関税同盟と直接適用性(聖学院大学)


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Posted by 倉西先生 on 2007/05/22 22:26:10:

    質問
     関税同盟を結成すると、何故、直接適用性が必要になるのか、詳しい説明をお願いします。
     
    回答
     EEC(関税同盟)の結成によって、関税政策と共通農業政策の二つの領域において、直接適用性の必要性が生じました。
     まず、関税政策ですが、加盟国は、自由貿易圏を形成するために、相互に関税を段階的に引き下げる一方で、共通関税を導入する義務を負うことになります。質問
     関税同盟を結成すると、何故、直接適用性が必要になるのか、詳しい説明をお願いします。
     
    回答
     EEC(関税同盟)を結成することによって、関税政策と共通農業政策の二つの領域において、直接適用性の必要性が生じました。
     まず、関税政策ですが、加盟国は、加盟国間で自由貿易圏を形成するために、相互に関税を段階的に引き下げる一方で、共通関税を導入する義務を負うことになります。結果として、共通の関税率が、加盟国に居住する全ての貿易業者に適用されることになります。
     こうして、これ以後、加盟国政府は、独自に関税率を上げることはできないことになるのですが、この条約上の義務に反して関税率を引き上げる政府が出現する場合がないわけではありません。通常の国際法では、その加盟国の国民が、条約を根拠として政府の措置を裁判所に訴えることはできませんが、EECでは、加盟国裁判所、あるいは、欧州裁判所(取り消し訴訟の場合・・・)への個人の出訴権を認めています(政府による関税上乗せ問題が発端となったVan Gend en Loose事件・・・)。
     共通農業政策は、関税政策以上に直接適用性を要する政策領域です。何故ならば、共通農業政策は、”統制市場”であって、EECを枠組みとして、農産物価格の決定などを含めた保護政策が実施されているからです。つまり、農家や農業関係者は、EUの政策に従うことになるのです。
     これらの政策領域については、後の講義でより詳しく説明します。


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