経済分野においても、秩序の維持は大切な仕事です。経済には、個々の間の取引や契約が伴いますので、相互信頼や取引の安全が保障されなくては、経済活動は、誰にとっても大変リスクの高いものとなってしまうからです。 1.市場の規制・監視 市場が無秩序に陥らないためには、共通のルールが必要です。この共通ルールを定め、市場の参加者達がルールを守るように監視するのが、市場の規制・監視の役割です。 この領域は、財、資本、サービス、人など対象によってさらに分化します。財に対しては、利用者の安全を守るために、製品の安全基準や環境基準などが設定されます。金融などの資本に対しては、金融当局によるプルーデンス政策が行われます。また、労働者などの人に対しては、不当な立場に陥らないように、最低賃金制度などの賃金・雇用政策が採られています。 2.競争政策 競争政策とは、市場における競争秩序を維持するために実施される政策です。市場は、自由な競争が行われ、あらゆる参加者に開かれた状態になくては、市場本来の自律的な発展のメカニズムを発揮させることができません。そこで、政府は、競争を歪めたり、排除するような行為を取り締まらねばならないのです。 3.資格秩序の維持 市場にあって、その活動主体となるのは、企業と個人です。確かに、個々人は職業を自由に選ぶことはできるのですが、全ての職業には、その職を行うのに不可欠となる知識や技能が必要です。これらを欠いては、サービスを受けた人が損害を被る場合があるからです。そこで、活動自体や取引の信頼性を高めるために、職業上の資格要件を定め、公的に認定することも、政府の重要な仕事となるのです。企業については、会社法などによって要件が決められ、健全な経営が維持されるための企業政策が行われています。 4.所有権秩序の維持 個人の権利を保障するためには、法的な登録制度を設けている場合が少なくありません。不動産や知的財産など、政府が有形・無形の権利に対する登録制度や保障制度を管理することによって、各々の権利は、法律において保護されるのです。 以上に述べてきたように、自由な市場にあっては、信頼性の確保のための規律が必要となります。むしろ、自由であるからこそ共通ルールとしての規律を要するのであって、統制経済にあっては、個人の経済活動の自由に立脚したこの領域は、全く抜け落ちることになるのです。 第3章へ戻る |