EU法の優位性について(杏林大学)


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Posted by 倉西先生 on 2007/05/21 17:18:22:

    質問
    1.EU法と国内法との間で起こる矛盾、あるいは、EU法優位の体制が、裁判に影響を及ぼした例は、過去にあるのですか?
    2.EU法の優位性が、はじめから確立していた組織はなかったのですか?
    3.EU法と国内法とが抵触する場合が、現在でもなくならない理由を詳しく説明してください。
    4.EU法の優位が確立していることによって、暴動を起こしたり、デモを起こしたりするような大きな団体は、EU加盟国に存在しているのでしょうか?

    回答
    1.EU法と国内法との間で法的な争いが生じた場合に、裁判所がそれを判断すことになります。ですから、裁判に影響を及ぼすというよりも、そのこと自体が、裁判を引き起こす、ということになります。また、EU法の優位が確立した後は、先例にならって、同様の事件については、裁判所は、EU法を優位させる判決を行う傾向にはあります。
    2.設立当時のEEC条約の条文において、加盟国に義務を課すことを明記している場合には、その範囲に限って、事実上、EU法は加盟国の国内法に優位していることになります。しかしながら、事後的な派生法(二次法)が、国内法に優位するか否かは、大いに問題となったのです。
    3.市場統合のプロジェクト以来、EC・EUは、政策領域を漸次に拡大してゆきました。また、市場経済とは、時代とともに変化しており、日々、様々な製品市場が新たに生まれています。このことは、EUレベルにおいても加盟国レベルにおいても、常に、立法を行っていることを意味しています。ですから、時には、EU法と加盟国の国内法とが両立が困難となったり、あるいは、EUの立法と加盟国の立法が重なったりする場合が発生するのです。こうした場合には、裁判で解決されることになりますので、現在でも、訴訟はなくならないのです。
    4.もちろん、あります。特に、EUでは、共通農業政策(CAP)を実施していますので、EUが、農家に対する補助金を削減するとか、買い取り価格を低くするといった農家に不利益となるような措置をとりますと、農業団体(最強はCOPA!)が、デモを行うこともしばしばあります。


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