義務不履行申立訴訟について（聖学院大学）

質問
１．義務不履行申立訴訟とは、民事裁判のようなものですか？
２．義務不履行申立訴訟において、加盟国同士の争いとなる場合、経済力、つまり、両者が保持しているハードパワーやソフトパワーの違いから、国力に劣る国が、外交関係の悪化を恐れて、訴訟を断念するというような場合はないのですか？


回答
１．どちらかと言いますと、この訴訟は、国際裁判に近いものです。なぜならば、私人（民間人）ではなく、EU法に定められた義務を果たしていない加盟国政府の行為が法律上の問題となるからです。ただし、委員会に提訴権があることは、EUの特徴となっています。
２．EC条約においては、確かに、加盟国にも義務不履行申立訴訟の原告となる資格を与えています。しかしながら、実際には、加盟国がこの形式の訴訟を起こした例がほとんどなく、この種の訴訟の原告は、常に委員会となっています。その原因を探ってみますに、やはり、加盟国同士が直接に争うよりも、第三者となる委員会に任せた方が穏当であるという判断が働いていると思われるのです。

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