民主主義

  価値とは、その置かれる文脈において、異なる意味を持つことがあります。民主主義もまた、諸機能や枠組にあって、多様な側面を見せています。

1.集団的な戦略系

 戦略系における民主主義とは、先ずは、君主や為政者が、私的な目的のために対外的な戦争などが行われることを防ぐ役割を果たします。古来、君主は、自己の権力を誇示するために、戦争に打って出ることもありました。民主主義国家になりますと、戦略系の政策は、国民の支持のもとに、国家と国民を守るために行使されるようになります。
 そうして、国民が、戦略決定者にふさわしい人物を選ぶことができるようになることも、民主主義の一面です。このことは、時に国家を滅亡へと導く政治権力の世襲をなくすことを意味しています。現在の民主主義国家にあっては、伝統的な君主は、”君臨すれども統治せず”となり、統治の機能系ではなく、歴史や伝統の継承など、枠組み系の政策領域でその役割を果たすようになっています。

2.内部調整系

 内部調整系の領域にあっても、民主主義は大変重要です。何故ならば、民主主義なくして、国民は、自らの意見や利益を表出することができないからです。非民主的な国家にあっては、予算の使途は一方的に決められてしまいますし、税負担も上から一方的に課せられることになります。これでは、国民自らの受益になるような事業が行われる保証はどこにもないことになるからです。

3.秩序維持系

 秩序維持系の政策において、民主主義は、自己規律を意味します。自らが守るルールは、自らで決めるということは、民主主義の重要な側面です。ただし、この分野においては、必ずしも議会制定法が万能ではないという側面がありますし、宗教的な価値観や国民的な慣習が効力を持っている場合もあります。この制度的な面については、次の章で扱います。

4.枠組み系

 国家の枠組みと民主主義との関係は、民族自決の原則において理解できます。民主主義は、対外的な独立を意味する国民自治の原則でもあるのです。

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