ストとボイコット(聖学院大学)


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Posted by 倉西先生 on 2007/12/15 11:55:05:

    質問
    1.ストとボイコットは別物なのですか?
    2.アメリカでは、賃金引き上げなどを求めてストが行われますが、企業が和解に応じても、国から訴えられたり、違反金を科されたりすることはあるのですか?

    回答
     両方の質問に対して、一度にお答えします。競争法上のボイコットは、ある企業に対して不可欠施設の使用を拒否したり、特定の企業との取引を拒絶したり(直接ボイコット)、ライバル企業が市場において取引できないように圧力をかけたり(間接ボイコット)するような行為のことです。一方、ストは、被雇用者側が経営側に対して、賃金の値上げ、労働条件の改善、リストラ反対などの要求を行う場合に用いられる、職務放棄や怠慢といった実力行使の戦法です。
     しかしながら、シャーマン法(1890年)が制定された当時は、労働者の団結自体が、シャーマン法上の取引制限と捉えられており、差止命令や法定侮辱罪の対象となっていました(デッブス事件判決:1895年)。その後、労働争議は、クレイトン法の第6条によって認められるようになるとともに、ノラ法の制定により、連邦裁判所の差止命令は禁止されることになりました。1937年には、ワーグナー法も制定され、労働三権を確認するとともに、経営者側の不当な労働行為を禁じることになります。
     こうして、ニューディール期には、労働側に有利な状況に傾いたのですが、このバランスは、タハ法の制定により、経営側に揺り戻されることになります。本法では、経営者側のみならず、労働者側の不当な労働行為をも認め、労使双方ともに、行政機関であるNLRBの申請に基づいて、中止・制止命令や連邦控訴巡回裁判所による一時的差止命令や禁止命令などを認め、さらには、連邦裁判所による保全的禁止命令を発出できるようになりました。また、同法には、全国緊急事態条項が設けられており、ストライキやロックアウト(工業閉鎖)が、1)産業全体への影響”2)国民の健康と安全への脅威となると大統領が認めた場合には、調査委員会の調査に基づいて、連邦地方裁判所に対して、差止命令を発することを求めることができるようにもなったのです。
     その後の展開を見ますと、直接的なストライキやロックアウトに至る前に、調停や仲裁制度の利用が義務付けられるようになっているようです。


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