ゞ
あ、これはベタ塗りの時の話ね。絵的な背景を入れるなら普通に描くなり合成するなり自分でやるしかありまへん。
凝ったデザインに仕上たいならやはりプロにお任せ。でもどんな装丁になって上がってくるかは出来上がってのお楽しみ。
今回のコミックスももし私がバックを何も言わなかったら、もっといい装丁になってたかも。
本の表紙ってタイトルのレタや装飾とレイアウトで半分決まる感じしません?
絵柄は顔が綺麗にかけてたら充分。(いや、責任の移管というわけでは…・笑)

総扉
コミックスの総扉(中表紙というか…)はカバー絵と同じデータを使いました。(ご覧になったらバレバレですね)
同じだけど、印刷がモノクロなのでまずカラーデータを破棄。
で、モノクロで明度が低いと真っ黒になるので男の服と羽根の明度を上げる。
肌も白くしたいので4層あったレイヤーを2層削除。
というモノクロ用のデータを別に作りました。
デジタルデータはこういうこと(色調整)ができるから便利ですよね。

入稿準備・入稿

というわけでデータが出来たら後はCDRに焼くだけ。
ファイル名とそれを使う場所、多少注文があるところはその注文(今回なら上のFCのところを目立たなくしてくださいとか)バックの色見本、そして苦労して作った出力見本など
色々な連絡事項を一まとめにした用紙を作ります。
これはデザイナーさんへの連絡事項だったり印刷屋さんへの連絡事項だったりします。
たぶん生データを触るのはデザイナーさんだけだと思いますが。
全部揃ったらすべての素材を一緒にして(漫画5話分の原稿も!)
「アディオ〜ス。立派なコミックスになるんだよ〜」と別れのCHU〜でもして(ウソです)
郵パックで送ったらこちらで出来る事はオ・シ・マ・イ。
無事に着くのを祈るだけです〜(これが結構ツライ)


おまけ

オシマイと思ったらその後編集さんからメールが来た。

デザイナーさんから
「カバーイラストデータに、アクマ1アクマ2アクマ3と
あるそうなのですが、使用する「修正版」とはどれのことでしょうか」
と問い合わせが来たのですが、お返事待ってます。

みたいな。
「・・・・????」となった私。
アクマ1アクマ2アクマ3…そんなファイル名をつけた覚えはない。
「修正版」というのは、実は1度焼いてから気になってまたデータをいじってしまって
同じCDRなので「修正版」というファイル名をつけたもので、それが最終データでした。
さて、「・・・・????」となった私に、ダンナがひとこと

「Windowsで開いてくださいって言うたらいいよ」

とりあえず編集さんにそう伝えたところその後音沙汰なく無事発売された。
まーね、デザイン事務所、印刷屋さんなど印刷業界は今でもMACなのよね〜。
漫画家さんもMACを使ってる人が多い
でも私はずっとWindowsを使ってるのです。Windowsで作ったファイルをMACで開くとこんな風にファイル名が換わるなんて知らなかったけど。
文字化けする、とかいうことは聞いたことあるけど1,2,3、って…何?!(笑)


顔が黄色い…。
日記で散々騒いでた、肌が黄色くなる事件。(←事件なのか?)
まぁデジタルデータの色調整の難しさもありますがそれだけじゃなく、どうやらコーティングしてるPPと言われるフィルムのせいもあるようです。
コミックスの表紙って表面ツルツルして光沢がありますよね。それが印刷物っぽくて嬉しいんですけど(w
PPと言うのは所謂セロテープの素材。束になると黄色いでしょ?飴色というか。それ自体がうすく黄色いもののようです。
そのフィルムを貼ることでどんな絵も多少黄色く、かつ密着してるので濡れたように色が濃くなるのかな〜と思いました。裏表紙の手塗りの絵も、縮小率が高かったことも加わってかなり濃厚になりました。
だからって薄めに描いた方がいいのかというと、製版の段階でオペレーターの裁量で変わるのでなんとも言えん…。ってこれじゃ、なんの参考にもなりゃ〜せんがな…。

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