代理出産について(鶴見大学)


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Posted by 倉西先生 on 2007/04/28 18:13:58:

    質問
    1.日本人が、外国人に代理出産を依頼し、外国で子供が生まれた場合、その子供の国籍はどうなるのですか?
    2.代理出産について、どう思いますか?

    回答
    1.現在日本には、代理出産を認める法律はありませんので、生まれた子供は、法律上外国籍となります。
    2.代理出産については、さまざまな観点から熟慮しなければならない点がたくさんあります。
     第一に、生殖医学の発展によって、”親とは誰か”を定義すること自体が大変難しくなってきているのです。代理出産事件のように、”生物学的な親が親である”とする主張がある一方で、同時に、他人の生殖細胞を利用して子供を出産するケースもありますので、”生んだ親こそ親である”という主張もあります。もちろん、これらに、”育ての親こそ親である”という第三の主張を加えることもできます。こうした場合、何れの原則で割り切りましても、親子関係がねじれて社会に大混乱を巻き起こす可能性があります。また、悪用される場合(財産目当てなど…)も想定できますので、法律において、生殖医学の成果をどのように扱うかは大問題なのです。
     第二に、生殖医学には、生命倫理上の問題があります。生命操作とは、自分ではなく、他の人(子供)生命を人為的に左右するわけですから、親の自己決定権として安易に行って良いのか倫理上の問題が残るのです。アメリカなど、キリスト教徒が大半を占める国などでは、生命操作は自然に反して神の領域を侵すことを意味しますので、その是非がしばしば政治・社会的な争点になることもあります。人は人に対してどこまで権利を持てるのか、これもまた、深く考えてみなければならない問題です。
     第三に、代理出産が、ビジネスとして成立することに対する倫理的問題も考えてみる必要があります。代理出産とは、他人の人体を対価を支払って利用する制度となりますので、この制度には、人身売買的なニュアンスが強く感じられるのです。
     以上におおよその論点を述べてきましたが、先生は、正直に申しますと、代理出産には賛成しかねるのです。世論調査によりますと、多数の人々が代理出産を容認しているとする報道もありますし、もちろん、子供を持てない方にとりましては、この制度は、救いとなるべき最終手段なのでしょう。しかしながら、やはり、代理出産の容認には、論点を明確にして、充分な議論を行っておくべきであると思うのです。


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