トルコのEU加盟について(杏林大学)


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Posted by 倉西先生 on 2007/05/07 19:57:16:

    質問
     トルコとのEU加盟について、先生は、どのように考えますか?

    回答
     トルコの加盟問題については、EUおよびトルコの双方の問題点をクリアにする必要があると思います。
     まず、EUの側ですが、欧州憲法条約草案が難航しておりますように、EUの将来像がいまだ明確になっていません。EUが、経済的あるいは実務的な機構であるならば、トルコ加盟はより容易に実現しましょう。しかしながら、EUが、ヨーロッパ文明の共同体、あるいは、キリスト教国の連合ということになりますと、トルコの加盟ははるかに困難になることが予測されます。
     一方のトルコについても同様のことが言えます。トルコは、ケマル・パシャによる建国以来、政教分離を国是としてきましたが、近年に至って、イスラム教勢力の影響が拡大してきています。つまり、トルコ自らが、イスラム世界にアイデンティティーを見出すということになりますと、むしろ、ヨーロッパとは距離を置く政策を選択することもあり得ます。
     さらに、トルコが、イスラム教による政教一致体制に回帰した状態でEUに加盟しますと、EUの政策にイスラム教の影響が及び、また反対に、トルコ内部にもEUの世俗的な政策が浸透することになります。このような状態になりますと、たとえ加盟が実現したとしても、相互離反の火種を残していることになります。
     以上のように考えますと、トルコ加盟には、これらの問題がクリアになるまでの相当に長い年月を要すると思われますし、あるいは、加盟しないという結論に至るかもしれません。少なくとも、両者が納得する形で決着することが望ましい、とは言えましょう。なお、EUとキリスト教との関係については、4月10日付のメッセージを読んでみてください。


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