政府の政策領域は、基本的な役割を基準として整理しますと、以上のように分類することができます。しかしながら、状況によっては、この原則にはずれたり、また、はじめから機能縦断形型ではなく、機能横断型の政策領域である場合もあります。 1.目的の変化による分類の変化 ある政策が、本来の目的とは異なる目的に利用される場合には、分類項目に異動が生じます。例えば、通商政策は、本来経済分野の政策ですが、経済制裁といった政治的な目的に使われる場合には、防衛や安全保障政策の項目に並ぶことになります。また、金融政策は、通貨価値の維持を目的としますと市場の秩序維持系に分類されますが、政策金利の上げ下げを通して自国への資本流入を促進するような場合には、戦略系に分類されることになります。 2.政策分野の転換 さらに、目的が同じでありながら、ある系統の政策から別の系統の政策へと転換される場合もあります。例えば、政府が、自由貿易主義を進めるに際して、競争劣位にある農業経営者に対して、国内的な保護政策などのフォローを行う場合などがあります。この場合、農業保護政策は、戦略系の通商政策から、調整系の国内産業保護政策へと転換されるのです。しかしながら、目的が同一であるために、国内的な保護政策であっても、国際的な批判を浴びることもあります。 3.政策横断型の政策 これまで挙げてきた政策領域は代表的なものですが、この他にも、機能に沿ってきれいに分類できず、機能横断的になる重要な政策領域があります。例えば、教育政策や環境政策が横断型の政策例となります。 教育政策は、教育や技能習得サービスの提供という公共事業と捉えますと、政治・経済両面の内部調整に含まれますし、国民のアイデンティティー維持のための政策領域としますと、枠組み系の自己認識の政策に分類されます。また、徴兵制度のある国で軍事訓練が行われる場合には、戦略系にも属することになります。 環境政策もまた、横断的な性格を持ちます。環境規制政策は、秩序維持系として理解できますが、自然や歴史的景観の保全は、むしろ、枠組系として理解することができるでしょう。 以上に述べたように、政策分類は、絶対的なものではなく、目的に即して分類が変わることもあります。時には、ひとつの政策領域として捉えられてきた政策であっても、内容にそって分けてみることも、大切であるかもしれません。 第3章へ戻る |