アジアにおける金融・通貨統合（杏林大学）

質問
　アジアは、EUと同じように、金融・通貨統合を行う方が良いのでしょうか？

回答
　物事の良し悪しを判断するには、まずは、どのよう事にとってとか、誰にとってとか、何らかの判断基準を考えなくてはなりません。アジアにおける金融・通貨統合の場合、この判断を行うことは、決してやさしいことではないのです。例えば、金融・通貨統合の参加国の問題一つを取り上げてみましょう。線引き次第では、アジア共通通貨の非導入国が著しい経済的不利益をこうむる場合もありましょうし。また、導入した諸国の間でも、金融政策をめぐって政治力学が働いてしまうかもしれません。そうしますと、アジアの繁栄にとってアジア共通通貨は良い、という前提には、大きな疑問符がつくことになるのです。さらに、アジアの諸国のみが繁栄すれば良い、ということになりますと、排他的な地域囲い込みとなり、グローバルな意味においてはマイナスに作用するかもしれません。技術的な問題は別としましても、市場がグローバル化する中で、アジアの金融・通貨統合を構想するには、深く考えなくてはならない基本的な事柄がたくさんあるのです。

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